【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 22 盟友

Neuf

　領地の3分の1を占める、不可侵の森。その森の外周では普通に狩りが行われ、木の実や木の子、山菜を取ったりすることが出来るごくありふれた場所だった。
　深部と外周の堺、外周寄りに守り番の一族と呼ばれるものたちが集落を作り住んでいる。それは初代の頃からだった。

　彼らは普通の領民たちと変わらず生活している。ただ、生活基盤が領都ではなく森と言うだけ。領都に住まう領民たちとの交流も盛んで結婚し、子を成すことも普通にあった。

　アーガン・シルクを生み出すアンシェルで洗濯や染め物をしていたのは、この集落のものたちだった。

　アンシェルが見つかり事業として使うことを決めた時、エリオットは集落に赴き【長】と話をした。彼は申し出に快く頷き、協力を約束してくれた。
　その時、彼らに何か不便はないかと聞いてみた。答えは「なんも。）と一言だけ。そうして笑顔でこう言った。

「生きて領主様にお会いできるとは、思うちょりませんでした。ほんに、お聞きした通りですなぁ。」

　言われた意味が良く分からなかったがその時は頷くに留めた。
　あの長ならば。あの巨狼について何か知っているだろうか。長くあの地に住み、あの森を見てきたあの長なら何か。

　深部について何か聞けるかもしれない。

　エリオットはラッセルが入れた紅茶を飲むと、指示を出した。

「不可侵の森について書かれているものはないか、全て調べてここへ。」

　造り付けの書棚には端から端までずらりと書類や文書が詰め込まれている。
　整理整頓はきちんとされているので探し出すのはそこまで手間ではないだろう。

　シリルたちからの報告を待つまでに、何か情報はないか片っ端から調べるつもりだった。