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événement principal acte 15 婚約
Treize
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年明け、アーガン伯爵家当主エリオット・アーガンは忌中明けを表明すると同時に婚約を発表した。
釣り書きを送り続けていた貴族家は驚き、エリオットを慕っていた令嬢方は嫉妬し、憎悪に燃え、狼狽えた。
相手は誰だ。
婚約者はティアナ・シュトラウ子爵令嬢。13歳。年齢差は8歳。貴族としては珍しくもない。だが理由として考えられる政略としては何の旨味もない家門だった。
瞬く間に噂は広まり、人々はティアナに大きな関心を寄せた。
容姿は。人柄は。元平民と聞くが本当だろうか。
噂が噂を呼び、ティアナは一躍時の人となった。
タウンハウスの使用人たちは一堂に集められノーマンから発表を聞いた。
これからは社交も再開する上、ティアナは婚約者としてタウンハウスに出入りする。
今までとは違うこともあるだろうが、アーガン伯爵家の使用人として恥じない働きをするよう喚起された。
皆、昨年の面談で働くことを許された者たちである。
信用しているが新たに近寄ってくる輩はいるだろう。
何かあれば必ず、上級使用人に報告するよう再度徹底された。
話を聞いた使用人たちは皆気持ちを新たにする。
一方、貴族家ではティアナのことを探る家が出てきていた。
王都一の情報ギルドであるプレシーズが忽然と消えてから、それに変わる組織もチラホラと現れている。
そういったところに依頼をし、情報を得ようとしているようだがそう言う動きは下位貴族に見られた。
高位貴族は入学まで様子見をすることにした。待っていれば三ヶ月後に貴族学園へ入学する。
13歳が相手になるのなら、自分の娘だって相手が務まるはずだ。解消させ、こちらが新たな婚約者に収まれば良い。
そう考えて動かなかった。
こういった思惑を見越してエリオットはティアナに学校を勧めた。
貴族学園という閉塞した空間は今まで以上に守りにくい。
侍女は帯同出来るが身分が上のものから絡まれると対処が難しい。
令嬢たちからの嫌がらせもそうだが、令息たちからのアプローチも心配だった。
セジウィック伯爵家からの縁談を断った後、予想通りノーマンがリストアップした中からチラホラと釣り書きが送られてきた。
それら全てに若干優越感を覚えながらも断りの手紙を書いた。
中には貴族学園に在学中のものもいた。
ティアナを知りもしないだろうが、一目見ればわからない。
会わない間に美しく華開いたティアナはエリオットの心を掻き乱すようになった。恋慕するものが現れないとも限らない。
それこそ、父のようなものが手を出そうとするかもしれない。
不安の芽はなるべく摘んでおきたかった。
ティアナには何も知らせていなかった。今はアーガン伯爵領に向かう準備と並行して入学準備に追われている。
学校に制服はないので、そう言う準備は必要ない。貴族学園に通うより準備は簡単に済みそうだった。
領地に発つまでの間、エリオットはノーマンとサマンサに一つの指示を出した。
「三階フロアにティアナの部屋を置く。そうだな、私の自室の向かいが空いていただろう。そこを入学までに整えておくように。調度品はエマに相談を。」
エリオットは自覚している。
ティアナに向けた気持ちは些か常軌を逸していると。これはあれほど嫌悪していた執着と言うものだ。
ティアナの全てを知りたいし独り占めしたい。
囲い込み、不安を取り除き、自分がいなくては生きていけないようにしたい。そう思っている。
ティアナが知ったらどう思うか。
だが逃すつもりはないので、諦めて欲しい。
唯一、欲しいと望んだ相手なのだ。
デュタントを迎えたら、すぐに娶って自分の側から離すつもりはない。
それまでに、ティアナには自分と同じところまで堕ちてきて欲しい。
ベントリーの言葉を不意に思い出した。
「他人にとっては狂気でも当人同士は幸せだと思う、そんな執着もあるかと思います。」
釣り書きを送り続けていた貴族家は驚き、エリオットを慕っていた令嬢方は嫉妬し、憎悪に燃え、狼狽えた。
相手は誰だ。
婚約者はティアナ・シュトラウ子爵令嬢。13歳。年齢差は8歳。貴族としては珍しくもない。だが理由として考えられる政略としては何の旨味もない家門だった。
瞬く間に噂は広まり、人々はティアナに大きな関心を寄せた。
容姿は。人柄は。元平民と聞くが本当だろうか。
噂が噂を呼び、ティアナは一躍時の人となった。
タウンハウスの使用人たちは一堂に集められノーマンから発表を聞いた。
これからは社交も再開する上、ティアナは婚約者としてタウンハウスに出入りする。
今までとは違うこともあるだろうが、アーガン伯爵家の使用人として恥じない働きをするよう喚起された。
皆、昨年の面談で働くことを許された者たちである。
信用しているが新たに近寄ってくる輩はいるだろう。
何かあれば必ず、上級使用人に報告するよう再度徹底された。
話を聞いた使用人たちは皆気持ちを新たにする。
一方、貴族家ではティアナのことを探る家が出てきていた。
王都一の情報ギルドであるプレシーズが忽然と消えてから、それに変わる組織もチラホラと現れている。
そういったところに依頼をし、情報を得ようとしているようだがそう言う動きは下位貴族に見られた。
高位貴族は入学まで様子見をすることにした。待っていれば三ヶ月後に貴族学園へ入学する。
13歳が相手になるのなら、自分の娘だって相手が務まるはずだ。解消させ、こちらが新たな婚約者に収まれば良い。
そう考えて動かなかった。
こういった思惑を見越してエリオットはティアナに学校を勧めた。
貴族学園という閉塞した空間は今まで以上に守りにくい。
侍女は帯同出来るが身分が上のものから絡まれると対処が難しい。
令嬢たちからの嫌がらせもそうだが、令息たちからのアプローチも心配だった。
セジウィック伯爵家からの縁談を断った後、予想通りノーマンがリストアップした中からチラホラと釣り書きが送られてきた。
それら全てに若干優越感を覚えながらも断りの手紙を書いた。
中には貴族学園に在学中のものもいた。
ティアナを知りもしないだろうが、一目見ればわからない。
会わない間に美しく華開いたティアナはエリオットの心を掻き乱すようになった。恋慕するものが現れないとも限らない。
それこそ、父のようなものが手を出そうとするかもしれない。
不安の芽はなるべく摘んでおきたかった。
ティアナには何も知らせていなかった。今はアーガン伯爵領に向かう準備と並行して入学準備に追われている。
学校に制服はないので、そう言う準備は必要ない。貴族学園に通うより準備は簡単に済みそうだった。
領地に発つまでの間、エリオットはノーマンとサマンサに一つの指示を出した。
「三階フロアにティアナの部屋を置く。そうだな、私の自室の向かいが空いていただろう。そこを入学までに整えておくように。調度品はエマに相談を。」
エリオットは自覚している。
ティアナに向けた気持ちは些か常軌を逸していると。これはあれほど嫌悪していた執着と言うものだ。
ティアナの全てを知りたいし独り占めしたい。
囲い込み、不安を取り除き、自分がいなくては生きていけないようにしたい。そう思っている。
ティアナが知ったらどう思うか。
だが逃すつもりはないので、諦めて欲しい。
唯一、欲しいと望んだ相手なのだ。
デュタントを迎えたら、すぐに娶って自分の側から離すつもりはない。
それまでに、ティアナには自分と同じところまで堕ちてきて欲しい。
ベントリーの言葉を不意に思い出した。
「他人にとっては狂気でも当人同士は幸せだと思う、そんな執着もあるかと思います。」
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