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événement principal acte 14 掃討

Trois

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「ティアナ、貴方に婚約の申し込みが来たのですって。」
 食卓を囲んでいる席で徐にアリーが口にした。ダビデは先日仕事が入ったと王都に戻っており食堂には二人だけしかいなかった。
 
 ティアナはぽかんとアリーを見つめ返す。

「えっ?」
「エリオット様から手紙が届いたの。つい先日、ティアナにセジウィック伯爵家の三男から釣り書きが届いたけれど返事はどうするかって。」
 言われて頭が真っ白になった。
 
 婚約?
 誰が?
 私が?
 セジウィック伯爵家って何?
 会ったこともない人と?
 違う、そうじゃない。

 お兄様以外の人と?

「ティアナ。」
「……いや。」
「分かったわ。」
「いやです、お母様。絶対、いや。」
 気が付けば涙が溢れていた。

 お兄様以外はいや。

 声もなく涙を流すティアナを見てアリーは胸が痛んだ。

 この子はエリオット様に恋をしている。

「ティアナ、大丈夫よ。エリオット様に断ってもらいましょう。」
「お兄様は。お兄様はなんて仰ってるの?」
「エリオット様は私たちの気持ちを大切にしてくださるって。」
「ほんとう?」
「ええ。本当よ。」
「婚約しなかったらお兄様、困らない?」
「困らないわ、大丈夫。エリオット様が困ってるところなんて見たことないわ。」
 おどけるアリーを見てやっとティアナは笑った。

「お兄様にお断りして下さいってお手紙書くわ。」
「そうね。ティアナから言った方がいいわね。」
「はい。」

 お兄様にはもう随分と会っていない。ここは大好きだけれどお兄様がいないから、やっぱり寂しい。
 ダンスもちゃんと踊れるようになったし、クッキーも上手く作れるようになったから。

 早くお兄様に会ってダンスを見てもらいたい。
 作ったクッキーも食べてもらいたい。

 それから。

 それから刺繍も得意になったから、いつかお兄様に剣帯を刺して渡したい。

 お兄様としたいことが、たくさんあるの。

 だから。
 だから、婚約なんてしたくない。
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