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interlude acte sournois

報告

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 執務室にノックが響いた。

「入れ。」
 ペンを置き、答えるとアントンとラッセルが一礼し入室してきた。

 執務机の前に並んで立つと一礼する。
「ご報告したいことがございます。」
 口を開いたアントンに目線で促すと話し始めた。

「侍女のパメラから接触を受けました。」
 以前エマが気にかけサマンサに相談し二人が探った侍女のことだった。

「続けろ。」
「はい。先月、ラッセルと交代し自室に戻ったところを訪ねてきました。今まで話したことはありません。とりあえず話を聞いて見ましたが私を懐柔して旦那様の情報を聞き出したいようでした。」
「具体的には?」
「旦那様は普段、執務以外では何をして過ごしていらっしゃるのか。誰と親交を持っていらっしゃるのか。そう言ったところです。」
「初めて話す相手に随分と雑な探りを入れるものだな。」
 鼻で笑うエリオットにアントンは頷いた。

「あれでは私でなくともすぐに気づくと思います。念の為同じ立場のラッセルにも話しました。同じように接触しないとも限らないので。」
「そうだな。あとはノーマンにも報告しておくように。」
「畏まりました。」

 腕を組むとエリオットは考えた。
 恐らく、裏にいるのはあの女だ。大方仕える主人の為にと動いているのだろう。

 そこまで考えてはたと気づく。

 もしかして領邸に潜り込んでいた下女もそうか?確か自ら貴族だと自白した。下位とはいえ貴族令嬢の身分を偽り潜り込ませるにはそれなりに力と根回しがいる。

 タウンハウスにいたのだ、領邸にいたとしてもなんら不思議ではない。

 ならば。

「泳がせるか。」
「どのように。」
 ラッセルが口を開いた。

「アントン、私の情報を流せ。全くの嘘でいい。そうだな、親しくしている女性の影があるとか。執務をこなしているふりをしてタウンハウスを出ているとか。確認しようのない情報を流せ。」
「畏まりました。」
「普通は少しの真実を混ぜるが。一欠片も渡す気はない。あとはそうだな。ラッセル、いずれアントンの情報が嘘だと気づいたらお前に標的を変えるだろう。その時は接触されたらすぐ今回のように報告しろ。私でもノーマンでも構わない。」
「畏まりました。」

 そろそろ引き摺り出してやるか。

 差出人のない、手紙。
 不定期に届く濃い薔薇の香りが沁みたあの手紙はいつも直接タウンハウスに届けられた。

 持ってくる男は決まっていて、それとなく身分が分かる服装で訪れる。お陰で門前払いも出来ず不承不承受け取ってきた。

 一年近く前に受け取ったのが最後だ。嫌な予感だが、もうそろそろ次の手紙が届く頃だろう。

 いい加減、うんざりする。
 ブリジットもケイシーも。今回のパメラも。恐らく手紙の差出人に仕えるものの仕業だ。

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