【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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my lord from Emma

保護

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 女性は、カシア・アーガンだと名乗った。ここ、アーガン伯爵領の領主アーガン伯爵家の当主夫人だと言う。エマは慌てて起きあがろうとした。

「あなた、ずっと意識がなかったのよ。まだ起き上がることは許さないわ。」
 ぴしゃりと言われ、ベッドへと戻される。

「あなたがやるべきことは、しっかり休んで、しっかり食べて。元気になることよ。分かったわね?」

 言い方こそきついが、気遣ってくれているのは伝わった。暖かいシーツ。暖かい部屋。何もかもが沁みてきて、涙が溢れる。こんなに良くしてもらって良いわけがない。

「何があってあんなところで死のうとしたのか、後できちんと話してもらいますからね。」

 普通は触れないようにするものではないだろうか?しかも。

「……別に、死のうとしたわけでは。」
「嘘をおっしゃい!あのまま死んでも良いと思っていたでしょう?冗談ではないわ、そんなこと許しませんからね。」

 なぜ、許しがいるのだろう。関係ないはずなのに。

「あなたが死のうとするのは、あなたの勝手。死ぬのを許さないのは、わたくしの勝手。そういうことよ。」
「あ、あの。」
「とにかく、元気になるまで安静にしてなさい。いいわね?」

 言いたいことは言ったとカシアは立ち上がると、部屋を出ていった。侍女は廊下で待機していたらしく、部屋に一人残されたエマは呆気に取られた。どうやら知っている高位貴族の女性たちと、同じに考えてはいけないらしい。

 そっと息を吐くと、シーツにもそもそと包まった。カシアにはああ言ったが、あのまま死ねるものなら死にたかった。ぽろりぽろりと涙が溢れる。やがて泣き疲れたエマは、そのまま、次第に瞳を閉じた。
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