ショートエッセイ 山と花を胸に

第５０回 ニッコウキスゲ 良い日、悪い日、希望を胸に

　自宅のニッコウキスゲが開花した。
大学時代は登山をよくしていたが、尾瀬を始めとした、登山のパンフレットに、この花がよく登場していたので、当時から、山で出逢える花として印象があった。
育ててみたいと庭に植え込むと、平地でも良く育ち、毎年株を大きくしている。
ニッコウキスゲは、蕾を数個付け、淡いオレンジ色の、ユリの様な花を咲かすと、その花は１日で枯れ、また次の蕾を膨らませ、花が咲く。
１日で枯れる。
その様子は、日々の生活の中、良い日があった時、
この良い１日が、終わってしまうのか。
と言う切なさに、重なるものがある。
しかし、ニッコウキスゲの様に、また次の花が咲く。
と想えば、この切なさを、乗り越えられる気持ちになれる。
良い日、悪い日。繰り返しで人は生きて行ける。
ニッコウキスゲの、淡いオレンジ色の大群落は、その日々の人間社会を想い、美しい風景である。
そして。
腐らずに、日々希望を胸に、前向きに生きる人間社会こそ、破壊に目覚めない人間社会の景色として、更に美しく感じるものがある。
ニッコウキスゲの、心の大群落。
世界の全ての地域で、咲き誇る事を願う。