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Clive and Elliot you treasures from Theresa・Argan
当惑
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わたくしは現実がどう言うものか、分かっていなかったのだわ。
テレジアは、そっと窓から外を眺めた。見慣れた景色、アーガン伯爵領。遠くに見える大きくて鬱蒼とした森。小さいけれど平和で安全な領都。騎士たちが騒々しく出入りする騎士団棟と演習場。
何も変わらない、あの夏の前に戻っただけの日常。
しかし一つだけ、変化はあった。大きく膨らみ、張り出した腹。華奢なテレジアに後から取り付けたような丸く大きなそれはクライヴと愛し合い、授かった子がいる証だった。
揺り椅子を動かしながら、撫でてみる。
クライヴと二人、籠りきりで愛し合ったあの夏。二ヶ月半が過ぎた頃、テレジアの懐妊が分かった。二人で手を取り合い、喜んだ。愛しい人と愛しい我が子。幸せを噛み締め、寄り添い合った。クライヴはテレジアを抱いて歩き、座る時は膝に乗せ、食事の時は自ら食べさせた。常に尽くしたがるクライヴは湯浴みも変わらず付きっきりで、テレジアはすっかり、そんな生活に慣れきってしまっていた。
移動しても問題ないと医師に診断され、アーガン伯爵領へと戻る馬車の中でも気持ちは浮き足だっていた。対してクライヴは領地へ近づくに連れ、少しずつ口数が減りテレジアからますます離れようとはしなくなった。
そうして帰ってきたアーガン伯爵領では、懐妊したテレジアをカシアたちが暖かく迎えてくれた。だから、夢が覚めたと思わなかったのだ。クライヴとは会えなくなると、分かっていたのに解っていなかった。
自室に通され、湯浴みをしようとしてクライヴを探した。しかし、そっと手を握り付き添うのは彼ではなく侍女たちだった。
戸惑いながらも済ませると専属医師の診察を受け、許可が出るまで閨は控えるようにと言われた。それからは自室や庭、食堂くらいしか出歩いていない。日に日に大きくなっていく腹を見つめ、隣に視線をやる。どこに行くにも抱き上げ、膝に乗せてくれた愛する人はどこにもいない。
領邸を出て、騎士団棟へ行けば会えるのだ。でも、そんなことは許されない。だってこの腹にいる子はクリスの子だと思われている。夫の異母弟に親しげにするなど出来ない。
わたくし、これまでどうやってクライヴに会えない時間を過ごしていたのかしら。
彼を想い、泣くことすら出来ない。常に侍女が控えていて、名を口にすることすら叶わない。
同日に戻ったクリスは相変わらずテレジアに関心はなく、保養地へ行く前となんら変わりなく過ごしていた。子を設けて帰ってきたのだから、少しは夫婦の仲が改善されたのだろうと考えていた使用人たちの予想は外れ、困ったような不思議がるような雰囲気を感じた。
居心地が悪く、居た堪れない。
クライヴは、どうしているのかしら。あなたも、わたくしを想ってくれている?
もうすぐ、クラークが王都から帰ってくる。テレジアの懐妊を喜んでいるらしいが、両親を脅して無理矢理クリスとの婚約を結び、子が出来ないからと息子の代わりに孕まそうとしてくる舅など。会いたくもない。
頭を振り、負の感情を追い払うと腹を撫でる。
お前は元気に産まれて来るだけでいいわ。母様が、守るからね。
テレジアは、そっと窓から外を眺めた。見慣れた景色、アーガン伯爵領。遠くに見える大きくて鬱蒼とした森。小さいけれど平和で安全な領都。騎士たちが騒々しく出入りする騎士団棟と演習場。
何も変わらない、あの夏の前に戻っただけの日常。
しかし一つだけ、変化はあった。大きく膨らみ、張り出した腹。華奢なテレジアに後から取り付けたような丸く大きなそれはクライヴと愛し合い、授かった子がいる証だった。
揺り椅子を動かしながら、撫でてみる。
クライヴと二人、籠りきりで愛し合ったあの夏。二ヶ月半が過ぎた頃、テレジアの懐妊が分かった。二人で手を取り合い、喜んだ。愛しい人と愛しい我が子。幸せを噛み締め、寄り添い合った。クライヴはテレジアを抱いて歩き、座る時は膝に乗せ、食事の時は自ら食べさせた。常に尽くしたがるクライヴは湯浴みも変わらず付きっきりで、テレジアはすっかり、そんな生活に慣れきってしまっていた。
移動しても問題ないと医師に診断され、アーガン伯爵領へと戻る馬車の中でも気持ちは浮き足だっていた。対してクライヴは領地へ近づくに連れ、少しずつ口数が減りテレジアからますます離れようとはしなくなった。
そうして帰ってきたアーガン伯爵領では、懐妊したテレジアをカシアたちが暖かく迎えてくれた。だから、夢が覚めたと思わなかったのだ。クライヴとは会えなくなると、分かっていたのに解っていなかった。
自室に通され、湯浴みをしようとしてクライヴを探した。しかし、そっと手を握り付き添うのは彼ではなく侍女たちだった。
戸惑いながらも済ませると専属医師の診察を受け、許可が出るまで閨は控えるようにと言われた。それからは自室や庭、食堂くらいしか出歩いていない。日に日に大きくなっていく腹を見つめ、隣に視線をやる。どこに行くにも抱き上げ、膝に乗せてくれた愛する人はどこにもいない。
領邸を出て、騎士団棟へ行けば会えるのだ。でも、そんなことは許されない。だってこの腹にいる子はクリスの子だと思われている。夫の異母弟に親しげにするなど出来ない。
わたくし、これまでどうやってクライヴに会えない時間を過ごしていたのかしら。
彼を想い、泣くことすら出来ない。常に侍女が控えていて、名を口にすることすら叶わない。
同日に戻ったクリスは相変わらずテレジアに関心はなく、保養地へ行く前となんら変わりなく過ごしていた。子を設けて帰ってきたのだから、少しは夫婦の仲が改善されたのだろうと考えていた使用人たちの予想は外れ、困ったような不思議がるような雰囲気を感じた。
居心地が悪く、居た堪れない。
クライヴは、どうしているのかしら。あなたも、わたくしを想ってくれている?
もうすぐ、クラークが王都から帰ってくる。テレジアの懐妊を喜んでいるらしいが、両親を脅して無理矢理クリスとの婚約を結び、子が出来ないからと息子の代わりに孕まそうとしてくる舅など。会いたくもない。
頭を振り、負の感情を追い払うと腹を撫でる。
お前は元気に産まれて来るだけでいいわ。母様が、守るからね。
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