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the warmth of life I give to you ,Felicite and Owen
慶喜
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目の前で、オーウェンがぴたっと固まった。隣に控えているデイルも、驚きで黄色の瞳が丸くなっている。
「フェリ……今なんて……。」
「懐妊したの、オーウェン。」
もう一度、噛んで含めるように言うとオーウェンが、ごくりと唾を飲んだ。
「か、身体は?大丈夫なのか?」
「フェリシテ様、医師はなんと?」
デイルも加わり、二人揃ってフェリシテの体調をまず心配する。夫と幼馴染の労りが嬉しい。
「大丈夫よ、母子共に健康ですって。」
それから、避妊薬を飲まず子が出来やすい日を調べ積極的に懐妊を狙ったのだと二人に告げた。
「少し前にイェイツ帝国から友人を招いたでしょう?」
「あ、ああ。確かカーリア男爵家のアルマ様とも親しいと。」
「ええ。彼女はプレスコット子爵家のヴィヴィアン様から紹介してもらったの。イェイツ帝国でも珍しい女性の医師で、高齢出産の研究をしている第一人者なのよ。彼女にはアルマ様も診てもらっていたの。」
「そうなのか……。」
そう言って、果実水を手に取って口に含んだ。柑橘類を搾ったそれは、さっぱりとしていて飲みやすい。ソファの向かいに座るオーウェンに微笑んだ。
「勝手なことして、ごめんなさい。貴方との子が、どうしても欲しかったの。でも貴方は私の身体を心配して子を作ることを遠慮していたでしょう?」
「それはもちろん、そうだよ。君が一番大事なんだから。」
「だから懐妊するに当たって、その前に詳しく検査を受けたわ。私って歳の割には頑丈なんですって。」
「頑丈って。」
「ほら。地質学者として、皇国を飛び出して他国を色々旅してたでしょう?そのおかげで普通の貴族女性より体力があるらしいわ。」
説明されて納得したのかオーウェンとデイルが顔を見合わせた。普通なら貴族女性の移動は馬車だし、なんなら行き先によっては護衛が抱えて行くこともある。殆ど歩くことはないのだ。対してフェリシテは男装して傭兵を雇い、徒歩や馬で旅していた。比べるまでもなく、体力はある。
「問題ないと診断されたから、貴方を驚かせたくて。ごめんなさい、オーウェン。」
「フェリ……。」
「……出来れば……喜んで欲しいんだけど。」
勝手に懐妊したことで、怒らせるかもしれない。でも、閨でのオーウェンを見ていると彼は喜んでくれる。そう確信していた。
果たしてオーウェンはフェリシテの読み通り応えてくれた。
「フェリ!ああフェリ!ありがとう!嬉しいよ!」
立ち上がって隣に座ると、優しく包むように抱きしめられる。少しだけ不安だった気持ちが緩み、身を任せた。
「オーウェン、怒ってない?」
「怒るなんて!ああ!こんなに嬉しいことはないよ!ただ、身体だけは心配だから。本当に気を付けて?いいね?」
「ふふふ、分かったわ。」
頷いて胸に擦り寄る。デイルが声を上擦らせた。
「おめでとうございます、オーウェン様。フェリシテ様。」
三人だけの時は、幼馴染として振る舞う。それはオーウェンとフェリシテがそう望んだからだ。今の彼は一臣下としてではなく、幼馴染として喜んでくれている。
「ありがとう、デイル。一緒に子守りもお願いね?」
「はい、もちろん。」
嬉しそうに微笑む幼馴染に微笑み返す。この三ヶ月後、双子だと判明したことで嬉しい悲鳴を上げつつもデイルは一人頭を抱えた。
「フェリ……今なんて……。」
「懐妊したの、オーウェン。」
もう一度、噛んで含めるように言うとオーウェンが、ごくりと唾を飲んだ。
「か、身体は?大丈夫なのか?」
「フェリシテ様、医師はなんと?」
デイルも加わり、二人揃ってフェリシテの体調をまず心配する。夫と幼馴染の労りが嬉しい。
「大丈夫よ、母子共に健康ですって。」
それから、避妊薬を飲まず子が出来やすい日を調べ積極的に懐妊を狙ったのだと二人に告げた。
「少し前にイェイツ帝国から友人を招いたでしょう?」
「あ、ああ。確かカーリア男爵家のアルマ様とも親しいと。」
「ええ。彼女はプレスコット子爵家のヴィヴィアン様から紹介してもらったの。イェイツ帝国でも珍しい女性の医師で、高齢出産の研究をしている第一人者なのよ。彼女にはアルマ様も診てもらっていたの。」
「そうなのか……。」
そう言って、果実水を手に取って口に含んだ。柑橘類を搾ったそれは、さっぱりとしていて飲みやすい。ソファの向かいに座るオーウェンに微笑んだ。
「勝手なことして、ごめんなさい。貴方との子が、どうしても欲しかったの。でも貴方は私の身体を心配して子を作ることを遠慮していたでしょう?」
「それはもちろん、そうだよ。君が一番大事なんだから。」
「だから懐妊するに当たって、その前に詳しく検査を受けたわ。私って歳の割には頑丈なんですって。」
「頑丈って。」
「ほら。地質学者として、皇国を飛び出して他国を色々旅してたでしょう?そのおかげで普通の貴族女性より体力があるらしいわ。」
説明されて納得したのかオーウェンとデイルが顔を見合わせた。普通なら貴族女性の移動は馬車だし、なんなら行き先によっては護衛が抱えて行くこともある。殆ど歩くことはないのだ。対してフェリシテは男装して傭兵を雇い、徒歩や馬で旅していた。比べるまでもなく、体力はある。
「問題ないと診断されたから、貴方を驚かせたくて。ごめんなさい、オーウェン。」
「フェリ……。」
「……出来れば……喜んで欲しいんだけど。」
勝手に懐妊したことで、怒らせるかもしれない。でも、閨でのオーウェンを見ていると彼は喜んでくれる。そう確信していた。
果たしてオーウェンはフェリシテの読み通り応えてくれた。
「フェリ!ああフェリ!ありがとう!嬉しいよ!」
立ち上がって隣に座ると、優しく包むように抱きしめられる。少しだけ不安だった気持ちが緩み、身を任せた。
「オーウェン、怒ってない?」
「怒るなんて!ああ!こんなに嬉しいことはないよ!ただ、身体だけは心配だから。本当に気を付けて?いいね?」
「ふふふ、分かったわ。」
頷いて胸に擦り寄る。デイルが声を上擦らせた。
「おめでとうございます、オーウェン様。フェリシテ様。」
三人だけの時は、幼馴染として振る舞う。それはオーウェンとフェリシテがそう望んだからだ。今の彼は一臣下としてではなく、幼馴染として喜んでくれている。
「ありがとう、デイル。一緒に子守りもお願いね?」
「はい、もちろん。」
嬉しそうに微笑む幼馴染に微笑み返す。この三ヶ月後、双子だと判明したことで嬉しい悲鳴を上げつつもデイルは一人頭を抱えた。
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