【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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pretty fun days from Row

契約

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 思えばあれが、転機だった。

 カーリア商会は独自の情報網を持っている為、今までプレシーズを使うことはなかった。しかし次期会頭と目されるバルクが、オリヴィエ・ワイズ子爵令嬢とその家門やバルデン商会の調査を依頼して来たことでロウの興味を惹いた。

 その時には既にバルデン商会の背後には、マールバラ帝国のニコラス・ホルソールがいると掴んでいたからだった。

 大陸一の商会と言われる、カーリア商会。その周りを嗅ぎ回りウロチョロするバルデン商会。当然ながらワイズ子爵家当主とバルデン商会会頭の三女が婚姻したことは把握していた。そこにバルクとオリヴィエの婚姻話が浮上したのだ。そんな矢先に来た依頼。

 バルクに興味を覚えたロウは敢えて報告書にニコラスのことは上げさせず、ギルド職員に扮して報告の場へと赴いた。そんなロウに対しバルクは「追加で頼みたい。バルデン商会の後ろにいる奴。見つけ出して探ってくれ。」と言ったのだ。この言葉にバルクのことを面白いと思ってしまった。

 そうしてより詳しく調べたところ、とんでもないことが分かった。ニコラス・ホルソールはバルクの義父であり、カーリア商会会頭でもあるダビデの両親を直接手にかけた人物だった。

 ダビデはニコラスが仇だと確信はしていても裏付けが取れなかったらしい。ロウたちプレシーズの働きに目をつけ、傘下に入らないかと話を持ちかけられた時は「これが大商人ダビデ・カーリアか。」と密かに驚いた。決断が早く、踏み込みも引き際も見事だった。何より今何が交渉相手にとって魅力的な提案なのか、すぐに嗅ぎ分ける。当時プレシーズは王都一の情報ギルドと名高く、それに伴い組織自体が大きくなりすぎていた。単純に転換期を迎えていたのだ。

 ロウは熟考したのち、ダビデの話を受けることにした。暗部も引き受けることを了承させるのはもちろん、最も重要な条件の一つを契約に盛り込んだ。これは会頭が代替わりしても決して破られることはない条件だった。

 それはカーリア商会の会頭が変わる場合、当代のギルドマスターが傘下のままか抜けるか、判断するというものだった。

 カーリア商会の傘下に入ることを決めたのはあくまでロウの一存だ。相手がダビデ・カーリアだからこそ話を受けた。だから会頭が変わる時は都度判断する。その責は当代のギルドマスターが負うことにした。そしてこの契約は次期会頭には知らされない。正式にカーリア商会を継ぎ、会頭となって初めて知らされるのだ。自分たちが全てをかけ働くに値するか。いわば名も無き試験であり、判断するのはプレシーズ側だと言うことをダビデに了承させ契約したのだった。
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