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événement principal acte 26 家族

Deux

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 謁見の間に通されたエリオットには、同伴者がいた。

 王都大教会の大司祭ユニアック。

 家名は教会に入った時、籍から抜けた為無い。

 玉座には国王ロドス。向かって右隣には王妃マニエラ。左隣には王太子ローレンスが同じく椅子に腰掛けていた。

 エリオットの近くに、宰相が佇む。

 この場に王族でいないのは、王女ロゼリアだけだった。

 先日の夜会で、フェリシテから不興を買ったと認識した宰相がこの場に同席させるのは避けた方がいいとロドスに進言したのだ。

 マニエラとローレンスにとってはエリオットとロゼリアを会わせるまたとない機会で、何とか捩じ込もうとしたが宰相に説き伏せられた。
 謝罪までしたのにまた特使として指名されたいのかと言われ、引き下がるしかなかったのだ。

 よってロゼリアが騒ぐと面倒が起きるとエリオットの登城については宰相から箝口令が布かれた。

「アーガン伯爵。何故、大司祭様を伴っている。」
 ロドスが徐に口を開いた。
 一礼の後、エリオットは応える。

「それは、大司祭様がこの件に関し証人と呼べる立場でいらっしゃる為です。」
「……証人?」
 訝しげにロドスが繰り返す。

「はい。恐れながら陛下。こちらの大司祭様がフェルティウム公爵令息の叔父上に当たることはご存知でしょうか?」
「……いや。それは……。そうなのか?」
 宰相に視線を移すと僅かに頷き応えた。

「確か、亡き夫人の弟君に当たられるかと。」
「そうだったのか。」
 ロドスが驚き目を瞠る。両隣のマニエラとローレンスも驚いたようだった。

「発言を、お許しいただけますか。」
 そこで初めて、ユニアックが口を開いた。

 ロドスが頷くのを見て、唇を湿して話し出す。

「私は、何年も前から秘密裏に甥から手紙を受け取っていました。その手紙には便箋と共に、封がしてある別の封筒が毎回同封されていました。便箋には一言、その時が来るまで、保管を、それだけです。私は言われるまま、同封された封筒をそのまま保管し続けました。」
 そう言って、後ろを振り向くと王宮の侍従が入室前に預けていた箱を宰相の元へと運び見せた。

「最後に手紙を受け取ったのは、去年の狩猟大会の頃でした。それから、ぱたりと届くことはなく。気を揉んでいた所、アーガン伯爵が王都大教会を訪れ祈りを捧げたいと申し出されました。誰を思い神に縋るのか名を聞いて、驚愕しました。それは……。甥の名で……。彼には叔父であることを告げ、話を聞かせて欲しいと縋りました。」
 そこまで話すと、大きく息を吐いた。ユニアックは俯いたまま、語り続ける。

「そこで初めて、甥が狩猟大会で行方不明となっていたことを知りました。着ていた衣服と思われるものが見つかったと言われ、絶望しました。アーガン伯爵は甥に聞きたいことがあると。どこかで生きていて欲しいと祈りに来たと。そう言われて。確か狩猟大会はアーガン伯爵領で行われていたことを思い出し、思い切って手紙のことをお話したのです。」
 そこからはエリオットが引き継いだ。

「手紙の束を見せられ、貰い始めた時期と保管を願い送り続けた状況を鑑みて恐らくフェルティウム公爵令息は証拠を大司祭様に預けたのではないかと思いました。今回、間違いなく手紙はフェルティウム公爵令息から送られてきたもので保管は大司祭様が行い、今まで一度も封を切ることなくここにお持ちしたことを証言して頂きたく同行を願いました。」
「お願い致します。国王陛下。英明なるあなた様ならきっと。きっと真実にお気付きになられるはずです。是非この場で開封頂き、お確かめ下さい。」
 エリオットとユニアックが同時に一礼する。
 ロドスは重々しく頷いた後、応えた。

「頭を上げよ。」
「「はい。」」
 二人同時に玉座に視線を向ける。マニエラとローレンスの顔色は真っ青だった。
 今まさに証拠の山だと思われる手紙が箱いっぱいに詰め込まれており、それが宰相の手に渡っている。
 必要なのはローレンスの暗殺未遂に関する証拠であってそれ以外は要らないのだ。ロディウスを通じてレスターとは何度もロゼリアを追い落とす計画を練ってきた。それらも恐らく含まれている。

 あの、手紙に。

 しかし既に宰相の手に渡り、国王は開封しようとしている。止める手立てはない。

 二人揃って肘掛を握りしめた。

「確認せよ。」
「はい。間違いなくどの手紙も未開封です。」
「では、開封を。」
「畏まりました。」

 封蝋を割る音が響き、続いて紙が擦れる音がする。全てに目を通すと、息を吐いた。

「恐れながら陛下。申し上げます。」
「ああ。」
「こちらは間違いなく、フェルティウム公爵令息の筆跡と思われます。屋敷で押収したものと同じ癖、同じ文体です。そして内容は……間違いなく、フェルティウム公爵が今まで行ってきた犯罪に関わる証拠と言えます。」
「……そうか。」
「これには、犯罪に関わったものの名も記されております。急ぎ全ての手紙を確認する必要があると進言致します。」
 はっきりと告げた宰相はちらりとマニエラを見た。恐らく、偶々マニエラとのやり取りが書かれた手紙だったのだろう。俯いて視線を逸らすマニエラは今にも逃げ出しそうだった。

「アーガン伯爵。ご苦労だった。大司祭様も。証人としてこの場に立ち、手紙を開示してくれたこと礼を言う。」
「勿体なきお言葉です。」
 エリオットが一礼すると、ユニアックも倣った。

「これで、共犯を炙り出しフェルティウム公爵を罪に問うことが出来る。必ず、真実を明らかにすると約束しよう。」

 再び二人で一礼したのち、顔を上げる。そのままユニアックがよろよろと宰相に近寄るとじっと瞳を覗き込んだ。

「甥は。甥は自ら犯罪に加担するような。そんな恐ろしいことが出来る人間ではありません。どうか。どうかあの子の名誉を。お守り下さい。どうか。」
 そう言って頭を下げる。宰相は開封した手紙を箱に戻すとユニアックの両肩を軽く掴んだ。

「もちろんです。今読んだだけでも、フェルティウム公爵令息が進んで犯罪を行ったとは到底思えません。全ての手紙を証拠として扱い、書かれた共犯者には尋問と聴取を行って必ず裁きを受けさせます。それは今、陛下もお約束した通りです。ご安心下さい。」

 宰相はとても信心深く、王都大教会に多額の寄付を行い礼拝にも良く訪れていると言う。大司祭であるユニアックに頭を下げられ無碍に扱えるわけがない。
 しっかりと頷くのを見て、ユニアックは安堵の息を吐いた。

「是非また、教会へお越し下さい。お待ちしております。」
「ええ。必ず伺います。」

 宰相を味方に付ければ例えロドスと言えども軽々しく隠蔽は出来ない。公にすることは難しくてもマニエラとローレンスはかなり厳しい処罰を下されるだろう。

 そして今まで証拠も証人も証言もなく貴族牢で生きながらえてきたレスター・フェルティウム。

 彼が罰せられる日はもうすぐそこまで来ている。
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