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événement principal acte 27 奇襲

Dix

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 王宮の宰相執務室。

 ハミルトンは初めて、カーリア商会会頭バルク・カーリアと顔を合わせていた。

「お時間を頂き、ありがとうございます。」
「いえ。当主就任と会頭就任のお祝いもまだでした。遅くなりましたが、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。早速ですが本日は報告がございまして。」
「はい。なんでしょう。」
「実はカーリア商会の本店を、移転しようかと思っております。」
「……移転?いや、ちょっとお待ち下さい。それは。急ですね。」
 ハミルトンが困惑しながらバルクに問いかける。

「そうですね、申し訳ない。」
「何か事情がおありでしょうか?」
「はい。実は……。」
 勿体ぶりながら隣に座るロウに視線を送る。わざと無視されたのでハミルトンに視線を戻した。

 少しくらい付き合っても良いだろうが。無理矢理連れてきたから拗ねてんな、こいつ。

「兼ねてよりお声がけ頂いている国がありまして。」
「それは。どちらの?」
「申し訳ない。それはこの場では控えさせて頂きたく。今後の経営に関わって参りますのでご容赦願いたい。ああ、もちろん支店は残します。」

 支店を残されても本店でなければ意味がないのだ。
 税率が全く違うのだから。
 しかもカーリア商会の納める税金は年間国家予算の半分を占める。

「その、考え直して頂くことは。」
「相手もある話なので、申し訳ありません。」
「……先代は、このことをご存知でしょうか?」
「もちろん、報告しております。お前の好きなようにすれば良い、もうお前のものなのだから、とそう言われておりますので。」
 にっこり笑ったバルクにハミルトンは黙り込んだ。

 この、バルクとか言う新しい会頭がもし収めている税金がどれだけ莫大なものなのか理解していなくともダビデに伝われば止めるはずだと思っていた。なのに了承を得ているだって?

「本店がこの国から移転するとなると、王国の税収に多少なりとも響くかと思い今回事前に報せへ参りました。」
「そんな。多少だなんて。」
「ありがとうございます。そう言って頂けて、嬉しく思います。では、お時間を頂きまして、ありがとうございました。」
 バルクが立ち上がり、一礼するとロウも続いて立ち上がり一礼した。そのまま、退室する。

 ハミルトンは思案した。
 何故こうなった。シュトラウ子爵令嬢に毒を盛るため動こうとしたら今まで沈黙を貫いていたカーリア商会が動き出した。代替わりして先代以上に王宮には近寄らなくなったから油断していた。

 何も言わず、毎年多額の納税をする大商会だ。何の問題もないからだと思っていたのに。

 大変なことになった。
 カーリア商会が撤退したら。
 この国は終わる。
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