【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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pretty fun days from Row

直感

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 依頼に来た男性は、白髪混じりで身なりが良く、立ち居振る舞いから貴族家の使用人だと言うことが伺えた。ロウは腕を組みながら隣の部屋を覗き、ふぅんと小さく声を漏らした。初めて依頼に訪れた顧客はギルド職員に相手をさせ、観察することにしている。

 さてさて。どこの、お貴族様かねぇ。

 チンケな依頼からヤバい依頼まで。何でも扱うのがロウたちの仕事だ。とは言っても最終的に受けるか断るか決めるのはギルドマスターのロウだ。面白そうだと興味が惹かれれば手紙の依頼でも受ける事がある。まぁ、そんな依頼は数えるほどしかないが。

 やがて男性が部屋から立ち去ると、ロウがいる部屋へ対応した職員が入ってきた。

「ギルマス、依頼はカーリア男爵家に関することでした。」
「商会の方じゃないのか?」
「はい。現当主の一人娘、アルマ嬢が現在どこにいるのか調べて欲しいとのことです。」
「……どこの使用人だった?」
「アーガン伯爵家です。」

 ロウが把握している限りでは、二家に繋がりはない。主要な貴族や商会の家系は出生や死亡、婚姻、離縁の度に基本情報を調べ管理している。それはプレシーズ設立当初から続いていることで、ギルドマスターがロウに変わった今もずっと変わることはなかった。カーリア男爵家と言えば大陸一を誇るカーリア商会の会頭を代々務める男爵家だ。その現当主の娘について、あのアーガン伯爵家が調べているとは。

「どうしますか?」
「受けていい。」
「分かりました。」
「ああ、吹っかけとけよ。」

 アーガン伯爵家とカーリア商会に関しては、高値で情報が取引されている。どちらも人気が高いのだ。会頭の娘の所在確認とは、きな臭い。何か引き当てる可能性が高い。

 ロウは窓に近寄ると、通りを見下ろした。たった今依頼をして来た男性が足早に去っていく。

「面白くなりそうだ。」
 ふっと笑いを漏らした。

 それがあながち間違いではなかったと知るのは、それから十年以上経っての事だった。

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