【完結】R-15 私はお兄様を愛している《Spin-Off》〜あのときは、これからも〜

遥瀬 ひな

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my lord from Emma

慈雨

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 しとしとと降り頻る雨の中、力なくベンチに座り込む。傘もなく、服はじっとりと濡れそぼり、重い。重いのは服だけではなく、身体自体も重かった。もう一歩だって歩く気力は残っていなかった。

 エマはがっくりと項垂れた。どんどん体温は奪われ、歯の根が噛み合わなくなってくる。がたがたと全身に震えがきた。

 ああ。このまま、あの子の元に逝けるのかしら。

「……!ちょっとあなた、しっかりなさい!」
「奥様!いけません!濡れてしまいます!」
「そんな場合ではないでしょう?!ああ、ベントリー!早く!早く医師を呼びなさい!」

 あたたかい温もりと優しい香り。しっかりと肩を掴む華奢な手。エマの顔を覗き込むその女性の声は聞こえても、意識が朦朧としていて顔は分からない。ただ、きらきらと視界に金色が眩く映り込む。

「こんなに凍えて!このままじゃ死んでしまうわ!」
 力なく頭を振り、ほうっておいて欲しいと訴える。途端に両頬を手のひらで包まれた。

「死にたいのなら、わたくしのいないところで死になさい!」
 
 なんて無茶苦茶な。

 そこでエマの意識は途切れ、次に目覚めた時、視界に飛び込んできたのは美しい金髪金瞳を持つ女性だった。
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