【完結】誓いの鳥籠

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第七話

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「おい、大丈夫か?」
 中々立ち上がらない勇士に樋宮が心配した様子で駆け寄り、肩に手を回して体を支える。
「……ん、大丈夫。なん、でもない」
 感じていることを悟られたくなくてすぐに体を起こして、距離を取る。縛られた中心が痛む。大きな刺激を受けたからか我慢していた欲求が爆発的に大きくなる。
(射精したい射精したい射精したい射精したい)
 そればかりが頭を巡って勇士の手は欲求に従い、中心へと向かう。繋ぎ止めた理性は中心を逸れて、股近くのスラックスを握るのでやっとだった。
「……お前──」
 樋宮は勇士の姿に言葉を失う。気付かれてしまった、目が合った瞬間勇士は羞恥で涙が浮かぶ。
「鐵、とりあえず移動しよう」
 樋宮は息を荒くして中心の熱に耐える勇士の体を支えて、周囲に目を配りながら外の誰もいない校舎裏に向かう。
「っ……、っは、樋宮、ま、って」
 道中、歩く度に中が動いてしまって勇士は樋宮の服を掴んで訴える。樋宮は「分かった」と周囲を注視して休みを挟んでくれた。
 よろよろとした足取りを樋宮が支えて一歩一歩進む。
 着いた頃には壁に背中を預けて「はぁ、はぁ……」と悩ましくしかめた顔を隠す気力もなく彼に晒してしまっていた。
「っ……樋宮、違うんだ。……っだから頼むから勘違いはしないでくれ」
 貞操帯で感じている変態。
 じっと醜態を見つめる樋宮にそう思われている気がしてならなくて勇士は泣きそうになりながら懇願するように言う。
 樋宮はぐっと何かを堪えるような表情を浮かばせて、「勘違いなんかしない。鐵、今日は仕方なかったんだ」と勇士に優しく言い聞かせた。
「今日はランニングの量も倍で、練習もずっと体を動かすようなもんばっかだったからな。辛くなるのも当然だ」
「……そうだよな」
 樋宮は軽蔑は一切向けず、勇士に寄り添う。
 実を言うと樋宮は勇士が常時貞操帯を着けていることは知っている。
 それが性犯罪に巻き込まれないためだということもだ。
 だからあくまで防犯対策で着けている貞操帯で感じている淫乱だと思われたくなかった。
 けれど樋宮にその心配は無用だったようだ。
「……なぁ樋宮、これ着けている意味本当にあると思うか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって俺男だぞ? そんな襲われるような顔つきでもないし、ほぼ着けてたって無駄だろ」
「無駄とまではいかないだろ。俺だってガキの頃、防犯ブザーなんざ鳴らしたことねぇし、正直いらねぇって思ってた。けど防犯対策ってそんなもんだろ。やって損はねぇよ」
「でもこれ流石にやりすぎじゃないか? 俺、男なのに女子みたいにしかトイレ出来ないし、……普通のやり方だってもう思い出せない」
 実際前を外してもらってトイレの前に立たされても何をしたらいいか分からないだろう。
「なぁ防犯って普通ここまでするもんなのか? 俺、トイレ行く度に外してもらうために学校に親呼ぶ奴なんて一人も見たことないぞ」
 樋宮は黙り込む。けれどこれは何度か交わされてきた会話。次に彼が何を言うかは分かっていた。
「そりゃあ誰だってそんなこと公にしないだろ。お前だって俺以外の誰にもこんなこと言わないだろ? 数はそんないねぇだろうが鐵が気付いていないだけでいるはいるだろ」
 樋宮の口調は言い慣れているからか流暢だ。
「鐵、ちょっと過保護なだけで普通だ普通。気にするようなことじゃない」
「普通か……」
 小学校では誰もが一人でトイレを済ましていた。けれど自分は必ず龍一郎を呼ばなければ排泄は出来ない。人と違うのは子どもにとっては時に苦しい。けれどセンシティブな話だから一番仲の良かった樋宮に唯一悩みを打ち明けた。
「ひのちゃん……」
「確かにあんま見かけねぇけど、心配なら普通にするだろ。気にすんな」
 最初は樋宮も驚いていたが、その時も彼は『普通』と不安になっている勇士になんでもないことのように言う。
「けどあんまりこのことは人に言わねぇ方がいいぞ。俺は別に何も思わねぇけど、人によっちゃあ馬鹿にしてくる奴もいる。それ着けてんのも結構不便だろうし、だからそのことでなんか悩みとかあんなら全部俺に言え。分かったな?」
「うん」
 そんな感じで樋宮には下のことで色々話を聞いてもらっていた。
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