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événement principal acte 11 真実
Sept
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かちゃん。
アリーの手がカップに当たって僅かに紅茶が溢れた。茫然とダビデを見つめる。見返すダビデの瞳は凪いでいた。
「お父様、あの。」
「初めてティアナと会った時にね、あぁメアリに似ているなぁと思ったんだ。雰囲気がね。所作はアリーに似ている。だがね、私が何度かあったあの男に似ているところがどこにもない。何度会っても見つけられなかったんだよ。」
「それ、は。」
「アーガン伯爵は容姿が全く似ていない。所作もそうだ。だが一つだけ。本人は気付いていないだろうが感情が昂ったとき親指の爪を弾く癖は同じだ。」
「……。」
「これでもね、いろんな人を見てきている。似ていない親子は確かにいる。でも何かしら、見つけられるものだ。だがティアナにはそれがない。髪の色も瞳の色も。優しく泣き虫な性格も。父親譲りだとしたら。」
「……。」
「あの男にどこも似てないんだよ。」
「……そう。」
アリーが俯く。ダビデは膝の上で握りしめているアリーの拳にそっと手を重ね、優しく宥めた。
「私はお前が進学先に学校を選んだ時、婿取りは平民でもいいと思っていた。」
「えっ?」
「人間性に問題がなく能力が著しく劣っていなければ、お前が望む相手と結婚させるつもりだった。」
「……知らなかったわ。」
「そうみたいだな。お前は一度も相手を連れてこなかった。紹介も、なかった。だからお前には相手がいないんだろうと。それならバルクはどうだろう、そう思ったんだが。」
「バルクは、違うの。」
「ああ、そうだな。あれはお前にとって男ではなかったんだろう。バルクにとってもそうだったようにな。」
「ごめんなさい。」
「謝らなくていい。話せない相手だったんだろう?お前は賢い。ただの平民なら紹介くらいはしたはずだ。自分で言うのも何だが偏見はないつもりだ。」
「そうね。」
「なのにしなかった。いや、出来なかったが正しいか。アリー。今後のこともある。知っておかねばならないことだ。」
ダビデがアリーを見つめた。泣くアリーを見るのは辛い。だが知らなければ。
「相手は誰だ、アリー。」
「……。ルディ。それしか知らないの。彼は……司祭見習いなの。」
ダビデは絶句した。もし誰かに知られれば、アリーも相手も。最悪ティアナまで。
死罪となる。
アリーの手がカップに当たって僅かに紅茶が溢れた。茫然とダビデを見つめる。見返すダビデの瞳は凪いでいた。
「お父様、あの。」
「初めてティアナと会った時にね、あぁメアリに似ているなぁと思ったんだ。雰囲気がね。所作はアリーに似ている。だがね、私が何度かあったあの男に似ているところがどこにもない。何度会っても見つけられなかったんだよ。」
「それ、は。」
「アーガン伯爵は容姿が全く似ていない。所作もそうだ。だが一つだけ。本人は気付いていないだろうが感情が昂ったとき親指の爪を弾く癖は同じだ。」
「……。」
「これでもね、いろんな人を見てきている。似ていない親子は確かにいる。でも何かしら、見つけられるものだ。だがティアナにはそれがない。髪の色も瞳の色も。優しく泣き虫な性格も。父親譲りだとしたら。」
「……。」
「あの男にどこも似てないんだよ。」
「……そう。」
アリーが俯く。ダビデは膝の上で握りしめているアリーの拳にそっと手を重ね、優しく宥めた。
「私はお前が進学先に学校を選んだ時、婿取りは平民でもいいと思っていた。」
「えっ?」
「人間性に問題がなく能力が著しく劣っていなければ、お前が望む相手と結婚させるつもりだった。」
「……知らなかったわ。」
「そうみたいだな。お前は一度も相手を連れてこなかった。紹介も、なかった。だからお前には相手がいないんだろうと。それならバルクはどうだろう、そう思ったんだが。」
「バルクは、違うの。」
「ああ、そうだな。あれはお前にとって男ではなかったんだろう。バルクにとってもそうだったようにな。」
「ごめんなさい。」
「謝らなくていい。話せない相手だったんだろう?お前は賢い。ただの平民なら紹介くらいはしたはずだ。自分で言うのも何だが偏見はないつもりだ。」
「そうね。」
「なのにしなかった。いや、出来なかったが正しいか。アリー。今後のこともある。知っておかねばならないことだ。」
ダビデがアリーを見つめた。泣くアリーを見るのは辛い。だが知らなければ。
「相手は誰だ、アリー。」
「……。ルディ。それしか知らないの。彼は……司祭見習いなの。」
ダビデは絶句した。もし誰かに知られれば、アリーも相手も。最悪ティアナまで。
死罪となる。
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