15 / 33
Act.7.5 イジワルと好き
しおりを挟む
ルーチェのバカ、バカ、バカ!
どうしてテオの薬を作ってあげるの!
テオはルーチェのこと好きだって言った。僕だってルーチェのことが好きだもん。僕の方が、いっぱい好きだもん!
兄様と姉様はいっぱい抱っこするのに、ルーチェは僕と抱っこしてくれない。この前まではいっぱいしたのに……僕のこと、嫌いなんだ。
姉様に似てるって思ってたけど、ルーチェはイジワルばっかりで姉様とは全然違う。
もう知らない!僕もルーチェのこと嫌いになるんだから!
夢中で走ってたら、ルーチェと一度来たことのある図書館に着いた。
中には……入っちゃダメなんだっけ。
僕、ネコだから。
――「ジュストはネコだから」
ルーチェもそう言ってた。
そうだよ……僕、ネコだからわからないよ。
どうして抱っこはダメなの?
どうして一緒に寝ちゃダメなの?
僕が人間だったら、ルーチェと一緒に……いろんなことができるの?
ドアの前で人が入ったり出たりするのを見ているうちに悲しくなった。
僕、人間に戻りたいよ。
外は暗くなって、ちょっとだけ寒くなって、それからまた明るくなって――…
僕、どこに行ったらいいんだろう。また、ひとりぼっちになるのかな?
「あれ、ジュスト?今日はいい子に待ってるんだね」
いろんなことを考えてたら、ユベール兄様の声が上から聴こえた。顔を上げたら、兄様はクスって笑って僕を抱き上げてくれた。また一緒にベンチに座る。
『今日は、ルーチェはいないよ』
「へぇ……こんな短期間でできるようになったんだ?さすが王家の血を引いてるだけあるね」
ユベール兄様はちょっと驚いてたけど、大変だったんだ。海でいっぱい練習したんだよ。ビリビリ痛かったし。
『ねぇ、兄様。僕、兄様と姉様のところに行っ――』
「ダメ」
む……ちょっとくらい考えてくれてもいいのに!
「サラと僕の邪魔しないで。ただでさえ最近あんまりサラに触れないのに――…」
サラっていうのは姉様の名前。ユベール兄様はなんだか眉をぎゅってしてブツブツ言ってる。ユベール兄様も姉様に抱っこしてもらえなかったのかな?
『でも、ルーチェは僕のこと嫌いになったんだ。一緒に寝てくれないし、抱っこもしてくれない。イジワルなんだよ?』
「ふーん。あの子、恋愛経験なさそうだもんねぇ。ま、それは君もだけど」
レンアイケイケン?
「ふふっ、そのうち君にもわかるよ」
そう言って、ユベール兄様は立ち上がった。もう行っちゃうのかな……
「1つだけ、いいこと教えてあげるよ」
『なに?』
ユベール兄様はニッコリ笑って首を傾げた。
「イジワルするのは好きだからなんだよね。裏返しってやつかな。ま、君の言う“イジワル”がイジワルにカウントされるかは微妙だけどさ。じゃーね!」
片目を瞑ってからくるりと向きを変えて、ユベール兄様は帰っていっちゃった。
――「イジワルするのは好きだから――…」
ホント?
ねぇ、ルーチェ。
僕のこと、好き――?
どうしてテオの薬を作ってあげるの!
テオはルーチェのこと好きだって言った。僕だってルーチェのことが好きだもん。僕の方が、いっぱい好きだもん!
兄様と姉様はいっぱい抱っこするのに、ルーチェは僕と抱っこしてくれない。この前まではいっぱいしたのに……僕のこと、嫌いなんだ。
姉様に似てるって思ってたけど、ルーチェはイジワルばっかりで姉様とは全然違う。
もう知らない!僕もルーチェのこと嫌いになるんだから!
夢中で走ってたら、ルーチェと一度来たことのある図書館に着いた。
中には……入っちゃダメなんだっけ。
僕、ネコだから。
――「ジュストはネコだから」
ルーチェもそう言ってた。
そうだよ……僕、ネコだからわからないよ。
どうして抱っこはダメなの?
どうして一緒に寝ちゃダメなの?
僕が人間だったら、ルーチェと一緒に……いろんなことができるの?
ドアの前で人が入ったり出たりするのを見ているうちに悲しくなった。
僕、人間に戻りたいよ。
外は暗くなって、ちょっとだけ寒くなって、それからまた明るくなって――…
僕、どこに行ったらいいんだろう。また、ひとりぼっちになるのかな?
「あれ、ジュスト?今日はいい子に待ってるんだね」
いろんなことを考えてたら、ユベール兄様の声が上から聴こえた。顔を上げたら、兄様はクスって笑って僕を抱き上げてくれた。また一緒にベンチに座る。
『今日は、ルーチェはいないよ』
「へぇ……こんな短期間でできるようになったんだ?さすが王家の血を引いてるだけあるね」
ユベール兄様はちょっと驚いてたけど、大変だったんだ。海でいっぱい練習したんだよ。ビリビリ痛かったし。
『ねぇ、兄様。僕、兄様と姉様のところに行っ――』
「ダメ」
む……ちょっとくらい考えてくれてもいいのに!
「サラと僕の邪魔しないで。ただでさえ最近あんまりサラに触れないのに――…」
サラっていうのは姉様の名前。ユベール兄様はなんだか眉をぎゅってしてブツブツ言ってる。ユベール兄様も姉様に抱っこしてもらえなかったのかな?
『でも、ルーチェは僕のこと嫌いになったんだ。一緒に寝てくれないし、抱っこもしてくれない。イジワルなんだよ?』
「ふーん。あの子、恋愛経験なさそうだもんねぇ。ま、それは君もだけど」
レンアイケイケン?
「ふふっ、そのうち君にもわかるよ」
そう言って、ユベール兄様は立ち上がった。もう行っちゃうのかな……
「1つだけ、いいこと教えてあげるよ」
『なに?』
ユベール兄様はニッコリ笑って首を傾げた。
「イジワルするのは好きだからなんだよね。裏返しってやつかな。ま、君の言う“イジワル”がイジワルにカウントされるかは微妙だけどさ。じゃーね!」
片目を瞑ってからくるりと向きを変えて、ユベール兄様は帰っていっちゃった。
――「イジワルするのは好きだから――…」
ホント?
ねぇ、ルーチェ。
僕のこと、好き――?
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる