ショートエッセイ 山と花を胸に

第３７回 ユキノシタの妖精

　ユキノシタは6月に花を付ける。
大人の爪程の大きさで、人の形の大文字の花を、えんすい状に多く付ける。
今年も家の庭にユキノシタが開花した。
他の山野草の葉の間から咲き誇る姿は、
妖精が葉の上に座って、こちらに手を振る様にも見える。
そして、心が晴れ晴れしない梅雨に、手を差し伸べる様な、優しさを感じる。
また、行き詰まる人生の中、偶然出会った親しい人と、会話しただけで、気持ちがスッとする様な。
誰かにアドバイスを受け、再び立ち上がる事が出来る様な。
そんな優しさにも感じる。
最近、自殺の報道が多く報じられている。
世界は協力社会。
ユキノシタの妖精の様な、心に手を差し伸べる人間は、必ず存在する。
そして皆が、
ユキノシタの妖精を胸にしたい。
人は、一人では生きて行けないのだから。