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événement principal acte 12 生起

Douze

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 エリオットは兎角女性に対して厳しい。
 常に一線を引いており、内側に入れるものは限られている。
 三人が知っているのはエマだけだった。亡くなった母のテレジアに対してさえ他人行儀だった。

 そのエリオット様が。

 微笑みかけ、頭を撫で、頬を突いていた。何が起きたんだ。子供だからか?いや、尚更扱いに困って距離を置くだろう。なのにダンスのレッスンに付き合い、体調を気にしてもっと食わせろと言う。

 信じられない。

 気になって仕方がないが、先程のバルクと話していた前当主様のことも気になる。エリオットが話さないと言うことはここでは話せないと言うことだろう。

 三人は違う話題で昼食を摂るとそのまま執務室へと向かった。

 ソファに座り、アントンが紅茶を出して退室するとエリオットが話し出す。

 それは、とても「胸糞悪い話」だった。

「つまり、前当主様は友人の一人から長年譲り受けていた禁輸品で中毒者になった。と。」
 シリルが唸るように口にした。
「あぁ。そうだ。もうまともに話も出来ない。」
「それで、バルク様に入院の手配を。」
 ケビンが俯いていた顔を上げ、確認する。
「ああ。顔が広い商人だから、伝手を使ってくれた。」
「確かに、バルク様だけに護衛の真似事をさせてゴザまで送っていただくのは心苦しいですね。」
 アイザックがぽつりと呟いた。

 三人とも、幼少期からずっと領邸にいた。当然クリスのことも知っている。交流があまりなかったとしてもアーガン伯爵家に仕える彼らにとっては前当主が中毒者と言うのは受け入れ難い事実だった。

「このことを知っているのはベントリーだけだ。外部ではカーリア商会会頭と副会頭のバルク殿の二人。」
「「「分かりました。」」」
「父は今、屋敷を立ててそこで療養させている。スコットに聞いたか?」
「はい、領邸に立ち寄った際御姿がなかったので聞いたところそのように。」
 アイザックが答える。

「知るものは少ない方がいい。それでベントリーを置いてきている。会頭とバルク殿が知っているのは父にシカッルを融通した友人とやらが禁輸品をどこから手に入れているのか探るためだ。」
「なるほど、確かに。商人なら特別な情報網があるはずです。」
 頷くシリルに返す。

「目星はついているが今は動きがない。その間になるべく早く秘密裏に父を隠したい。露見すれば無事では済まない。」
「そうですね。」
 ケビンが返してこの話は終わった。

 それぞれカップを手に取り、紅茶で一息入れていると我慢できなくなったのかケビンが切り出した。

「ところでエリオット様。先程の少女は一体。」
「あぁ。ティアナか。予備爵を譲ったシュトラウ子爵の一人娘だ。11歳になる。」
「確か別邸に住まわれているとか。」
 シリルが加わるとエリオットは頷いた。

「ああ。後見もしているからな。ティアナは13歳で貴族学園か学校に入学することになる。それまでに淑女教育を終わらせる為毎日ここに通っているんだ。」
 カップをソーサーに戻すエリオットを見てアイザックが口を開いた。

「随分、可愛がっておられるのですね。」

 意味が分からなくてエリオットは首を傾げた。左肩から前に垂らした銀髪がさらりと揺れる。

「可愛がっている?そうか?」
 どこがそう見えたんだ?と首を捻っているエリオットを見て三人は心の中で叫んでいた。

 無自覚か!!!
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