94 / 520
événement principal acte 6 comté de Argan中編
vingt-deux
しおりを挟む
置かれた封筒を凝視する。
確かバルクと会ったのは領都中央広場だった。あれから一週間以上経っている。
「そのー。渡さなきゃって思ってたんですけど。」
「……。」
「忘れてたって言い出しにくくて。」
「……。」
「すみません!ほんっとすみません!」
大声で謝りながら額がテーブルに打ち付けられる。
派手な音が響いて紅茶が揺れた。
「やめろ、溢れる。」
「あ、はい。」
顔を上げると前髪が乱れ、赤くなった額が覗いた。ちらちら横目で見てくる。
「やめろ、鬱陶しい。」
「なんかアリーに似てきてません?」
悲しそうな顔をされるともう駄目だった。
声を出して笑う。
久しぶりな気がした。
ぽかーんと阿呆面を晒してバルクが見てきた。
それもまた可笑しい。
一頻り笑うとカップを持ち上げ、紅茶を飲んだ。
「ティアナに謝罪の手紙を出すように。」
「え?」
「渡すのを忘れてくしゃくしゃになってしまいました、ごめんなさいと書くように。」
「え?!ひどい!そんなのティアナに嫌われるじゃないですか!」
「書かないと私がティアナを悲しませるだろう?」
「そうですけど!」
「否定しないんだな?そんなにティアナとは関わっていないんだが?」
なぜ手紙を?とカップを持ったまま首を傾げてバルクを見やる。
「知りませんよ!知りませんけどティアナはエリオット様大好きじゃないですか!いつ会ってもお兄様しか言いませんよ?!たまにはバルク叔父さんの話もして欲しいのに!」
「本人相手に何を話すんだ。」
「それこそ、バルク叔父さん大好き!が欲しいんですよ。エリオット様ばかりずるいですよ!」
「ずるいは口癖か。」
「え?そんなに言ってます?」
「まぁな。と言うか名を呼ぶのはやめろ。」
「ずるい!アリーは呼んでるのに!」
また、ずるいと来た。
「好きにしろ。」
「やった!」
さっきまでの萎れた態度が嘘のようにはしゃぐ。
それを無視してカップをソーサーに戻すと手紙を手に取った。
表には〈お兄様へ〉と書いてある。
裏返すとクンツァイト色の蝋にラーレのシーリングスタンプが押されていた。右下には〈ティアナ〉と書かれている。
そのまま上着の内ポケットに仕舞うとバルクが「読まないんですか?!」と食いついてきた。
「読むがここでは読まない。」
「えーそんなー。」
「盗み見るつもりか。」
「いやそんなつもりは。ただ、ちょこーっと。叔父としては気になると言うか。」
胡乱な目線を送るとやっと黙って紅茶に口をつけた。
確かバルクと会ったのは領都中央広場だった。あれから一週間以上経っている。
「そのー。渡さなきゃって思ってたんですけど。」
「……。」
「忘れてたって言い出しにくくて。」
「……。」
「すみません!ほんっとすみません!」
大声で謝りながら額がテーブルに打ち付けられる。
派手な音が響いて紅茶が揺れた。
「やめろ、溢れる。」
「あ、はい。」
顔を上げると前髪が乱れ、赤くなった額が覗いた。ちらちら横目で見てくる。
「やめろ、鬱陶しい。」
「なんかアリーに似てきてません?」
悲しそうな顔をされるともう駄目だった。
声を出して笑う。
久しぶりな気がした。
ぽかーんと阿呆面を晒してバルクが見てきた。
それもまた可笑しい。
一頻り笑うとカップを持ち上げ、紅茶を飲んだ。
「ティアナに謝罪の手紙を出すように。」
「え?」
「渡すのを忘れてくしゃくしゃになってしまいました、ごめんなさいと書くように。」
「え?!ひどい!そんなのティアナに嫌われるじゃないですか!」
「書かないと私がティアナを悲しませるだろう?」
「そうですけど!」
「否定しないんだな?そんなにティアナとは関わっていないんだが?」
なぜ手紙を?とカップを持ったまま首を傾げてバルクを見やる。
「知りませんよ!知りませんけどティアナはエリオット様大好きじゃないですか!いつ会ってもお兄様しか言いませんよ?!たまにはバルク叔父さんの話もして欲しいのに!」
「本人相手に何を話すんだ。」
「それこそ、バルク叔父さん大好き!が欲しいんですよ。エリオット様ばかりずるいですよ!」
「ずるいは口癖か。」
「え?そんなに言ってます?」
「まぁな。と言うか名を呼ぶのはやめろ。」
「ずるい!アリーは呼んでるのに!」
また、ずるいと来た。
「好きにしろ。」
「やった!」
さっきまでの萎れた態度が嘘のようにはしゃぐ。
それを無視してカップをソーサーに戻すと手紙を手に取った。
表には〈お兄様へ〉と書いてある。
裏返すとクンツァイト色の蝋にラーレのシーリングスタンプが押されていた。右下には〈ティアナ〉と書かれている。
そのまま上着の内ポケットに仕舞うとバルクが「読まないんですか?!」と食いついてきた。
「読むがここでは読まない。」
「えーそんなー。」
「盗み見るつもりか。」
「いやそんなつもりは。ただ、ちょこーっと。叔父としては気になると言うか。」
胡乱な目線を送るとやっと黙って紅茶に口をつけた。
0
お気に入りに追加
726
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる