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第一話 修学旅行
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みんなにとっては最高で、僕にとっては最悪の修学旅行。クラスの一軍共のいじられキャラいわゆるおもちゃとして浅岸奏太こと僕は無理矢理女子リーダー格の吉田菜々の班に入れられた。そして僕たちは班別自由行動で何故か秋葉原のとあるコスプレ専門店に来ていた。
「浅岸これつけてみなよ」
吉田が僕の頭に有無を言わせず長い金髪のウィッグを被せる。
「はははは、全然似合ってないじゃん。てかキモ!! まーオタク君はいつもキモいけどっ」
「うわー菜々の言う通りマジキモ~~!! キャハハッウケるーー」
「やっぱブスにそんなん被せたところでブスはブスのままなんだねー」
吉田のいじめ紛いのいじりに迎合するように腰巾着の栗林朱美、八野春香がゲラゲラと笑う。
きったねー笑い声。何がそんなに面白いんだ。というかキモいって言ってるけど女もののカツラ被せたのそっちじゃんか。馬鹿が考えてることはやっぱり分からない。
そんなことを言ってやりたいが、そんな勇気もない僕はただじっと床を見つめる。
「というか、ここの店意外とオタクぽい人いないんだね。私てっきり浅岸みたいな人ばっかいるかと思ってたわ」
吉田が小馬鹿にしたように言う。確かに僕は黒髪癖っ毛で眼鏡、おまけに不細工、そして見るからにオタクオーラを放ってる。けど吉田のオタク偏見が相変わらず激しいし、些か時代遅れだ。もう今やアニメ、漫画、ゲームなんて好きな人沢山いるし、僕みたいな見るからにオタクくさい奴なんていないんだよ。吉田の馬鹿みたいな大声のせいで周りからは嫌な視線を感じる。
吉田、お前がオタク嫌いなのは知ってる。じゃあなんでここに来たし。何を期待してたってんだ。
「…………」
隙を見て吉田を普段の恨みをこめて睨みつける。彼女はというと、班から離れて一人突っ立ってる古城門響をじっと見つめていた。
古城門響。『紅血の狼』と恐れられる不良、そして学校で一二を争うイケメン君だ。癖っ毛の銀髪、狼のような鋭い目つきに、月のような黄色の瞳。顔立ちははっきりと整っていて、神秘的で人を惹きつける容姿をしていた。確かハーフで、あの綺麗な髪と目は自然の賜物らしい。だが性格は最悪。彼は毎日喧嘩をしているような不良で、街の不良たちから最も恐れられている荒くれ者なのだ。古城門は群れることが嫌いでクラスでも孤立しているが、顔がこの通りめちゃくちゃいいからちゃっかりファンはいたりする。ちなみに『紅血の狼』という名前の由来はいつも一匹狼で大勢の不良たちを蹴散らし、返り血で身体を紅く染め上げるからだそうだ。恐すぎだろ。それなのになんでこんなに女子からモテるんだろう。やっぱり顔が良ければなんでもいいのだろうか。
「オタクな浅岸のことだからもっとキモくはしゃぐかと思ったけど、これじゃつまんないな」
古城門から目を離し、吉田が退屈そうにそう呟く。
いやお前らが居なければめちゃくちゃ楽しんでたから。もっとテンション爆上げだったから!!
「キャーー、長谷川君カッコいい!!」
「それ何の服だっけ?? とにかく何着てもカッコいいなんて長谷川君流石~」
腰巾着がうるさい。そちらに視線を移せば同じ班の長谷川隼人に彼女らは夢中になっているようだった。
「ありがとう。この羽織はね、新撰組という幕末の京都で治安維持活動をしていた人たちが着ていたものだよ」
「へぇそうなんだ。長谷川君って物知りなんだね~」
「そんなことないよ。ネットで少し調べただけだから。それより栗林さんと八野さん、その髪とても似合ってるよ。かわいい」
長谷川が爽やかな笑顔を向けると、それぞれウィッグを被った二人は頬を赤く染めて、見惚れているようだった。周りにいた他の客もキャーーと黄色い歓声をあげる。
長谷川キモ。
学校で古城門響と並ぶ一二を争う二人のイケメンの内の一人、長谷川隼人。確かにモデルのように整った顔立ち、さらさらした茶髪、高身長で容姿は良い。しかし性格はクソだ。爽やかイケメンを装っているようだがちょっと観察していれば分かる。アイツは自分の容姿に酔った自分のことしか興味のないナルシスト野郎だ。女子たちは彼の何を見ているのだろうか。やっぱ顔か。
「古城門くーん、オタク君つまんない。ねぇ私と二人でここ抜け出してどっか行かない??」
女子の前では絶対しないだろうありえないほどの甘ったるい猫撫で声で吉田が古城門と腕を組んで誘う。
うわー吉田よく古城門にあんな気軽に接すること出来るよな。あっ古城門めっちゃ嫌そうな顔してる。
「近寄んな」
案の定、古城門は吉田の手を振り解き、イラついた表情で距離を取った。
吉田は古城門が好きでこうして機会があれば気を引こうと頑張ってる。班に彼がいるのは女子グループのリーダーである吉田の特権を使って、誰にも文句を言わせない状況で班に引き入れたからだ。あのナルシスト長谷川も吉田の腰巾着二人の意向で同様に引き入れた。
それにしても吉田のこと殴るかと思ったけど、そこまで性格は荒れていないらしい。というか、古城門よく修学旅行に来たよな。あの人こういうの嫌いそうだから絶対来ないかと思った。
「もう、相変わらず古城門君は冷たいなぁ。でもそんなとこもクールでカッコいいよ」
吉田が甘ったるい声音とセリフに若干引く。
僕は無理矢理被せられた金髪のウィッグを外し、いじられないよう空気と化していた。あー家帰ってゲームしたい。
「チッ」
舌打ちにビクッとする。誰がしたかと思えば、古城門だった。めちゃくちゃ睨みつけられてる。えっこわ。
僕は古城門に嫌われている。それは僕が高校入学してからずっとで、古城門は僕に会う度眉間に皺を寄せ、睨みつけ、時にはこうして苛ついたように舌打ちしてくる。正直怖い。
幾ばくか時が経ち、店を出るということで、僕は一足先に出口へ向かった。
早く修学旅行なんて終わって欲しい。行かないなんて選択肢は親を心配させるのでなかった。この四日間本当に憂鬱だ。唯一の救いはソシャゲくらいか。はぁ~~。
「浅岸!!」
突然名を呼ばれ、肩がビクッとする。呼ばれた方向に振り向けば古城門が凄まじい形相で僕に迫ってきていた。
えっなになになに。怖い怖い怖い怖い。
本能で目を瞑り咄嗟に身構える。しかし来たのは衝撃ではなく、何かに覆われる感覚だった。うっすらと目を開け確認すると、古城門が僕を何かから庇うように出口に背を向ける形で抱きしめていた。
えっ、えっっな、どういうこと!?
しかし古城門が抱きしめてきた理由はすぐ分かった。
トラックだ。
店に突っ込んでくる。
逃げる暇なんてなかった。
「浅岸これつけてみなよ」
吉田が僕の頭に有無を言わせず長い金髪のウィッグを被せる。
「はははは、全然似合ってないじゃん。てかキモ!! まーオタク君はいつもキモいけどっ」
「うわー菜々の言う通りマジキモ~~!! キャハハッウケるーー」
「やっぱブスにそんなん被せたところでブスはブスのままなんだねー」
吉田のいじめ紛いのいじりに迎合するように腰巾着の栗林朱美、八野春香がゲラゲラと笑う。
きったねー笑い声。何がそんなに面白いんだ。というかキモいって言ってるけど女もののカツラ被せたのそっちじゃんか。馬鹿が考えてることはやっぱり分からない。
そんなことを言ってやりたいが、そんな勇気もない僕はただじっと床を見つめる。
「というか、ここの店意外とオタクぽい人いないんだね。私てっきり浅岸みたいな人ばっかいるかと思ってたわ」
吉田が小馬鹿にしたように言う。確かに僕は黒髪癖っ毛で眼鏡、おまけに不細工、そして見るからにオタクオーラを放ってる。けど吉田のオタク偏見が相変わらず激しいし、些か時代遅れだ。もう今やアニメ、漫画、ゲームなんて好きな人沢山いるし、僕みたいな見るからにオタクくさい奴なんていないんだよ。吉田の馬鹿みたいな大声のせいで周りからは嫌な視線を感じる。
吉田、お前がオタク嫌いなのは知ってる。じゃあなんでここに来たし。何を期待してたってんだ。
「…………」
隙を見て吉田を普段の恨みをこめて睨みつける。彼女はというと、班から離れて一人突っ立ってる古城門響をじっと見つめていた。
古城門響。『紅血の狼』と恐れられる不良、そして学校で一二を争うイケメン君だ。癖っ毛の銀髪、狼のような鋭い目つきに、月のような黄色の瞳。顔立ちははっきりと整っていて、神秘的で人を惹きつける容姿をしていた。確かハーフで、あの綺麗な髪と目は自然の賜物らしい。だが性格は最悪。彼は毎日喧嘩をしているような不良で、街の不良たちから最も恐れられている荒くれ者なのだ。古城門は群れることが嫌いでクラスでも孤立しているが、顔がこの通りめちゃくちゃいいからちゃっかりファンはいたりする。ちなみに『紅血の狼』という名前の由来はいつも一匹狼で大勢の不良たちを蹴散らし、返り血で身体を紅く染め上げるからだそうだ。恐すぎだろ。それなのになんでこんなに女子からモテるんだろう。やっぱり顔が良ければなんでもいいのだろうか。
「オタクな浅岸のことだからもっとキモくはしゃぐかと思ったけど、これじゃつまんないな」
古城門から目を離し、吉田が退屈そうにそう呟く。
いやお前らが居なければめちゃくちゃ楽しんでたから。もっとテンション爆上げだったから!!
「キャーー、長谷川君カッコいい!!」
「それ何の服だっけ?? とにかく何着てもカッコいいなんて長谷川君流石~」
腰巾着がうるさい。そちらに視線を移せば同じ班の長谷川隼人に彼女らは夢中になっているようだった。
「ありがとう。この羽織はね、新撰組という幕末の京都で治安維持活動をしていた人たちが着ていたものだよ」
「へぇそうなんだ。長谷川君って物知りなんだね~」
「そんなことないよ。ネットで少し調べただけだから。それより栗林さんと八野さん、その髪とても似合ってるよ。かわいい」
長谷川が爽やかな笑顔を向けると、それぞれウィッグを被った二人は頬を赤く染めて、見惚れているようだった。周りにいた他の客もキャーーと黄色い歓声をあげる。
長谷川キモ。
学校で古城門響と並ぶ一二を争う二人のイケメンの内の一人、長谷川隼人。確かにモデルのように整った顔立ち、さらさらした茶髪、高身長で容姿は良い。しかし性格はクソだ。爽やかイケメンを装っているようだがちょっと観察していれば分かる。アイツは自分の容姿に酔った自分のことしか興味のないナルシスト野郎だ。女子たちは彼の何を見ているのだろうか。やっぱ顔か。
「古城門くーん、オタク君つまんない。ねぇ私と二人でここ抜け出してどっか行かない??」
女子の前では絶対しないだろうありえないほどの甘ったるい猫撫で声で吉田が古城門と腕を組んで誘う。
うわー吉田よく古城門にあんな気軽に接すること出来るよな。あっ古城門めっちゃ嫌そうな顔してる。
「近寄んな」
案の定、古城門は吉田の手を振り解き、イラついた表情で距離を取った。
吉田は古城門が好きでこうして機会があれば気を引こうと頑張ってる。班に彼がいるのは女子グループのリーダーである吉田の特権を使って、誰にも文句を言わせない状況で班に引き入れたからだ。あのナルシスト長谷川も吉田の腰巾着二人の意向で同様に引き入れた。
それにしても吉田のこと殴るかと思ったけど、そこまで性格は荒れていないらしい。というか、古城門よく修学旅行に来たよな。あの人こういうの嫌いそうだから絶対来ないかと思った。
「もう、相変わらず古城門君は冷たいなぁ。でもそんなとこもクールでカッコいいよ」
吉田が甘ったるい声音とセリフに若干引く。
僕は無理矢理被せられた金髪のウィッグを外し、いじられないよう空気と化していた。あー家帰ってゲームしたい。
「チッ」
舌打ちにビクッとする。誰がしたかと思えば、古城門だった。めちゃくちゃ睨みつけられてる。えっこわ。
僕は古城門に嫌われている。それは僕が高校入学してからずっとで、古城門は僕に会う度眉間に皺を寄せ、睨みつけ、時にはこうして苛ついたように舌打ちしてくる。正直怖い。
幾ばくか時が経ち、店を出るということで、僕は一足先に出口へ向かった。
早く修学旅行なんて終わって欲しい。行かないなんて選択肢は親を心配させるのでなかった。この四日間本当に憂鬱だ。唯一の救いはソシャゲくらいか。はぁ~~。
「浅岸!!」
突然名を呼ばれ、肩がビクッとする。呼ばれた方向に振り向けば古城門が凄まじい形相で僕に迫ってきていた。
えっなになになに。怖い怖い怖い怖い。
本能で目を瞑り咄嗟に身構える。しかし来たのは衝撃ではなく、何かに覆われる感覚だった。うっすらと目を開け確認すると、古城門が僕を何かから庇うように出口に背を向ける形で抱きしめていた。
えっ、えっっな、どういうこと!?
しかし古城門が抱きしめてきた理由はすぐ分かった。
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