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événement principal acte 6 comté de Argan前編
dix-neuf
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このまま領邸に戻っても気持ちを引きずりそうなので愛馬を走らせることにした。
演習場の西側半分はぐるりとコースになっていて、乗馬の訓練に使われている。最終地点には休ませるための小さな池があり、そこを目指した。
エリオットの気持ちが伝わるのか愛馬も嘶き荒々しく駆ける。
黒に近い茶の牝馬はエリオットが15歳で貴族学園を卒業した年に産まれた。王都から帰っては自ら手をかけ、世話をした。普段は大人しく慎重で、エリオットが騎乗戦闘訓練で戦う時は力強い走りで鼓舞してくれる。
早駆けするとあっという間に池にたどり着く。手綱を引いて首を撫でると軽く叩き、するりと降りた。
そのまま池に近づき、休ませる。
水を飲む横顔を見つめていると、ささくれた気持ちが少し落ち着いてきた。
真っ黒で艶やかな瞳を見るとロロを思い出す。同時にロロを抱いていたティアナのことも思い出した。
どうしているだろうか。
そう言えば愛馬ジュリはティアナの色に似ている。もっともティアナの方が殆ど黒に見える深い茶の髪だ。腰まで長くまっすぐで艶があり、まるで溶かしたチョコレートのようだった。一度だけ、頭に手を乗せたことがある。
どんな感触だっただろう。
手を伸ばし、ジュリの首を撫でながら思い出そうとする。滑らかなジュリの毛並みは心地よい。ティアナも撫でるとこうだろうか。
そう言えば、今度遊ぶと約束したな。
そのままになっていたと思い出す。とは言ってもその場しのぎで叶える気はなかった。
思い出したことで少し罪悪感はあるが、正直どう接していいものか分からない。
まぁ、すぐに進学する。それまでに淑女教育は終わらせるから会う機会も減るだろう。
貴族学園に通うのなら寮に入るかもしれない。どちらを選ぶにしても別邸から通うのならば、今よりタウンハウスから足は遠のくだろう。
それとも状況が変わってアリーと共に別邸を出ているかもしれない。
ありうる未来だな、と再びジュリに視線をやった。
「さて。戻って害虫駆除だ。」
演習場の西側半分はぐるりとコースになっていて、乗馬の訓練に使われている。最終地点には休ませるための小さな池があり、そこを目指した。
エリオットの気持ちが伝わるのか愛馬も嘶き荒々しく駆ける。
黒に近い茶の牝馬はエリオットが15歳で貴族学園を卒業した年に産まれた。王都から帰っては自ら手をかけ、世話をした。普段は大人しく慎重で、エリオットが騎乗戦闘訓練で戦う時は力強い走りで鼓舞してくれる。
早駆けするとあっという間に池にたどり着く。手綱を引いて首を撫でると軽く叩き、するりと降りた。
そのまま池に近づき、休ませる。
水を飲む横顔を見つめていると、ささくれた気持ちが少し落ち着いてきた。
真っ黒で艶やかな瞳を見るとロロを思い出す。同時にロロを抱いていたティアナのことも思い出した。
どうしているだろうか。
そう言えば愛馬ジュリはティアナの色に似ている。もっともティアナの方が殆ど黒に見える深い茶の髪だ。腰まで長くまっすぐで艶があり、まるで溶かしたチョコレートのようだった。一度だけ、頭に手を乗せたことがある。
どんな感触だっただろう。
手を伸ばし、ジュリの首を撫でながら思い出そうとする。滑らかなジュリの毛並みは心地よい。ティアナも撫でるとこうだろうか。
そう言えば、今度遊ぶと約束したな。
そのままになっていたと思い出す。とは言ってもその場しのぎで叶える気はなかった。
思い出したことで少し罪悪感はあるが、正直どう接していいものか分からない。
まぁ、すぐに進学する。それまでに淑女教育は終わらせるから会う機会も減るだろう。
貴族学園に通うのなら寮に入るかもしれない。どちらを選ぶにしても別邸から通うのならば、今よりタウンハウスから足は遠のくだろう。
それとも状況が変わってアリーと共に別邸を出ているかもしれない。
ありうる未来だな、と再びジュリに視線をやった。
「さて。戻って害虫駆除だ。」
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