【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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Clive and Elliot you treasures from Theresa・Argan

待望

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 テレジア・オルドリッジの未来は、産まれて間もなく決められた。クラーク・アーガンの手によって。

 シーヴァス王国で【王国の盾】と言えば、アーガン伯爵家のことを指す。かの家門は辺境伯家のない、この王国では侯爵家と同等の力を持ち、王家や貴族家とは常に距離を保ち中立たれと言われていた。その立ち位置は貴族社会の中で他の貴族家とは異なると言われている。故に特別な権勢を誇っていた。

 そのアーガン伯爵家当主クラーク・アーガンは自身の妻は元より、息子にも金髪金瞳の伴侶を探していた。テレジアが産まれるまで十四年、まさに執念で待ち続けたクラークは産まれたばかりのテレジアにすぐさま目を付けた。

 オルドリッジ子爵家は王都に小さな屋敷を構える領地を持たない家門だった。当主は王宮で文官を務め、当主夫人は王宮で侍女を務めているような、そんな、どこにでもある普通の低位な家門だった。そのオルドリッジ子爵家に二人目の娘として産まれたのが金髪金瞳のテレジアだった。その色は今までオルドリッジ子爵家では滅多に出ることなど無かった色だった。そのせいか、どこからか聞きつけたアーガン伯爵家からある日突然、先触れが届いた。泡を食ったオルドリッジ子爵だったが、断ることなど出来はしない。訳が分からないまま迎え入れると、早々にテレジアを見たクラークはこう言った。

「どうだろう、我が息子の婚約者にならないか?」

 それは質問の形をとった脅迫だった。断りようもない申し出だったのだから。爵位が上の、しかも【王国の盾】。他の貴族家ならば両手を挙げて喜んだのかもしれないが、余りに格差があり過ぎて、素直に頷くことは出来なかった。産まれて間もない愛しい我が子。しかも件の息子は14歳で貴族学園に通っていると言う。

 答えられないオルドリッジ子爵にクラークは駄目押しとばかりに続けた。

「婚姻するまで、テレジア嬢の淑女教育に掛かる費用は勿論全てこちらが出そう。別に支度金も用意する。ああ、こちらからの申し出なのだから持参金は必要ない。」

 ここまで破格の申し出をすると言うことは、引く気がないと言うことだ。

 オルドリッジ子爵はがっくりと肩を落とすと、絞り出すような声で受け入れた。

「ついでに顔合わせも済ませておこう。明日、息子を連れてくる。」

 そう言って翌日クリスを伴って現れたクラークは眠るテレジアを見せ、クリスに言った。

「これがお前の妻だ。」

 真っ白な顔色のクリスを見たオルドリッジ子爵夫妻は揃って俯いた。この婚約を望んでいるのはクラーク・アーガンその人だけだった。
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