【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 11 真実

Un

　酒場で。市場で。スラムで。
　少しずつ、時間をかけて。ある屋敷について噂話が囁かれるようになった。

『隠している、金があるらしい。』
『使用人から、聞いた話だが。』
『屋敷中に、金が飾られているらしい。』
『美しい男女が、囲われているらしい。』
『警備員が、漏らした話だが。』

　ヒソヒソ。コソコソ。
　噂の的になっているのは、その国では身分が高く平民は姿を見ることも叶わない人物の住む屋敷だった。

　貧富の差が激しいマールバラ帝国。

　王族や貴族は贅を凝らし、享楽的に暮らす国。
　かたや平民や孤児はその日暮らしで生きる貧しい民の多い国。
　奴隷こそいないが、国民の多くが不満を煮詰めたような国。

　その国の街で。辺境の地で。芽吹く不満の種。
　撒いて、育てて。
　それはダビデからの指示で動いているプレシーズの仕事だった。

　不満の矛先は、ニコラス・ホルソール。

　ダビデの両親を殺した男。