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my lord from Emma
救済
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「エマ、紹介するわね。孫のエリオットよ。」
カシアの声が遠くに聞こえた。それくらい、赤子から目が離せない。小さく丸い頭にふんわり輝く銀髪。じぃっとこちらを見つめてくる金瞳。もっちりとした頬は薔薇色で、珠のように愛くるしい。
「あなたには、エリオットの乳母になって欲しいの。」
「……え?」
驚いてカシアを見ると、にっこりと微笑まれた。
「乳母を頼もうと思ってた女性がね、思ったほど乳が出ないらしくて。流石に自分の子よりこちらに寄越せとはいえないでしょう?」
「でも……私は……。」
子を亡くしてから、エマの乳は止まっている。到底乳母は務まらない。しかしカシアはそのことを知っていて提案したのだった。
「そこは気に病まないで。まずはエリオットの世話をお願い出来ないかしら?相性もあるでしょうし。」
赤子相手に乳母候補の相性など、聞いたこともない。身分が釣り合い、為人に問題がなく、よく乳が出れば良いのだから。なのに、わざわざこう言うのは乳が出る乳母が必要だと言いながら乳が出ないエマに乳母をさせる為の方便だろう。
無理がある、方便だが。
改めて、エリオットを見る。ふにゃっと口を開けると子猫のような泣き声を上げた。思わず手を伸ばし、頬を撫でる。もう、離れられそうになかった。
唾を飲み込み、カシアに問いかける。
「よろしいのですか?」
「もちろんよ。」
大きく頷くカシアに深々と頭を下げる。
「宜しくお願い致します、奥様。」
カシアの声が遠くに聞こえた。それくらい、赤子から目が離せない。小さく丸い頭にふんわり輝く銀髪。じぃっとこちらを見つめてくる金瞳。もっちりとした頬は薔薇色で、珠のように愛くるしい。
「あなたには、エリオットの乳母になって欲しいの。」
「……え?」
驚いてカシアを見ると、にっこりと微笑まれた。
「乳母を頼もうと思ってた女性がね、思ったほど乳が出ないらしくて。流石に自分の子よりこちらに寄越せとはいえないでしょう?」
「でも……私は……。」
子を亡くしてから、エマの乳は止まっている。到底乳母は務まらない。しかしカシアはそのことを知っていて提案したのだった。
「そこは気に病まないで。まずはエリオットの世話をお願い出来ないかしら?相性もあるでしょうし。」
赤子相手に乳母候補の相性など、聞いたこともない。身分が釣り合い、為人に問題がなく、よく乳が出れば良いのだから。なのに、わざわざこう言うのは乳が出る乳母が必要だと言いながら乳が出ないエマに乳母をさせる為の方便だろう。
無理がある、方便だが。
改めて、エリオットを見る。ふにゃっと口を開けると子猫のような泣き声を上げた。思わず手を伸ばし、頬を撫でる。もう、離れられそうになかった。
唾を飲み込み、カシアに問いかける。
「よろしいのですか?」
「もちろんよ。」
大きく頷くカシアに深々と頭を下げる。
「宜しくお願い致します、奥様。」
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