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Clive and Elliot you treasures from Theresa・Argan
愛欲
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それからエリオットを無事出産したテレジアは、世話を乳母に任せ自室へと籠るようになった。
クリスとの不仲を考えると、そんな夫との子を可愛がれば、変な疑いを持つものがいるかもしれないと不安になったからだった。そうなれば誰かがエリオットの出自を疑問に思うかもしれない。息子を守る為にも、距離を置いた方がいい。考え過ぎたせいか乳はすぐ止まり、偶には息子へあげたいと願うことも叶わなくなった。愛しい人と愛し合い、授かった我が子だ。本当なら毎日会い、乳を含ませ、抱き上げ、頬ずりしたい。飽きることなく眺めていたい。
我慢できなくなると、人目を忍んでこっそり様子を見に行った。生後半年を過ぎる頃に新しく乳母に就いたエマは、気配りが出来る優しい女性だった。テレジアが訪れても何も言わず、適度な距離で二人きりにしてくれる。心置きなくエリオットを抱き、愛しい顔を眺め、こっそり「エリィ。」と呼んでも聞こえないふりをしてくれた。
エリオットを見つめていると、クライヴを思い出す。テレジアを見つめ返す金瞳に、薄い緑の虹彩が散るのだ。自分とクライヴの色。
彼は忙しくしているらしく、遠征に向かう際、出陣式を終え領邸前を通る姿を遠目に見つめるくらいしか出来ることはなかった。無事に、怪我をせず、帰ってきて欲しい。そう願い、声もなく送りだす。帰還すれば安堵に身体が震え、涙が溢れそうになる。そんなことの繰り返しだった。
そうしてその度に、思い出すのだ。あの保養地で過ごした夏の日々を。あの頃のように、駆け寄り、微笑み、愛してると伝えたい。
あの腕に抱かれたい。熱い身体に包まれたい。お前だけだと、あの瞳に見つめられたい。
あんな風に愛されて、その熱を知ってしまった後ではもう以前のように見つめているだけで満足なんて出来なかった。また触れて欲しい。愛して欲しい。クライヴの愛が、温もりが足りない。渇いてひび割れて朽ちてしまいそう。
エリオットが出来るまで、毎日のように愛し合った。月のものがある時ですら、唇で指でお互いのことを慈しんだ。懐妊が分かった後は、挿入こそしないものの、お互いの身体に触れあった。あの喜びが忘れられない。
ある時、領邸のメイドたちが騎士たちの話をしている場に偶然居合わせた。聞くつもりはなかったが、それは娼館の話だった。
「戦った後は、昂るらしくて。分かるんだけど、それで娼館に行くなんて!」
「え?!帰還するまで我慢出来ないの?」
「知らないわよ、もう!」
年若いメイドたちの明け透けな閨事情を聞いてしまい、テレジアは固まった。付いていた侍女が注意すると必死に謝るメイドたち。そのまま慌てて去っていく彼女たちの背中を呆然と見送った。
クライヴも、そうなのかしら?
途端にさぁっと血と言う血が下がった。ふらりとよろける。侍女が慌てて手を握り、自室へと戻された。
そんなわけ、ないわ。お互いだけだとそう、そう言っていたもの。
何度も何度も自身に言い聞かせる。もう、気が狂いそうだった。
クリスとの不仲を考えると、そんな夫との子を可愛がれば、変な疑いを持つものがいるかもしれないと不安になったからだった。そうなれば誰かがエリオットの出自を疑問に思うかもしれない。息子を守る為にも、距離を置いた方がいい。考え過ぎたせいか乳はすぐ止まり、偶には息子へあげたいと願うことも叶わなくなった。愛しい人と愛し合い、授かった我が子だ。本当なら毎日会い、乳を含ませ、抱き上げ、頬ずりしたい。飽きることなく眺めていたい。
我慢できなくなると、人目を忍んでこっそり様子を見に行った。生後半年を過ぎる頃に新しく乳母に就いたエマは、気配りが出来る優しい女性だった。テレジアが訪れても何も言わず、適度な距離で二人きりにしてくれる。心置きなくエリオットを抱き、愛しい顔を眺め、こっそり「エリィ。」と呼んでも聞こえないふりをしてくれた。
エリオットを見つめていると、クライヴを思い出す。テレジアを見つめ返す金瞳に、薄い緑の虹彩が散るのだ。自分とクライヴの色。
彼は忙しくしているらしく、遠征に向かう際、出陣式を終え領邸前を通る姿を遠目に見つめるくらいしか出来ることはなかった。無事に、怪我をせず、帰ってきて欲しい。そう願い、声もなく送りだす。帰還すれば安堵に身体が震え、涙が溢れそうになる。そんなことの繰り返しだった。
そうしてその度に、思い出すのだ。あの保養地で過ごした夏の日々を。あの頃のように、駆け寄り、微笑み、愛してると伝えたい。
あの腕に抱かれたい。熱い身体に包まれたい。お前だけだと、あの瞳に見つめられたい。
あんな風に愛されて、その熱を知ってしまった後ではもう以前のように見つめているだけで満足なんて出来なかった。また触れて欲しい。愛して欲しい。クライヴの愛が、温もりが足りない。渇いてひび割れて朽ちてしまいそう。
エリオットが出来るまで、毎日のように愛し合った。月のものがある時ですら、唇で指でお互いのことを慈しんだ。懐妊が分かった後は、挿入こそしないものの、お互いの身体に触れあった。あの喜びが忘れられない。
ある時、領邸のメイドたちが騎士たちの話をしている場に偶然居合わせた。聞くつもりはなかったが、それは娼館の話だった。
「戦った後は、昂るらしくて。分かるんだけど、それで娼館に行くなんて!」
「え?!帰還するまで我慢出来ないの?」
「知らないわよ、もう!」
年若いメイドたちの明け透けな閨事情を聞いてしまい、テレジアは固まった。付いていた侍女が注意すると必死に謝るメイドたち。そのまま慌てて去っていく彼女たちの背中を呆然と見送った。
クライヴも、そうなのかしら?
途端にさぁっと血と言う血が下がった。ふらりとよろける。侍女が慌てて手を握り、自室へと戻された。
そんなわけ、ないわ。お互いだけだとそう、そう言っていたもの。
何度も何度も自身に言い聞かせる。もう、気が狂いそうだった。
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