238 / 520
événement principal acte 14 掃討
Trois
しおりを挟む
「ティアナ、貴方に婚約の申し込みが来たのですって。」
食卓を囲んでいる席で徐にアリーが口にした。ダビデは先日仕事が入ったと王都に戻っており食堂には二人だけしかいなかった。
ティアナはぽかんとアリーを見つめ返す。
「えっ?」
「エリオット様から手紙が届いたの。つい先日、ティアナにセジウィック伯爵家の三男から釣り書きが届いたけれど返事はどうするかって。」
言われて頭が真っ白になった。
婚約?
誰が?
私が?
セジウィック伯爵家って何?
会ったこともない人と?
違う、そうじゃない。
お兄様以外の人と?
「ティアナ。」
「……いや。」
「分かったわ。」
「いやです、お母様。絶対、いや。」
気が付けば涙が溢れていた。
お兄様以外はいや。
声もなく涙を流すティアナを見てアリーは胸が痛んだ。
この子はエリオット様に恋をしている。
「ティアナ、大丈夫よ。エリオット様に断ってもらいましょう。」
「お兄様は。お兄様はなんて仰ってるの?」
「エリオット様は私たちの気持ちを大切にしてくださるって。」
「ほんとう?」
「ええ。本当よ。」
「婚約しなかったらお兄様、困らない?」
「困らないわ、大丈夫。エリオット様が困ってるところなんて見たことないわ。」
おどけるアリーを見てやっとティアナは笑った。
「お兄様にお断りして下さいってお手紙書くわ。」
「そうね。ティアナから言った方がいいわね。」
「はい。」
お兄様にはもう随分と会っていない。ここは大好きだけれどお兄様がいないから、やっぱり寂しい。
ダンスもちゃんと踊れるようになったし、クッキーも上手く作れるようになったから。
早くお兄様に会ってダンスを見てもらいたい。
作ったクッキーも食べてもらいたい。
それから。
それから刺繍も得意になったから、いつかお兄様に剣帯を刺して渡したい。
お兄様としたいことが、たくさんあるの。
だから。
だから、婚約なんてしたくない。
食卓を囲んでいる席で徐にアリーが口にした。ダビデは先日仕事が入ったと王都に戻っており食堂には二人だけしかいなかった。
ティアナはぽかんとアリーを見つめ返す。
「えっ?」
「エリオット様から手紙が届いたの。つい先日、ティアナにセジウィック伯爵家の三男から釣り書きが届いたけれど返事はどうするかって。」
言われて頭が真っ白になった。
婚約?
誰が?
私が?
セジウィック伯爵家って何?
会ったこともない人と?
違う、そうじゃない。
お兄様以外の人と?
「ティアナ。」
「……いや。」
「分かったわ。」
「いやです、お母様。絶対、いや。」
気が付けば涙が溢れていた。
お兄様以外はいや。
声もなく涙を流すティアナを見てアリーは胸が痛んだ。
この子はエリオット様に恋をしている。
「ティアナ、大丈夫よ。エリオット様に断ってもらいましょう。」
「お兄様は。お兄様はなんて仰ってるの?」
「エリオット様は私たちの気持ちを大切にしてくださるって。」
「ほんとう?」
「ええ。本当よ。」
「婚約しなかったらお兄様、困らない?」
「困らないわ、大丈夫。エリオット様が困ってるところなんて見たことないわ。」
おどけるアリーを見てやっとティアナは笑った。
「お兄様にお断りして下さいってお手紙書くわ。」
「そうね。ティアナから言った方がいいわね。」
「はい。」
お兄様にはもう随分と会っていない。ここは大好きだけれどお兄様がいないから、やっぱり寂しい。
ダンスもちゃんと踊れるようになったし、クッキーも上手く作れるようになったから。
早くお兄様に会ってダンスを見てもらいたい。
作ったクッキーも食べてもらいたい。
それから。
それから刺繍も得意になったから、いつかお兄様に剣帯を刺して渡したい。
お兄様としたいことが、たくさんあるの。
だから。
だから、婚約なんてしたくない。
0
お気に入りに追加
725
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる