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第三話 灰色の彼
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スッとした鼻筋、月のような黄金の瞳。記憶に深く残る美形。
古城門……!
一瞬にして、色んな感情が込み上がってくる。出会えた感動、前世に自身の命すら構わず救おうとしてくれたことへの感謝。けれどそれら全ては彼の暴風によってかき消される。
アデルバートと繋ぐ手を振り払うように、彼は抱きとめた体を自身へと引っ張り、僕の腕を掴んだままアデルバートから隠すように前に出る。
「おい、てめぇ! なに横取りしてんだよ!」
古城門、……いやロイドは鋭い目つきを更に鋭くさせ、アデルバートに怒りを露わにする。対して怒声を浴びせられている彼はどこ吹く風といった様子だ。
「横取り? なんのことだ?」
「ふざんけんな。寮生は寮長が決める決まりだろ。コイツは俺が取った。決まった以上、手を出すのはご法度だろうが」
「何を言っている? 彼は正真正銘アーサー・レークス寮の寮生だ。俺は何も横取ってなどいない」
「いけしゃあしゃあとホラ吹きやがって。おい、書面で通達きてんだろ。見せろ」
憤りはそのままに、ロイドが僕に迫ってくる。
「いや、その……ぼ、僕もらってないんですけど」
ロイドがアデルバートを睨みつけ、隠しもせず舌打ちをする。思わずビクリと心臓が怯える。
アデルバートはというと、ロイドの睨みなど気にする様子もなく、余裕を含んだ態度で懐から封書を取り出す。
「通達はある。どうやらこちらに不手際があったようで彼に届いていなかったらしい。今朝返送されてきたため、俺が預かっていた」
封書から一枚の紙を取り出し、ロイドに見せつける。
「分かったろ。これは俺のものだ。駄犬はさっさと失せろ」
アデルバートがにんまりと優越に浸る笑顔を見せ、シッシッと追い払うような口調で言う。ロイドのこめかみにピキリと青筋が立った。
「汚ねぇ真似しやがって! 俺に知らせず式の日にちをズラしたのもお前だな!」
「それはお前の自己管理不足だろう。公に告知しているのにも関わらず、いつも学校を抜け出してぶらついているからそうなるんだ」
「あ゛あ゛? こちとら正式な手順踏んでやってんだぞ!」
「こちらも文書としてその青年がアーサー・レークス寮であると残っているのだが」
二人の間に火花が散る。今にも爆発してしまいそうだ。上級生、しかも寮長の言い争いに周囲の顔が青くなる。
寮長は出身も、成績も申し分ないエリート。学長よりも権限を持っており、喩えるなら王様のような存在だ。王様同士の喧嘩なんてひやひやして見ていられない。
古城門……!
一瞬にして、色んな感情が込み上がってくる。出会えた感動、前世に自身の命すら構わず救おうとしてくれたことへの感謝。けれどそれら全ては彼の暴風によってかき消される。
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「おい、てめぇ! なに横取りしてんだよ!」
古城門、……いやロイドは鋭い目つきを更に鋭くさせ、アデルバートに怒りを露わにする。対して怒声を浴びせられている彼はどこ吹く風といった様子だ。
「横取り? なんのことだ?」
「ふざんけんな。寮生は寮長が決める決まりだろ。コイツは俺が取った。決まった以上、手を出すのはご法度だろうが」
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「いけしゃあしゃあとホラ吹きやがって。おい、書面で通達きてんだろ。見せろ」
憤りはそのままに、ロイドが僕に迫ってくる。
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「通達はある。どうやらこちらに不手際があったようで彼に届いていなかったらしい。今朝返送されてきたため、俺が預かっていた」
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「分かったろ。これは俺のものだ。駄犬はさっさと失せろ」
アデルバートがにんまりと優越に浸る笑顔を見せ、シッシッと追い払うような口調で言う。ロイドのこめかみにピキリと青筋が立った。
「汚ねぇ真似しやがって! 俺に知らせず式の日にちをズラしたのもお前だな!」
「それはお前の自己管理不足だろう。公に告知しているのにも関わらず、いつも学校を抜け出してぶらついているからそうなるんだ」
「あ゛あ゛? こちとら正式な手順踏んでやってんだぞ!」
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二人の間に火花が散る。今にも爆発してしまいそうだ。上級生、しかも寮長の言い争いに周囲の顔が青くなる。
寮長は出身も、成績も申し分ないエリート。学長よりも権限を持っており、喩えるなら王様のような存在だ。王様同士の喧嘩なんてひやひやして見ていられない。
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