【完結】R-15 私はお兄様を愛している

événement principal acte 5 変化

Treize

　侍女やメイドは置いていないが、料理人兼下働きは通いでいる。

　タウンハウスの厨房で働いているジャックは、アーガン伯爵領では騎士だったがエリオットを慕い王都にくる為使用人になったのだと言う。

　毎朝訪れ、食糧や日用品を都度在庫を見ながら運び入れる。
　昼と夜そして翌朝の食事を作ると、頼まれた雑用や力仕事をこなし昼前にはタウンハウスの厨房へと帰っていく。

　掃除や洗濯はアリーがこなしていた。

　ダビデへ手紙を認めながら、アリーは時折開け放した窓から外を眺めた。

　楓が、さやさやと揺れていた。

　夕刻にはシュトラウ子爵としてタウンハウスに赴かなければならない。
　上級使用人たちと、顔合わせがあるのだ。
　晩餐にも招待されている。

　それを考えると気が重かった。

　エリオットが全て取り仕切ってくれる予定だが、タウンハウスにはベントリーがいる。

　あの日以来、会うのは初めてだった。

　重いため息が知らず漏れた。