燃えるような愛を

皐月もも

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Christmas Special (2)

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 フローラが自分のものを――それだけで、ヴォルフには耐え難いほどの快感が湧き上がってくる。
 頬を上気させ、苦しそうに眉を寄せながらも、ヴォルフの弱いところを懸命に舌で辿るフローラ。そんな彼女を見つめていれば、限界はすぐにやってくる。
 それをなんとかやり過ごしながら、ヴォルフはソファに座った自分の前に跪くフローラの髪を撫でた。
「……っ、く……はッ」
 チュッと少し強く吸われ、ヴォルフは思わず声を出し。
「フ、ローラ……っ、もう、いい」
「……ん、はぁっ」
 フローラにさせるのは初めてではないが、今日はゆっくり重なりたいという気持ちに反して身体が先走っているようだ。
 フローラの腕を引いてソファに座らせ、もう一度彼女の泉に指を差し込む。溢れる蜜は、乾くことなくヴォルフを待ち望んでいてくれていた。
 フローラも我慢できないらしく、ゆらゆらと腰が揺れている。この艶かしい表情を見ていたら、それこそ持たないかもしれない。
「……手、つけ」
「え……ぁ、やっ」
 フローラの身体を反転させ、背もたれに手を掛けさせると、ヴォルフは彼女の背中にピタリと身体を寄り添わせた。
 フローラの肘にはブラウスが引っかかったままで、ヴォルフの腹に布が擦れる。ヴォルフ自身もシャツは愛撫の途中で脱ぎ捨てたが、ズボンは前を寛げて少し下げただけだ。
 すべて脱がないせいか――そう、思い至ったものの、今更脱ぐ時間はもどかしいだけだ。
 ヴォルフはこの体勢を恥ずかしがって身を捩るフローラの腰をグッと引き寄せ、一気に貫いた。
「あぁ――ッ」
 一際高く声を上げたフローラは、身体を繋げただけで軽く達したようで、身体を震わせている。
 涙目でヴォルフを振り返るフローラに、ヴォルフの熱は更に膨れ上がる。フローラはまたピクッと震えて彼を締め付けた。
「そんな……顔、するな。ゆっくり……したい、んだ……から」
「は、ぁっ、待って……んんっ」
 フローラの中をゆっくり堪能しながら、ヴォルフは彼女の肌を弄った。しっとりと汗ばんだ肌に右手を滑らせ、左手は声を気にするフローラの口の中へ……先ほどまでヴォルフを受け入れていた場所は熱く、フローラの息遣いから彼女の反応が伝わってくる。
 ヴォルフが腰を揺らす動きに合わせてソファが沈み、フローラの吐息にも一層熱がこもった。
 フローラはソファの背もたれをきつく掴み、送り込まれる刺激に耐えているようだ。
「フローラ……どこが、いい……?」
「っ、ん……」
 僅かな反応も逃さないように、ヴォルフはじれったいほどにフローラの蜜壺を探っていく。フローラは微かに首を横に振ってヴォルフの指をキュッと噛んだ。
 本当は知っている。どこを攻めれば、フローラがどういう反応を返すのか。すべてを知っているけれど、こうしてフローラに問いかけると彼女が可愛く身体を震わせるから、やめられない。
「ここ、か……?それとも……」
「――ッ」
 右手をスルリと2人が繋がる場所へと滑らせると、フローラが仰け反って身体が強張った。ヴォルフはフローラの口から指を引き抜き、後ろから彼女の柔らかな膨らみに触れた。人差し指の先で硬くなった頂を突き、弾力を楽しむが如く揉みこむ。
「あっ、や……っ、ヴォルフ様」
 フローラは強すぎる快感にガクガクとソファについた膝を震わせ、背もたれにしがみついて顔をソファに押し付けた。
 それを追いかけるみたいにヴォルフはフローラに折り重なり、耳元に唇を寄せる。
「こ、のまま……ッ」
 ヴォルフは腰を引き、また押し進めることを繰り返し、だんだんと激しく動き始める。ソファが揺れ、フローラの声も漏れ聞こえてくる頻度があがっていく。
 柔らかく、そして熱く絡みついてくるフローラの泉の中を何度も行き来すると、ヴォルフ自身も呼吸が速くなり、汗が顎を伝ってフローラの肩に落ちた。
 2人の周りは妖艶な熱気といやらしく響く水音に包まれて、時折零れるお互いの苦しそうな声にまた熱がこもって――だが、律動を速めたくてフローラの腰を掴んだとき、彼女はヴォルフの手を掴んできた。
「や……っ、ヴォルフ様、の……顔が、見えな……っ」
 フローラが震えながらヴォルフを振り返り、潤んだ瞳を向けてくる。ヴォルフは、心臓が音を立てて、そのまま果てそうになるのをグッと奥歯を噛みしめて堪えた。何度か深呼吸をしてその波を逃がそうと試みる。
 それからフローラのこめかみにキスを落とし、一度彼女の中から抜け出して、彼女の身体をソファに横たえた。
「ぁっ、あっ」
 もう一度深く自身を埋め込むと、ヴォルフは激しく動き出した。もう、ゆっくりなどと気遣う余裕がない。顔が見たいなんて可愛いことを言われたら、ここまで散々高め合った熱がまた更に温度を上げて、フローラにぶつけることでしか伝えられなくなる。
「フローラ」
「ヴォルフ、様……」
 フローラはヴォルフの首にしがみついて何度もヴォルフの名を口にする。それは、彼女の果てが近いということだ。
 キスをして、肌に触れ、身体の奥を探って……ヴォルフの動きに合わせてソファが揺れる。ヴォルフがフローラをきつく抱きしめて奥を穿った瞬間――
「ん、あぁ――ッ」
「っ、く……」
 2人は同時に果てた。
 ヴォルフは荒い呼吸をフローラの耳元で繰り返し、フローラの身体を抱きしめたまま脈打つ自身が落ち着くのを待つ。もっと奥へと注ぎ込みたくて腰を震わせたヴォルフに共鳴するように、フローラも震える息を吐き出した。
 少し落ち着いたところでフローラに優しくキスを落としていき、汗ばんで肌に張り付いた髪を払う。フローラの柔らかな表情を見て、ヴォルフも温かく満たされる。
「愛している……フローラ」
「はい。私も、です」
 そうやって微笑み合って……ユリアが目覚めるまで2人は寄り添っていた。

***

 翌日。
 昨日に引き続き雪が降り続く城下町の広場で、ヴォルフたちは式典に参加していた。
 バルトルトが国民へ向けて挨拶をし、その後レーネと共にマーケットを視察するのが恒例の行事だ。
 例年と違うのは、ヴォルフの隣にフローラとユリアがいること。そして、ユリアが空から舞い落ちる雪に興奮して少々騒がしいということだろう。
 フローラとお揃いの赤い薔薇のあしらわれたドレス姿で雪を掴もうと手を伸ばしているユリア。今日はドレスで正装をしていて魔法での防寒をしているため、少し身軽だ。目を離したらすぐに自分から離れていってしまいそうなユリアを、フローラが一生懸命落ち着かせようとしているがあまり効果はない。
 だが、そんなユリアの騒がしささえ、バルトルトをはじめ国民たちは優しく穏やかな表情で見守っている。どうも第一子というのは大目に見てもらえる部分があるように思う。
 クスクスと笑いながらユリアの様子を見つめるソフィーに視線をやって、ヴォルフはため息をついた。そして、手を伸ばしてユリアを抱きあげる。
「ユリア、今は炎属性の力を与えてくれた神様に感謝する時間だ。雪はまた後でにしろ」
「うー?」
 ヴォルフの言葉をどれくらい理解したのか、ユリアは首を傾げてにっこりと笑う。
「ほら、目を瞑れ」
 ヴォルフが祈りのために目を閉じて手を胸の前で組むフローラを見せ、ユリアの手を胸の前に持ってくる。すると、ユリアは素直にフローラの真似をして、手を握りギュッと目を瞑った。
 それを確認してからヴォルフも祈り、無事に炎の祭典としての式典が終わる。今年は昼食の休憩後、ユリアの誕生日パーティを城で行うことになっている。
 壇上の片づけの邪魔にならないよう、ユリアを抱いたヴォルフとフローラは壇を降りて歩き出した。城へと戻るため、移動魔法を使えるスペースへ移動する。
「あ! まま!」
 しかし、その途中でユリアが大きな声を出し、ヴォルフの腕から逃れようと身体を捩り始めた。
「おい、ユリア。もう帰るんだ。お前の誕生日パーティだろう」
「や! まま、まま!」
 ユリアが指さす方では、子供たちが雪の玉を転がしていて、その近くには2体の雪だるまが作られていた。
 また雪だるまか……と、ため息をついたヴォルフの横で、フローラも苦笑いだ。
「まだ時間はあるし、少し遊んだら? ほら、ユリア。おいで」
「ソフィー姉」
 ヴォルフの腕から抜け出そうとしているユリアを抱きあげて降ろしてやったソフィーは、子供たちが遊んでいる方へ移動して、ヴォルフとフローラを手招きしてくる。
「楽しそうですね。雪だるまが作れることがわかったら、ユリアも中庭で遊べます」
 フローラが嬉しそうにユリアの方へ歩いていき、ヴォルフは仕方なくそれに続く。フローラはユリアの隣にしゃがみこむと、雪の玉を作って周りの雪の上を転がし始めた。
「こうしたら、雪だるまが大きくなるの」
 母親の行動を興味津々と言った様子で見ていたユリア。雪玉が大きくなっていくにつれて瞳をキラキラさせ、2つめの雪玉を転がしているときには、フローラと一緒に雪玉を転がそうと必死になっていた。
 それから2つの玉を重ねて、小石や枝で飾り付けをするとユリアは雪だるまに抱きついて喜ぶ。
「きゃー! まま!」
 大喜びのユリアはパタパタと雪の上を歩いて、また雪を掴んだ。だが、雪を叩く仕草しかできないユリアは玉を作れず、「うぅ」と唸り声を出した後、ヴォルフを見上げて両手を伸ばしてくる。
「ぱぱ」
「ほら……」
 ヴォルフは雪の玉を作ってやり、ユリアの前に置いた。すると、ユリアはころころと先ほどと同じように玉を転がした。だが、自分の目の前でのみ転がす雪玉はなかなか大きくならない。
 ヴォルフは思わずクッと笑みを漏らし、ユリアの腰を抱えて雪玉を前へと転がしてやった。同時にユリアの身体も支えながら前へ進めてやり、ユリアが周りの子供たちと同じように雪玉を転がせるようにしてやる。
「こうやって転がすんだ」
「ままー」
 相変わらずテンションの高いユリアはよたよたと雪玉を追いかけていく。
 そんなことを続けて、ようやくユリアの雪だるまが完成すると、ユリアは「まま」と嬉しそうに雪だるまの前に座った。
「ユリア、もう帰らないとお前のパーティに間に合わない」
 ユリアは帰るらしいということを理解したのか立ち上がったものの、雪だるまの隣を離れようとしない。雪だるまに触れたままじっとヴォルフを見つめてくる。
「これは、持って帰れない。城でもう一度作ればいいだろう」
 昨日のユリアを思い出して内心ひやひやしながら諭してみると、彼女は意外にもすんなりヴォルフの言葉を理解したようだった。
 大人しくフローラに抱っこされたユリアにホッと一息ついて、ヴォルフたちは城へと戻った――――のだが。
 ユリアは城に着くなり中庭に行くと駄々を捏ね、仕方なく中庭へと出れば、雪だるまを作ることに夢中になってしまった。
 昼食も食べないまま何度も何度もヴォルフに雪玉をせがみ、パーティの行われる広間へ行くことを嫌がった。どうしてもユリアを説得できなかったヴォルフやバルトルトは、結局雪の降る中庭で誕生日パーティを行うことにして、準備をさせた。
 中庭を暖かく保つための魔法を施すのは大変な作業なのだが、あまりユリアの機嫌を損ねるとフローラの負担にもなる。
 先ほどもユリアに食事をさせるために、フローラは苦労していた。ちょっとわがままな小さなシルエットを追いつつ、ヴォルフは執事たちに指示を出す。
 そうしてセッティングが終わった中庭には、ユリアのためにプレゼントを持ってきた貴族たちでいっぱいになり、フローラもヴォルフも対応に追われてしまう。
「ユリア様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます。ユリア、ほら。ありがとう、は?」
 フローラは丁寧にそれぞれ挨拶に来てくれる人々へとお礼を言うが、ユリアはお祝いの言葉などそっちのけで雪遊びに夢中だ。
「まま?」
 それどころか、やってくる人ひとりずつに雪玉をねだって作らせるため、パーティが終わる頃には中庭が雪だるま尽くめになってしまった。
 そんなことをしているうちに、ユリアは昨日同様遊び疲れて眠ってしまい、ヴォルフとフローラはようやく終わった雪遊びに長い息を吐き出す。
 部屋に戻ってユリアを寝かせ、ユリアへのプレゼント――警備兵たちが安全確認を終えて運んでくれた――を片付けながら、だんだんとヴォルフもフローラも笑いがこみ上げてきた。
「こんなに雪だるまがあっても……」
 フローラが眉を下げてテーブルに小さな雪だるまの置物を置く。テーブルにはすでにたくさんの雪だるまが並び、ソファにもぬいぐるみや雪だるまが描かれている衣類などが山積みだ。
「昨日のことを、聞きつけたんだろうな」
 一際大きな雪だるまのぬいぐるみをソファに座らせて、ヴォルフが言うと、フローラはまたクスクスと笑う。
「溶けない雪だるまで良かったです」
「そうだな」
 心底安心した様子のフローラに、ヴォルフもフッと笑みを零した。それから彼女を引き寄せて、唇を合わせる。
「それに……今日も、ゆっくりできそうだが?」
「――っ」
 真っ赤になったフローラのこめかみにキスをして、ヴォルフは彼女を抱き上げた。
 そっとベッドに降ろして、ユリアの方を気にするフローラの頬を両手で包み、キスをする。深く、熱く、フローラが呼吸を乱すまで続けられたそれは、ヴォルフの身体も熱くする。
「……ユリアの世話は、大変か?」
 フローラの目元を親指でなぞって問えば、彼女は柔らかく微笑んで首を振った。少し疲れているのか、彼女の目は少し赤い。
「大変でも、嫌な気持ちになったことはないですよ。ユリアは、わがままも言いますけど、私たちの言うことはちゃんと理解しているみたいですし……ヴォルフ様に似ているところも、可愛いなって」
「俺、に……?」
 ユリアは外見や柔らかい雰囲気などフローラに似ている部分が多いと思っていた。
 ヴォルフの驚いた様子に目を細めて笑うフローラの表情は、やはりユリアがにっこりと笑うときと似ている。
「まだ目を離すことはできないですけど、私も1年前に比べたら少し余裕ができました。ユリアが元気に育ってくれて、嬉しい半面、自分でやりたがることが増えていくと……寂しい気もします」
 ユリアの成長は早い方だと思う。自分が何をしたいのか――少しばかり荒々しい方法ではあるが――意思表示もするようになってきた。これからもっといろいろな言葉を覚えて、少しずつフローラやヴォルフの手を離れていくのだろう。
「あとは……年の近い子と遊ぶ機会を作ってあげたいなって思っているんです。例えば、兄弟がいたら、遊び相手になってくれるだろうなって。ヴォルフ様……2人目は、男の子がいいですね」
 そのフローラの言葉に、ヴォルフはまた驚く。フローラには、「世話が大変か」と彼が聞いた真意がバレてしまっているようだ。
「今日は、炎の祭典だから……神様がプレゼントをくれるかもしれません。私が何を祈ったか……知っていますか?」
 そんな嬉しいことを言われて、ヴォルフはギュッとフローラを抱き寄せて耳元で囁く。
「雪だるまが、増えるかもしれないぞ?」
「ふふ……それも、楽しいですよ」
 そう言って、フローラはヴォルフにキスをしてくれた。ヴォルフはそのままキスを深め、フローラの部屋着の中へと手をすべり込ませていく。
「今日はユリアの誕生日だが……お前にも、感謝しなくちゃな」
「ヴォルフ様……」
「ユリアを、産んでくれて……ありがとう」
 そうして、ゆっくりと特別な日の夜は更けていった――…

***

 昨日までの雪が嘘のように晴れて暖かい日差しが降り注いだ翌日。
 フラメ城の中庭では、午後になって溶けだした雪だるまたちにユリアが大泣きして、フローラとヴォルフを困らせた。
 雪が降らなくなったことをどうにかしろとでも言わんばかりに泣きじゃくるユリアを見て、やっぱりヴォルフに似ていると思ったのは、フローラだけではないだろう。
 それは、ヴォルフ以外の城の者たちが共有する秘密なのだ――
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