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événement principal acte 19 画策

Treize

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「つまりもう既にテレンシア皇国皇帝にスル=クルールを渡すと話をした後、と言うことか。」
「そうみたいですね。」
 あっさりバルクが頷く。

「断っても王命で取り上げる、と。」
「そうみたいですね。」
「つまり、私たちは虚仮にされたと言うことだな。」
「そうみたいですね。」

 壊れたみたいに同じ答えを繰り返すバルクを見るとにやりと笑った。

「馬鹿ですよねー。アンシェルが無ければスル=クルールを使うことはできないってのに。」

 心底小馬鹿にしているバルクを見て堪えられなくなった。声を出して笑い、腹を抱える。つられてバルクもげらげら笑った。
 ロウは一人我関せず手酌でワインを注ぎ飲んでいる。

「で、これからなんですけど。」
「ああ。」
「エリオット様が突っぱねたら、うちも一緒に王命が下るってことですよね。」
「そうだろうな。」
「うーん。アンシェルのことは内緒にしたまま無視したいなー。」
「出来るのか。」
「……そうですね、切り札がまぁ。二、三枚?あるので。」
「そうなのか。」
「義父上にはまだ話してないんですけど。ここまで話が大きくなったら言っといた方がいいかと思うんですよね。」
「せっかく勇退されて領地で羽を伸ばしていると言うのに。申し訳ないな。」
「カーリア商会が巻き込まれたんなら関わらざるを得ないですよ、何てったってフロレゾンがありますし。」
「それもそうか。」
「表向き私が作ったブランドになってますが義父上の肝入りですからね。王命で商会引っ掻き回されたらフロレゾンも無事では済まなくなりますよ。今や幻のシルクはアーガン・シルクと呼ばれています。そのシルクでフロレゾンにドレスを注文するのが社交界のステイタスなんですから。」
「……そこまでなのか。」
「相変わらず社交界には疎いですよね。エリオット様がティアナに贈ったドレスの宣伝効果が凄いんですよ。」
「ああ。」

 確かにあれは目を奪われた。

「アーガン・シルクを使って作られたドレス、しかも作っているのは元華たちとあってはねぇ。」
「秘密ではないのか。」
「見る人が見れば分かりますよ、でも皆んな口を噤む。何故なら手に入らなくなるから。ダビデ・カーリアはそれをする人だと皆知っている。」
「そうだったな。」
 エリオットが頷くとバルクが肩を竦めた。

「だから真面な人間は義父上に手を出さないってのに。あ、義父上にちょっかいかけた自覚がないのか。」
 目を丸くしたバルクを見て、エリオットは苦笑した。
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