【完結】誓いの鳥籠

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第六話

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「っん……」
 下を脱ぐと、むわっとした蒸気が漂ってくる。前につけられたステンレス製の貞操帯は陰茎を覆っていて汗を閉じ込めている。
 中の陰茎は勃ち上がろうとするけれども貞操帯に阻まれて思わず痛みに顔を歪める。けれど調整はされているため、リングが嵌められた陰嚢が勃起で引っ張られても痛みはまだマシなものだ。
 今すぐに触りたいくらい熱で頭が満たされる。
 不幸か幸いか勇士はこんな経験をほぼ毎日しているためこの苦悩には慣れていた。勇士は悶えながらもいつものようにバッグから汗拭きシートを取り出すことに成功する。
 やはり下に色々着けているだけあって蒸れはひどい。
 シートで汗を拭き取っていく。肝心な部分には触れられないが、やらないよりマシだろう。鼠蹊部と貞操帯から露わになっている陰嚢を刺激しないようにそっと拭いていく。
「っう……」
 後ろに手を伸ばしたところで指先が予期せずプラグに触れてしまい、びくりと体が震える。
 走る度に後ろを刺激され、散々汗をかいた後の中は少し触れただけで感じてしまうほど敏感に仕上がっていた。
 あまりプラグには触れないように慎重にシートで拭って、再び下を履く。
 制服に着替え終わって、よろよろとした足取りで個室トイレを出ると丁度着替え終わったサッカー部の後輩たちが更衣室から出てきていた。
 貞操帯をつけていることがバレたくないからと勇士は一人で着替えている。けれど誰も個室トイレから出てくる勇士に奇異な目は向けない。
 勇士は皆に一人で着替える方が落ち着く、閉所恐怖症の逆みたいなもんだと言っている。それで訝しげに深く訊かれることはあっても、人の興味は長続きしないもので噂話にまで広がることはなかった。もう今は皆も慣れたもので勇士が個室トイレで着替えることは当たり前になっていた。
 また組長の息子だからと遠巻きにする者もいない。
 学校の皆は勇士が組長の一人息子であることは知らない。龍一郎は『大志万』組の組長を継いでいるが、表は実際にも経営している企業の社長、裏はヤクザの組長として生きている。勇士には裏の話はしないが部屋を出て通話している龍一郎をこっそり覗くと不穏な言葉が始終聞こえたり、熱が出て早退する勇士に龍一郎が慌てて学校に迎えに来た時は開いた上着の隙間からホルスターに掛けられた銃がちらっと見えてしまったりと、一番彼に近しい存在のため裏の姿を時々垣間見ることが出来る。
 しかし龍一郎が徹底して自身が組長であるという情報を隠していることで、彼が大志万の組長だということに気付いているのは勇士だけで、学校の生徒らは勇士を普通の生徒として接している。
 じゅくじゅくとした後ろは少しだけ動いても反応してしまいそうだった。部員がいなくなったら帰ろうと人を待っているように装って壁に寄りかかる。
「っん……」
 前の痛みに眉を寄せて、ぎゅっと目を瞑って中の刺激に耐える。
 段々と閑散としてきて、もう後は自分一人かと思っていると更衣室の扉が開いた。
「誰か待ってんのか?」
(樋宮……)
 明るい茶髪、眉間には皺が寄っており目つきは一段と鋭い。整った顔立ちだが、怖さだけが目立ってしまっていた。
 けれどまだ樋宮の表情は昔ながらの友人の前であってまだ穏やかな方だった。
「ん、まーな」
 余裕なさげに答える。意識は完全に中に囚われていた。
「誰待ってんだ?」
「誰って……その、同学年の、あの人だよ」
「女子か?」
「違うけど……」
「男か。名前は?」
 平静を装うのもやっとなのに樋宮は前を陣取ってしつこく訊いてくる。けれどどう願っても樋宮は勇士を一人にしてくれないようだ。
「じゃあもう樋宮でいいよ。俺はお前を待ってたんだ」
「じゃあってなんだよ」
「なんでもない。ほら門が閉まる前にさっさと行くぞ」
 樋宮の肩を軽く叩いて普通を心がけて前に歩き出す。すぐに樋宮もついてきた。
「本当は誰のこと待ってたんだ?」
「本当も何も樋宮と帰りたかっただけ。それだけだ」
 手短にそう返すと樋宮はまだ納得はいっていないようだったが、なんだか嬉しそうだった。
 樋宮は積極的に喋る方ではない。勇士も耐えるのに精一杯だったから二人の間には何の会話もなかった。けれど二人の付き合いは勇士が学校に通い始めてからずっと、クラスだって不思議な縁か高校生の今になるまでずっと同じだ。だから沈黙であっても二人には気まずさなど欠片もない。
 履き替えた内履きを下駄箱に戻そうと慎重に屈む。その際、後ろを学生が通り足が体にぶつかってしまった。
「っ……!」
「おーすまんすまん」
 衝撃でタイルに手をつける勇士の背後を学生が風のように去っていく。
「っ……、……」
 喉から出かかる喘ぎを必死に食い止める。股はビクビクと小刻みに震えていた。
 中のプラグの位置が大きく動き、敏感な腸壁を抉ったのだ。それも不意打ちなのだからひとたまりもない。
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