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the warmth of life I give to you ,Felicite and Owen
喧騒
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きゃあきゃあと甲高い声を上げながら、紫色の髪を靡かせ駆け回る。
その光景をオーウェンとフェリシテは木陰から見つめた。
グルベンキアン大公領にある森近く。平原が広がり、近くにアンシェルが茂る、ここはオーウェンとフェリシテにとってお気に入りの場所だった。約百年前、アンシェルが絶滅した頃から聳え立つ大樹。その根元にラグを広げ、クッションを置き、ゆったりと家族でピクニックをする。
「「父様!母様!」」
そっくりな顔の二人が駆け込んできて、それぞれに飛び付いた。後ろを追いかけていたデイルが立ち止まり、膝に手をつくと大きく息を吐く。
「レオハルト様、フュリュネ様……。」
「デイル、遅いよ。」
「遅いわ、デイル。」
口々に言われ、デイルが情けなさそうに眉を顰める。
「デイル、疲れただろう。ほら。」
オーウェンからワインの入ったグラスを渡され、受け取ると大樹にもたれ煽る。疲れ切った幼馴染に苦笑した。
「足が速くて、少しでも目を離すとに何処かに行かれますし。幼い頃のお二人にそっくりです。」
「ははは!そうか?レオもリューも父様と母様に似たんだなぁ!」
嬉しそうにオーウェンが腰に抱きついたレオハルトを抱き上げる。
「父様!リューも!」
フェリシテの膝に乗っていたフュリュネが立ち上がり、オーウェンの腕に取り付いた。
「ああ、順番にな?」
「「父様大好き!」」
「父様もだよ。」
嬉しそうに笑いながら、それぞれの額に口付ける。子どもたちが、くすくすと笑い声をあげた。
「母様ー。お腹すいたー。」
「わたしもー。」
「それならサンドイッチとタルトがあるわ。どっちにする?」
「んー、何が入ってるの?」
「入ってるの?」
「ローストビーフと、たまごだったかしら?タルトは、さくらんぼよ。」
「「じゃあ、サンドイッチにする!!」」
侍女たちが準備する傍ら、オーウェンとフェリシテの間に座り、レオハルトとフュリュネが話し出す。フェリシテがずっと、オーウェンに与えたかった幸せな時間。
ああ、無事に産まれて本当に良かった。
双子と知ったとき、正直不安だった。いくら歳の変わらないアルマが先に産んだとはいえ、彼女は一人しか孕っていない。高齢で初産で双子。リスクは一気に跳ね上がった。それでも産む以外の選択肢はあり得ない。こうなったら意地でも無事に産み落とし、自分も健康でいなければ。オーウェンや子どもたちを残して逝くなんて、そんなこと絶対に出来ない。
もしそんなことになれば、残されたオーウェンはずっと自分を責め続ける。
だから、フェリシテは出来るだけのことをやった。イェイツ帝国の医師から指導を受け、禁止されたことは絶対に避け、やらなかった。反対に勧められたことは率先してなんでもやった。勤勉さを発揮して、産み落とすまで気を抜くことはなかった。そうして、この腕に抱いた愛しい我が子たち。
「母様、おいしー!」
「おいしいです、母様!」
オーウェンそっくりな息子と娘。伯父の皇帝と伯母の皇妃は溺愛しているし、歳の離れた従兄の皇太子は弟や妹のように猫っ可愛がりしている。産まれた時は皇位継承権の復権を祖母が言い出したが黙殺した。冗談じゃない、この子たちには、あんな息苦しい思いをしながら生きてほしくはない。本人たちが望むなら別だが、それはないだろう。過ぎたものを欲しがるような、そんな育て方はしないつもりだった。
「たくさん食べるといいわ、まだまだあるから。」
「「はーい!!」」
「さぁデイル。休憩は終わりよ、こっちに来て子どもたちを見て。」
こう言えば、デイルもラグに座って休まざるを得ない。フェリシテの意図が伝わったのか苦笑したデイルが身を起こし、ラグへと上がる。レオハルトとフュリュネの後ろに座ると甲斐甲斐しく世話を焼き出した。
二人はデイルが大好きで、よく後ろを付いて回っている。三人を見つめる、オーウェンは本当に幸せそうで。
貴方が諦めず、私との未来を望んでくれたから。
フェリシテの視線に気付いたオーウェンが顔を上げ、眩しそうに目を細めた。微笑み返すと、赤面しながら続く言葉に思わず叫ぶ。
「フェリ、この子たちに弟か妹はどうかな?」
「……勘弁してよ!」
レオハルトとフュリュネが瞳を輝かせ、「「弟か妹が出来るの??」」と詰め寄ってくる。後が無くなったフェリシテは、笑顔でオーウェンの腕を抓った。
その光景をオーウェンとフェリシテは木陰から見つめた。
グルベンキアン大公領にある森近く。平原が広がり、近くにアンシェルが茂る、ここはオーウェンとフェリシテにとってお気に入りの場所だった。約百年前、アンシェルが絶滅した頃から聳え立つ大樹。その根元にラグを広げ、クッションを置き、ゆったりと家族でピクニックをする。
「「父様!母様!」」
そっくりな顔の二人が駆け込んできて、それぞれに飛び付いた。後ろを追いかけていたデイルが立ち止まり、膝に手をつくと大きく息を吐く。
「レオハルト様、フュリュネ様……。」
「デイル、遅いよ。」
「遅いわ、デイル。」
口々に言われ、デイルが情けなさそうに眉を顰める。
「デイル、疲れただろう。ほら。」
オーウェンからワインの入ったグラスを渡され、受け取ると大樹にもたれ煽る。疲れ切った幼馴染に苦笑した。
「足が速くて、少しでも目を離すとに何処かに行かれますし。幼い頃のお二人にそっくりです。」
「ははは!そうか?レオもリューも父様と母様に似たんだなぁ!」
嬉しそうにオーウェンが腰に抱きついたレオハルトを抱き上げる。
「父様!リューも!」
フェリシテの膝に乗っていたフュリュネが立ち上がり、オーウェンの腕に取り付いた。
「ああ、順番にな?」
「「父様大好き!」」
「父様もだよ。」
嬉しそうに笑いながら、それぞれの額に口付ける。子どもたちが、くすくすと笑い声をあげた。
「母様ー。お腹すいたー。」
「わたしもー。」
「それならサンドイッチとタルトがあるわ。どっちにする?」
「んー、何が入ってるの?」
「入ってるの?」
「ローストビーフと、たまごだったかしら?タルトは、さくらんぼよ。」
「「じゃあ、サンドイッチにする!!」」
侍女たちが準備する傍ら、オーウェンとフェリシテの間に座り、レオハルトとフュリュネが話し出す。フェリシテがずっと、オーウェンに与えたかった幸せな時間。
ああ、無事に産まれて本当に良かった。
双子と知ったとき、正直不安だった。いくら歳の変わらないアルマが先に産んだとはいえ、彼女は一人しか孕っていない。高齢で初産で双子。リスクは一気に跳ね上がった。それでも産む以外の選択肢はあり得ない。こうなったら意地でも無事に産み落とし、自分も健康でいなければ。オーウェンや子どもたちを残して逝くなんて、そんなこと絶対に出来ない。
もしそんなことになれば、残されたオーウェンはずっと自分を責め続ける。
だから、フェリシテは出来るだけのことをやった。イェイツ帝国の医師から指導を受け、禁止されたことは絶対に避け、やらなかった。反対に勧められたことは率先してなんでもやった。勤勉さを発揮して、産み落とすまで気を抜くことはなかった。そうして、この腕に抱いた愛しい我が子たち。
「母様、おいしー!」
「おいしいです、母様!」
オーウェンそっくりな息子と娘。伯父の皇帝と伯母の皇妃は溺愛しているし、歳の離れた従兄の皇太子は弟や妹のように猫っ可愛がりしている。産まれた時は皇位継承権の復権を祖母が言い出したが黙殺した。冗談じゃない、この子たちには、あんな息苦しい思いをしながら生きてほしくはない。本人たちが望むなら別だが、それはないだろう。過ぎたものを欲しがるような、そんな育て方はしないつもりだった。
「たくさん食べるといいわ、まだまだあるから。」
「「はーい!!」」
「さぁデイル。休憩は終わりよ、こっちに来て子どもたちを見て。」
こう言えば、デイルもラグに座って休まざるを得ない。フェリシテの意図が伝わったのか苦笑したデイルが身を起こし、ラグへと上がる。レオハルトとフュリュネの後ろに座ると甲斐甲斐しく世話を焼き出した。
二人はデイルが大好きで、よく後ろを付いて回っている。三人を見つめる、オーウェンは本当に幸せそうで。
貴方が諦めず、私との未来を望んでくれたから。
フェリシテの視線に気付いたオーウェンが顔を上げ、眩しそうに目を細めた。微笑み返すと、赤面しながら続く言葉に思わず叫ぶ。
「フェリ、この子たちに弟か妹はどうかな?」
「……勘弁してよ!」
レオハルトとフュリュネが瞳を輝かせ、「「弟か妹が出来るの??」」と詰め寄ってくる。後が無くなったフェリシテは、笑顔でオーウェンの腕を抓った。
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