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飲み屋の申告

1 飲み屋の乾杯

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 この街の飲み屋街は、活気に溢れている。私の生まれた故郷では、飲み屋と言えば赤い提灯がマークであった。しかし、ここでは様々な色が溢れている。草食用であれば緑の看板、肉食用であれば茶色の看板、といった具合である。
 
先生の好きなお店は、、あった、あった。真っ白な看板に太い字で「呑み頃食べ頃」と書かれた店の前に立つ。
「飲む」ではなく、「呑む」を使う店は拘りがあるように思うので、近所で見かけたなら一度は入ってみる価値あり。ソースは俺。

中に入ると、元気な声で「いらっしゃーい」と返ってくる。

「あ、猫マムシさん!先生でしたら奥のカウンターですよ!」
綺麗な真っ白い肌に、くりくりした目の女性が声をかけてきた。
短いズボンから伸びる足は、陶器のように綺麗である。
いかんいかん。脚に話しかけてしまうところだ。
「ありがとう。水兎みずうさぎさん、今日も元気で可愛いね」

「あははは。ありがとうございます!」
うーん、元気が良いとそれだけで輝いて見える。近頃は挨拶もろくにできないものが非常に多い。寡黙なのがカッコいいともてはやされるのか、ただ礼儀を知らないのか。全くもって遺憾である。
かくいう私も声は小さく、気も小さい。自分で世を恨んで、悲しくなった。反省。

「猫マムシくん。こちらですよ。」
鷲ノ金先生の声で、ハッと顔を上げる。
「お待たせしました。街灯を見ていたらつい、ゆっくり歩いてしまいまして。遅くなりました。隣失礼します」

「君は街灯が好きだね。さ、麦酒でいいかね?」
「はい。ありがとうございます」

乾杯。ゴツン。木のグラスがぶつかり鈍い音を出す。グビグビッグビ

「仕事終わりのお酒は美味しいですねー。何か頼まれてます?無ければ適当に頼んでしまいますね」

「先生、今日は港が大漁だったようで、良いのが入ってますよ」
カウンターの中に立つ店主、猪の木が話しかけてきた。背はそれ程だが、とても太い腕をした店主である。

「では、いくつか造りにして貰えるかね」
「はいよ!」

木の芽を軽く燻ったお通しを食べながら、今日の鎧の方への話となった。
「飛び込みのお客様でしたが、上手に対応してくれましたね。助かりましたよ。」
鷲ノ金が褒めてくれる。
「いえいえ、そんなそんな。先生が後ろで控えてくれてるお陰で、安心して取り組めたからです」

「そうかね?やっぱり私の影響が大きいんだね~」
得意気に鷲ノ金が答える。
よいしょという言葉を知らんのかね。もう少し、お互いに褒め合う言葉のキャッチボールをしてからの、締めであろう。

「お待ち。海鮮造り盛り合わせだよ」
ゴトン。大皿に、綺麗に切られた大量の魚が乗ったものが置かれた。
あの逞しい腕から、このような繊細な切口の造りが出てくる。
「見た目で判断してはいけません」と小さい頃に習ったものだ。しかし、あまりにギャップがあると、それはむしろ必要な感覚である。明らかに怪しいにもかかわらず、上の言葉を信じたが為に、犯罪に巻き込まれるなどあってはならない。


うーん、とても美味しい。何故お昼に食べる刺身より、夜に食べる刺身の方が美味しく感じるのだろうか。更に言えば、金曜晩の刺身が1番美味い。逆に日曜晩の刺身は、ちと寂しい。……うん。仕事の有無だな。

そんなことを考えながら、先生と話していると次の料理が運ばれてきた。これまた上等な部位の焼肉である。

先生のお酒も進んで、持論が展開される。

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