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第十二話
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「全て俺の責任だ。お前は何も恥じる必要は……いや恥じなくていいなどと無理な話に決まっているよな」
ぎゅうと締め付けてくるその少しの息苦しさが心地いい。勇士はもっとと、不安そうな上目遣いを龍一郎に向ける。
「父さん、俺どうやって生きていけば……」
「お前は何も心配する必要はない。きっと訓練していけばまた元に戻れるはずだ。訓練は俺が指導して支えるし、それまで俺が全て面倒をみる」
「もし、戻れなかったら俺……」
「そんなことにはならない。……だがもしそうなっても俺がずっと面倒をみる。大人になって家を出ても必要な時は俺が必ず駆けつけるから心配することはない」
「父さんにそんな迷惑かけられない。仕事だっていつも忙しいのに」
「だったら辞めるまでだ」
何を置いても自分を第一に優先する龍一郎に勇士は満足だった。たとえそれが親の責任から来るものでも大切にされている、そう感じたかった。
「父さん……」
嗚咽を漏らし、泣き顔を見せないように胸に顔を埋める。勿論泣いたフリだ。
龍一郎は慰めるように頭を撫でて、勇士はしばらくの抱擁をうっとりと味わった。
洗浄済みの貞操帯を手にした龍一郎を前に、また欲に翻弄され、人から不審に思われないようしょっちゅう注意を払う日々を送らなければいけないと思うと鬱屈した気分になった。
「やっぱりつけなきゃ駄目?」
申し訳なさそうな笑みを龍一郎が見せる。
「色々と辛い思いをさせて悪い。だがお前を守るためなんだ」
そんな親心満載に言われてしまえば不満も失せる。勇士は龍一郎がいれやすいように四つん這いになって後孔を見せ、「父さん、いいよ」と羞恥で頬を赤くする。ひんやりと冷たいメタルのアナルプラグが後ろに当てられる。
「っん……」
ぐぷりと中にはいってくる感覚に声が出ないよう口を引き結ぶ。しっかりと奥までプラグを埋め込まれ、ベルトが腰に巻かれるとカチリと錠前が鳴った。
「勇士、前を向きなさい」
今度は腕は横に、床に膝をつき前を曝け出す。結局射精には至らず、性器は熱を燻らせ勃ち上がったままだった。
「これでは着けられないな。もう少し時間を置こう」
今の状態で、貞操帯を着けてしまえば陰嚢が引っ張られて痛くて堪らない。燻りが収まる間、龍一郎は風邪を引かないようにと貞操帯なしに久しぶりに下を履くことを許された。リラックスにと温かなココアも淹れてくれたが、いつも貞操帯を着けているせいか逆に慣れなくてマグカップを掴む指をそわそわと動かしてしまって落ち着かない。
そうしてカップの底まで飲み終わった頃、促された勇士は下を脱ぎ、龍一郎は再び貞操帯を手にする。
もう性器はいつもの姿に戻り、龍一郎は性器を摘み、貞操帯を装着させて鍵を閉める。
龍一郎に前を触られていることに熱が甦りそうだったが、父親に欲情する変態だと思われたくなくて必死に耐えた。
「元に戻るまではしばらく時間がかかるだろう。勇士、辛いだろうが少しづつ頑張ろう」
柔らかな優しさに浸る。
(いつもこんな調子だったらいいのに……)
もっと龍一郎に甘えたい、そんな思いがぐっと込み上げてくる。
「父さん……」
思わず名前を呼ぶ。龍一郎が振り返り、静かな視線を向ける。
「どうした?」
「…………」
言葉に出来ない。もしそれを言葉にしてしまったら、龍一郎は面倒だと迷惑がるかもしれない。そうなったら勇士自身も耐える自信がなかった。
「……えっと、……その」
けれど勇士だけを映した瞳を逸らされたくなくて、繋ぎ止めるのに必死になる。しかしそう長くはもたない。龍一郎は勇士が飲み干して空になったカップに視線をやって、片付けようと手にする。
「今日はもう寝なさい。課題は朝済ませるように」
目線を向けられることなくそう淡々と促される。流しにカチャリとカップを置く音が響いた。
「近日期末テストがあると聞いた。あまりガミガミ言うつもりはないが、赤点は取らない程度に勉強しなさい」
どこかそっけない、父親らしい言葉に、勇士はもう甘える時間は終わりか、と寂しくなる。
「…………はい」
勇士は龍一郎に従順だ。
「お父さん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
龍一郎の言う通り、自室へと階段を上がっていく。小箱から龍一郎からもらった時計を取り出し、腕につけてみる。
ベッドで寝転がりながら時計を指で撫で摩る。子どもを祝いたい一心で贈ってくれたものか、親の義務での贈り物か分からない高級品。
金属は暖かいような冷たいような温度で、触れるごとに切なくなって、けれど暖かいに違いないんだと縋るようにいつまでも時計を撫でる手を止められなかった。
ぎゅうと締め付けてくるその少しの息苦しさが心地いい。勇士はもっとと、不安そうな上目遣いを龍一郎に向ける。
「父さん、俺どうやって生きていけば……」
「お前は何も心配する必要はない。きっと訓練していけばまた元に戻れるはずだ。訓練は俺が指導して支えるし、それまで俺が全て面倒をみる」
「もし、戻れなかったら俺……」
「そんなことにはならない。……だがもしそうなっても俺がずっと面倒をみる。大人になって家を出ても必要な時は俺が必ず駆けつけるから心配することはない」
「父さんにそんな迷惑かけられない。仕事だっていつも忙しいのに」
「だったら辞めるまでだ」
何を置いても自分を第一に優先する龍一郎に勇士は満足だった。たとえそれが親の責任から来るものでも大切にされている、そう感じたかった。
「父さん……」
嗚咽を漏らし、泣き顔を見せないように胸に顔を埋める。勿論泣いたフリだ。
龍一郎は慰めるように頭を撫でて、勇士はしばらくの抱擁をうっとりと味わった。
洗浄済みの貞操帯を手にした龍一郎を前に、また欲に翻弄され、人から不審に思われないようしょっちゅう注意を払う日々を送らなければいけないと思うと鬱屈した気分になった。
「やっぱりつけなきゃ駄目?」
申し訳なさそうな笑みを龍一郎が見せる。
「色々と辛い思いをさせて悪い。だがお前を守るためなんだ」
そんな親心満載に言われてしまえば不満も失せる。勇士は龍一郎がいれやすいように四つん這いになって後孔を見せ、「父さん、いいよ」と羞恥で頬を赤くする。ひんやりと冷たいメタルのアナルプラグが後ろに当てられる。
「っん……」
ぐぷりと中にはいってくる感覚に声が出ないよう口を引き結ぶ。しっかりと奥までプラグを埋め込まれ、ベルトが腰に巻かれるとカチリと錠前が鳴った。
「勇士、前を向きなさい」
今度は腕は横に、床に膝をつき前を曝け出す。結局射精には至らず、性器は熱を燻らせ勃ち上がったままだった。
「これでは着けられないな。もう少し時間を置こう」
今の状態で、貞操帯を着けてしまえば陰嚢が引っ張られて痛くて堪らない。燻りが収まる間、龍一郎は風邪を引かないようにと貞操帯なしに久しぶりに下を履くことを許された。リラックスにと温かなココアも淹れてくれたが、いつも貞操帯を着けているせいか逆に慣れなくてマグカップを掴む指をそわそわと動かしてしまって落ち着かない。
そうしてカップの底まで飲み終わった頃、促された勇士は下を脱ぎ、龍一郎は再び貞操帯を手にする。
もう性器はいつもの姿に戻り、龍一郎は性器を摘み、貞操帯を装着させて鍵を閉める。
龍一郎に前を触られていることに熱が甦りそうだったが、父親に欲情する変態だと思われたくなくて必死に耐えた。
「元に戻るまではしばらく時間がかかるだろう。勇士、辛いだろうが少しづつ頑張ろう」
柔らかな優しさに浸る。
(いつもこんな調子だったらいいのに……)
もっと龍一郎に甘えたい、そんな思いがぐっと込み上げてくる。
「父さん……」
思わず名前を呼ぶ。龍一郎が振り返り、静かな視線を向ける。
「どうした?」
「…………」
言葉に出来ない。もしそれを言葉にしてしまったら、龍一郎は面倒だと迷惑がるかもしれない。そうなったら勇士自身も耐える自信がなかった。
「……えっと、……その」
けれど勇士だけを映した瞳を逸らされたくなくて、繋ぎ止めるのに必死になる。しかしそう長くはもたない。龍一郎は勇士が飲み干して空になったカップに視線をやって、片付けようと手にする。
「今日はもう寝なさい。課題は朝済ませるように」
目線を向けられることなくそう淡々と促される。流しにカチャリとカップを置く音が響いた。
「近日期末テストがあると聞いた。あまりガミガミ言うつもりはないが、赤点は取らない程度に勉強しなさい」
どこかそっけない、父親らしい言葉に、勇士はもう甘える時間は終わりか、と寂しくなる。
「…………はい」
勇士は龍一郎に従順だ。
「お父さん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
龍一郎の言う通り、自室へと階段を上がっていく。小箱から龍一郎からもらった時計を取り出し、腕につけてみる。
ベッドで寝転がりながら時計を指で撫で摩る。子どもを祝いたい一心で贈ってくれたものか、親の義務での贈り物か分からない高級品。
金属は暖かいような冷たいような温度で、触れるごとに切なくなって、けれど暖かいに違いないんだと縋るようにいつまでも時計を撫でる手を止められなかった。
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