15 / 20
第十五話
しおりを挟む
「キャウキャン? キャンキャン? キャンキャンキャンキャン! (俺がアンタの恋人? 寝ぼけてるのか? だって俺はまだ一歳にもなってないんだぞ!)」
「あー違う違う。そうじゃない。ルイは憶えてないだろうけど、前世でルイと俺は恋人同士だったんだよ」
「キャウア? キャウ? (はぁ? 前世?)」
「そう。妖精は樹木や花に宿るが、その宿った植物が死んでしまえば妖精も死んでしまう。しかし植物には種がある。種が成長すれば再び妖精も復活出来る。勿論犬の妖精も同じ。俺はルイならきっと憶えているはずだって思ってたけど、まぁ実際ルイみたいに前世を憶えていない妖精なんて結構いるんだよ」
種と妖精の復活については本当のことか判断しかねるが、確かにその話でいけば俺の名前も俺が犬の妖精だってことも知っているのは俺と前世で会ったことがあるからということで納得がいく。けれど。
「(だからって俺がお前の恋人? 恋人だということも憶えていないのは当然だって? はっアンタ、忘れていることを良いことに出鱈目なこと言ってんじゃないのか?)」
そう吠えて伝える。
「俺が出鱈目なんか言うと思う? どうされるとルイが悦ぶかバッチリ俺憶えてるんだから」
「(はぁ? 悦ぶ? そんなことお前と恋人だってことの何の証明になるんだよ)」
「あっそっか。ルイは子どもだからまだ知らないんだっけ」
っな、子ども扱いしやがってぇ~~。
ムカつくが、ここで怒るとまた子ども扱いされそうでぐっと堪える。
早く家に帰らなければ。
俺のせいで彼女には迷惑をかけてしまった。それについて俺はきちんと謝らなければいけない。それに彼女とは色々あったが、俺は彼女と仲直りがしたかった。
ガブリと手に咬みつく。
「いたっ」
男が手を離した隙に逃げだし、扉に向かう。男が手を摩りながらもそんなこと少しも気にしていない様子で俺を呼ぶ。
「あ、どこ行くんだよルイ~」
この体の大きさならドアノブにも手が届きそうだ。そこでふと思い出す。
「(なぁ俺を助けてくれたのはお前か?)」
「ああそうだよ。俺がルイをゴミ溜めの中から救った白馬の王子様さ」
「(…………)」
キラキラと輝いているつもりだろうが、自分で王子様と言うほど輝きを失っていることを彼は気付いているのだろうか。
「(傷は魔法で治してくれたのか?)」
「それはルイ自身の回復力だよ。犬の妖精は森の加護を受けているから植物の精気ですぐに体を治すことが出来るんだ」
窓からは生い茂った木々が見えた。部屋にこんなに植物があるのもそのためか。千年を生きているだけあって俺の知らないことまで知っているんだな。
なら俺の体が急激に大きくなった理由も知っているかもしれない。
「(どうして俺の体が急に大きくなったんだ? 何か森の加護と関係があるのか?)」
「その通り。本来の犬の妖精なら森の精気によって一年で成犬になるんだ。けれどルイは森から離れていたから成長が遅かった。それで森に戻って精気をうんと受け取ったから急に体が成長したわけ」
なるほど。まぁ何にせよあのゴミ溜めから助けてくれたのだ。彼は命の恩人だ。
「(ありがとう、おかげで助かった。君がいなければ今頃俺は死んでいただろう。お礼は今度必ずするよ)」
「いいやお礼だなんて……ってかっこよく言いたいところだけどめちゃくちゃ嬉しいです。できればお礼は永遠を共にする魂の誓いを──」
「(お菓子とかお花とか色々今度持って来るよ)」
「ムゥ、命の恩人としてはやや対価が……あっそうか! お菓子ってことは一緒にお茶会をするってことか! ルイと二人で甘やかなティータイム。まるでデートみたいだ。ハッ、そうかこれはルイからのデートのお誘い……」
随分大きな独り言が終わったと思ったらなんだかとても幸せそうな微笑みを今度は浮かべる。
「分かったよルイ。せっかくのルイのお誘いだ。俺もルイのために色々準備しておくよ」
「(あ、うん分かった。んじゃまた今度ね)」
面倒な予感を察知。今度ここに来る時はお礼を早く済ませてさっさと帰ろう。
「あー違う違う。そうじゃない。ルイは憶えてないだろうけど、前世でルイと俺は恋人同士だったんだよ」
「キャウア? キャウ? (はぁ? 前世?)」
「そう。妖精は樹木や花に宿るが、その宿った植物が死んでしまえば妖精も死んでしまう。しかし植物には種がある。種が成長すれば再び妖精も復活出来る。勿論犬の妖精も同じ。俺はルイならきっと憶えているはずだって思ってたけど、まぁ実際ルイみたいに前世を憶えていない妖精なんて結構いるんだよ」
種と妖精の復活については本当のことか判断しかねるが、確かにその話でいけば俺の名前も俺が犬の妖精だってことも知っているのは俺と前世で会ったことがあるからということで納得がいく。けれど。
「(だからって俺がお前の恋人? 恋人だということも憶えていないのは当然だって? はっアンタ、忘れていることを良いことに出鱈目なこと言ってんじゃないのか?)」
そう吠えて伝える。
「俺が出鱈目なんか言うと思う? どうされるとルイが悦ぶかバッチリ俺憶えてるんだから」
「(はぁ? 悦ぶ? そんなことお前と恋人だってことの何の証明になるんだよ)」
「あっそっか。ルイは子どもだからまだ知らないんだっけ」
っな、子ども扱いしやがってぇ~~。
ムカつくが、ここで怒るとまた子ども扱いされそうでぐっと堪える。
早く家に帰らなければ。
俺のせいで彼女には迷惑をかけてしまった。それについて俺はきちんと謝らなければいけない。それに彼女とは色々あったが、俺は彼女と仲直りがしたかった。
ガブリと手に咬みつく。
「いたっ」
男が手を離した隙に逃げだし、扉に向かう。男が手を摩りながらもそんなこと少しも気にしていない様子で俺を呼ぶ。
「あ、どこ行くんだよルイ~」
この体の大きさならドアノブにも手が届きそうだ。そこでふと思い出す。
「(なぁ俺を助けてくれたのはお前か?)」
「ああそうだよ。俺がルイをゴミ溜めの中から救った白馬の王子様さ」
「(…………)」
キラキラと輝いているつもりだろうが、自分で王子様と言うほど輝きを失っていることを彼は気付いているのだろうか。
「(傷は魔法で治してくれたのか?)」
「それはルイ自身の回復力だよ。犬の妖精は森の加護を受けているから植物の精気ですぐに体を治すことが出来るんだ」
窓からは生い茂った木々が見えた。部屋にこんなに植物があるのもそのためか。千年を生きているだけあって俺の知らないことまで知っているんだな。
なら俺の体が急激に大きくなった理由も知っているかもしれない。
「(どうして俺の体が急に大きくなったんだ? 何か森の加護と関係があるのか?)」
「その通り。本来の犬の妖精なら森の精気によって一年で成犬になるんだ。けれどルイは森から離れていたから成長が遅かった。それで森に戻って精気をうんと受け取ったから急に体が成長したわけ」
なるほど。まぁ何にせよあのゴミ溜めから助けてくれたのだ。彼は命の恩人だ。
「(ありがとう、おかげで助かった。君がいなければ今頃俺は死んでいただろう。お礼は今度必ずするよ)」
「いいやお礼だなんて……ってかっこよく言いたいところだけどめちゃくちゃ嬉しいです。できればお礼は永遠を共にする魂の誓いを──」
「(お菓子とかお花とか色々今度持って来るよ)」
「ムゥ、命の恩人としてはやや対価が……あっそうか! お菓子ってことは一緒にお茶会をするってことか! ルイと二人で甘やかなティータイム。まるでデートみたいだ。ハッ、そうかこれはルイからのデートのお誘い……」
随分大きな独り言が終わったと思ったらなんだかとても幸せそうな微笑みを今度は浮かべる。
「分かったよルイ。せっかくのルイのお誘いだ。俺もルイのために色々準備しておくよ」
「(あ、うん分かった。んじゃまた今度ね)」
面倒な予感を察知。今度ここに来る時はお礼を早く済ませてさっさと帰ろう。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
魔王さんのガチペット
メグル
BL
人間が「魔族のペット」として扱われる異世界に召喚されてしまった、元ナンバーワンホストでヒモの大長谷ライト(26歳)。
魔族の基準で「最高に美しい容姿」と、ホストやヒモ生活で培った「愛され上手」な才能を生かして上手く立ち回り、魔王にめちゃくちゃ気に入られ、かわいがられ、楽しいペット生活をおくるものの……だんだんただのペットでは満足できなくなってしまう。
飼い主とペットから始まって、より親密な関係を目指していく、「尊敬されているけど孤独な魔王」と「寂しがり屋の愛され体質ペット」がお互いの孤独を埋めるハートフル溺愛ストーリーです。
※第11回BL小説大賞、「ファンタジーBL賞」受賞しました!ありがとうございます!!
※性描写は予告なく何度か入ります。
※本編一区切りつきました。後日談を不定期更新中です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
1人のαと2人のΩ
ミヒロ
BL
αの筈の結月は保健室で休んでいた所を多数に襲われ妊娠してしまう。結月はΩに変異していた。僅か12歳で妊娠してしまった結月だったが。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
·.⟡┈┈┈┈┈︎ ✧┈┈┈┈┈⟡.·
BLを書くに辺り、ハッシュタグでオメガバースを知り、人気なんだな、とネットで調べて初めて書いたオメガバースものです。
反省点、多々。
楽しみながら精進します☆
崩壊した世界を共に
ジャム
BL
幸せな日常
家族、友達、恋人との大切な思い出
そのすべてが突然亡くなってしまったらどうしますか?
昨日までの暮らし、さっきまでの日常・・・
それがいきなり消えてしまったら・・・
これはそんな日常が崩壊した世界の物語・・・
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる