【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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pretty fun days from Row

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 ロウは娼婦の私生児だった。

 情夫の甘言に騙された馬鹿な女は、掟を破り、あっさりとロウを孕った。妊娠はすぐに娼館の主人が知るところとなり、女はロウを産んだ後、隔離され死ぬまで客を取らされた。

 娼婦が孕った場合、女が産まれれば美醜に関わらず娼婦に。男が産まれれば容姿によって男娼か下男に分かれる。

 ロウは下男になった。取り立てて目を惹く容姿ではなかったからだ。しかし10歳を過ぎ、早めの精通を迎えると下男ではなく別の仕事を任されることとなった。娼婦たちの練習相手である。まずはベテランの娼婦たちに抱かれ、性技を徹底的に教え込まれた。その後は逆に、まだ経験の浅い娼婦たちに、その覚えた性技を教え込んだ。その役割から早々に薬で子種は絶たれていた為、心配なことと言えば病気くらいだった。しかしそれも店は徹底して管理していた為、罹患したことは一度もなかった。

 年齢や体格に見合わず、それなりに大きく形の良い陰茎を持つロウは娼婦たちに可愛がられ人気だった。いつからか娼館の主人に「生きた張形。」と呼ばれるようになると周囲は、からかい混じりにハリーと呼ぶようになった。当時名などなかったロウに付けられたそれは、張形から取った最低の名だった。

 たくさんの娼婦たちに抱かれて抱いてと繰り返す毎日を送っていると、自然と寝物語に人の噂や秘密を聞く機会がある。ロウはそれらを記憶し、相手を見てこっそり売って裏で日銭を稼ぐようになった。昔から儲け話と損な話を嗅ぎ分けるのは上手かった。なんとなく、勘が働くのだ。そうして何年目かを迎えた頃、一人の爺と知り合った。

 そこらへんの酒場で呑んだくれているような、普通の爺に見えたその男は娼婦を買うと散々啼かせたのち、ロウを捕まえ言った。

「お前か、うちのシマ荒らしてんのは。」

 その爺こそ、先代のギルドマスターだった。

 情報を売り買いする情報ギルド、プレシーズ。その専売特許とも言える情報をかなりの確度で売り買いするロウは、いつの間にかプレシーズにとって邪魔な存在となっていた。どんな奴が割り込んだのかと思ったら12、3歳くらいの痩せ細ったガキかと爺は唸った。

 しかし、勘はいいし情報の扱いも上手い。なにより真贋の嗅ぎ分けが上手かった。ロウを気に入った爺は少しずつ気配の消し方や、身のこなしなどを教えていった。そうして二年が過ぎた頃、プレシーズに来ないかと誘ったのだった。

 ロウは即座に頷き、そのまま爺直伝の技を使って痕跡も残さず娼館から足抜けした。名をロウに変え一ギルド職員として経験を積み、最終的には後を継いでギルドマスターへと上り詰めた。

 もう、張形のハリーなどと呼ぶクソはどこにもいなかった。
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