【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

my lord from Emma

別離

　テレジアがエリオットの元にぱたりと来なくなって二ヶ月ほど経ったある夜。エリオットが眠る自室の前室で休んでいたエマは、小さな音を聞き取り目覚めた。

　こんこんこん。

　小さく鳴るノックの音。慌てて起き上がり、ショールを羽織るとドアに向かって声をかけた。

「はい。」
「……エマ、私よ。」

　それはテレジアの声だった。そっとドアを開けると、俯いたままのテレジアがそこにぼうっと立っていた。

「お願い、エリオットに会わせて。」

　テレジアが明日、ベントリーを伴い王都にあるタウンハウスへ一人向かうことは知っていた。きっと別れを言いに来たのだろう。招き入れると、そのままエリオットの元へと案内した。

　そろそろとエリオットが眠るベッドに近寄ると、跪き寝顔を見つめるテレジア。なんとなく二人きりした方がいいと判断したエマはそっと前室へと戻った。薄く扉を開け、声が掛かってもすぐ分かるようにしておく。

　やがて啜り泣きと共に途切れ途切れに声が聞こえてきた。

「エ……ット、エリィ。愛してる。……てるわ。私の……い息子。きっと母様が貴方……るから。だから……様の、ク……ヴの言うことをよく聞くのよ。良い子ね……。」

　エマはそのままテレジアが出てくるまで、じっと待ち続けた。程なくしてテレジアが自室へと戻っていくのを見送ったエマはエリオットの元へと戻り、様子をみて見た。

　ぐっすり眠っているその枕元には巾着が置かれており、中には大粒のペリドットが入っていた。