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événement principal acte 5 変化

Trois

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「婚姻?」
「うん。」
「婚約は?」
「なしで。」
「普通はするものでしょ。」
「うーん。なんかさっさと済ませたいんだってさ。」
 肩を竦めるバルク。
 呆気に取られたアリー。

 ここは別邸の四阿。

 アリーとティアナが頻繁に訪れる、お気に入りの場所だった。

 別邸に居を移して、二ヶ月。

 エマに付いてもらって週三回、アリーは淑女教育の見直しを受けている。

 詳しい経緯は分からないが過去ガヴァネスの経験があるとかで、エリオットが手配してくれたのだ。

 それ以外の時間は刺繍の練習をしたり、周囲を散策したりして過ごす。

 エリオットを訪ねてくるダビデやバルクも顔を出してくれるので、退屈しない毎日だった。

 そこに今日はバルクがひょいっと顔を出した。エリオットのところへ取引の話で立ち寄った帰りらしい。

 紅茶を用意した途端バルクが急に「婚姻するわ。」と言い出したのだ。

 驚くに決まってる。

「お相手は?」
「うーん、子爵令嬢。」
「あなた、名も知らない方と婚姻するの?」
 アリーの声が刺々しくなる。
 バルクは慌てて両手を振った。

「いやいやいや。まさか!名前だろ?オリィヴィエ。オリヴィエ・ワイズ。」
「ワイズ子爵令嬢?」
「知ってんの?」
「いいえ。学生の頃、姉のイザベラ・ワイズ子爵令嬢にお会いする機会があって聞いたことがあるだけよ。」
 アリーは緩く首を振った。

 イザベラ・ワイズ子爵令嬢。

 アリーが立ち上げた【刺繍の会】の一人が紹介を頼まれた、とお茶会に連れてきたことがあった。

 急に押しかけてきて「刺繍が得意なの。」と言い参加したのだが言うほどの腕ではなかった。
 本人も周りとの差に矜持が傷付いたのか参加はそれきりだった。
 あと覚えているのは刺繍を刺している間中、妹の悪口を散々聞かされたこと。

 その妹の名が確かオリヴィエだった。

「どんな方なの?」
「そうだなぁ。気が強いな。あと手も早い。」
「え?」
「怒ってクッション投げつけられたな、この前。」
「あなた、何やったのよ。」
 胡乱な瞳で見つめるアリー。

 バルクは呑気に首を捻った。
「いやぁ?褒めたんだけど。つつくとすぐ泣いちゃって可愛いなって。」
 変態か。

 アリーはうんざりした。
 この男、やっぱりクズだわ。
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