【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 17 初恋

Treize

「ティアナ。」
　エリオットがそっと目尻に口付けた。もう一方にも口付ける。

「愛してる。」
「お兄様……。」
「すまない。私から事情を話すことは出来ない。」

　アリーは被害者だ。加害者の息子である自分が勝手に話すわけにはいかない。
　ティアナにはまだ伏せておきたいこともあるはずだ。

　ティアナがエリオットの頬に触れた。そっと指先で優しく撫でる。

「大丈夫。私、お母様と話してみる。」
「……ああ。」
　手を滑らせ、エリオットのピアスに触れる。クンツァイト。ティアナの瞳の色。

　私のお兄様。私だけの。

「愛してる、お兄様。」
「ティアナ。」
「やきもち妬いて、ごめんなさい。」
　泣き笑いで言うと、エリオットが緩く口角を上げた。

「やきもちか。」
「ふふ。そう、やきもち。」

　再び額同士を合わせて今度はくすくすと笑い合う。

　傷付けるのも泣かせるのも避けたいが、嫉妬したと言われるのは少し嬉しいような。

　複雑な心境だった。