【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 13 暗躍

Six

　翌日。
　ノーマンとサマンサの二人はタウンハウスにいる侍女五人を順番に面談した。

　セリーナに使用人食堂で絡んだ侍女とその取り巻き三人の中にパメラはいた。残りの一人は領地のない子沢山の男爵家長女で経済的に困窮しており、安定した収入が得られるからと真面目に働く侍女だった。名をリアンナと言う。
　ブリジットとケイシーの自室を掃除するよう言われて渋ったのは他の侍女たちから言いがかりをつけられたくない、と言うのが理由だったらしい。
　面談の際、聞き出すといつも爪弾きにされ、少しでも目が合うと物欲しげで卑しいと笑われていたと言う。
　大人しく目立たない為、余り気にかけていなかったとサマンサは悔やんだ。念の為周囲のメイドや下女に聞いても評判がいい。
　ノーマンと相談して改めて身辺を洗うことにした。問題なければこのまま雇うことを決める。

　それからパメラと残りの三人全てを解雇することにした。面談をし、同じく周囲のメイドや下女に聞き取りをしたが評判はすこぶる悪かった。今までノーマンやサマンサに改めて話をする機会がなかった為、皆鬱憤が溜まっていたらしい。たちが悪いところは同僚の侍従たちの前では淑やかに振る舞い、反感を買わないようにしていたことだった。自分より身分が低い、メイドや下女に仕事を押し付けていたことが分かるとノーマンとサマンサは見抜けなかったことを深く後悔した。

　職場環境を良くも悪くもするのは自分たち上級使用人たちの役目だ。ベントリーが戻ってきたら改善策を話し合って働き易く居心地の良い職場にしようと二人で決めた。

　侍女三人を解雇する時期はパメラをタウンハウスから放逐した後にすることにして現状維持する。

　その日パメラは使用人棟の清掃へと持ち場が変更された。
　実質上の左遷である。

　面談が終わった後での配置転換に他のメイド四人は自分たちの進退を考え、怯えた。

　明暗が別れるのはまだ先である。