どうか諦めてくれ

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 タツキが俺の顔の横に腕を置き、体を密着させる。脚は完全に折り畳まれ、ぐちょぐちょと淫らな音が部屋に響く。
「っああ、ふかぁ、あああっ!」
 強欲な熱が奥深くを何度も押し潰す。
 ──ずにゅ。
 入ってはいけないところに熱が触れる。くすぐったさを100倍強くしたような感覚に心が弱くなる。
「あああ゛──!」
「奥に出すから開けろ」
 それだけを狙って熱がぐりぐりと押し付けられる。先っぽだけが周りを抉るようにして最奥に侵入してくる。
 今度は抜けそうなくらい熱を引いて、そして思いっきり最奥を狙う。
 どちゅんどちゅんどちゅん。
 何度も繰り返される。絶対に孕ます、そんな気持ちが強く伝わる。
 閉じたそこはこれじゃあひとたまりもない。可哀想に開けろ開けろと責められ続け、そして遂に貫かれる。
 ぐぽっ。
 鳴ってはいけない音が中から聞こえる。
「ッ──!」
 喉を仰け反らせる。衝撃に声すら出ない。
「っ……!」
 タツキも眉間に皺を寄せて至る。
 最奥に熱が広がる。俺はタツキのものだと上書きされていく。
 手で腹を摩る。
 心地良い、侵す精液に愛おしいとさえ思う。
 巡る快感がやっとのこと引くと、雲の上で寝転ぶようなふわふわとした感覚に襲われる。初めてにしては激し過ぎる経験に体は疲れ切っていた。
 瞼が重くなって、開ける気にはならなかった。



「この野郎……」
 向けられる憎悪に眠りから醒める。
 ベッドで上体を起こす。縛られていた腕は自由になっており、服も綺麗なものに着させられていた。
 そして気付く。俺を見下ろすかつての仲間たち。バールやハンマーなんかを強く握っていて、彼らの視線の先には俺の首元にはっきりと残る噛み跡が。
「何か罠があるに違いねぇ、タツキが危ねぇと思って来てみりゃあ……村に忍び込んで俺たちをゾンビにさせるつもりだったんだな」
「そんなつもりは──」
 咄嗟に立ち上がり、弁明する。しかしそれでどうにかなるような信頼なんて持っていなかった。
「許さねぇ」
 次に何が起きるか、彼らの目を見れば明らかだった。
「ッ──!」
 振り上がるバールに咄嗟に腕で頭を庇う。
 「っう──!」
 ガツンとくる頭への衝撃。
 腕はぐしゃりと折れ、そのままバールをくらう。
 目の前が真っ赤に染まり、視界が歪む。足がもつれ、重力に任せて倒れてしまう。
 次々と憎悪が俺を囲って襲う。体の至るところから骨の折れる音が聞こえてくる。
 痛い。
 指の先まで憎悪は俺を許さない。足で思いっきり踏まれ、爪が汚く潰れる。
 痛い。
 頭にも容赦はない。生温かい血が床に池を作る。
 ふと痛みがなくなる。頭をやられたせいで痛覚が消えてしまったのだろうか。
 意識もぼーっとしてくる。目は開いているから見ているはずなのに見ていない。動く物をただ目で追っている、そんな不思議な感覚だ。
 ふと口から血を吹き出した男がドサっと床に落ちてくる。
 落ちてきた方に目をやる。
 男が、いやタツキが立っていた。
 整った顔立ちは恐ろしいくらい無表情で、瞳は冷たく光がない。手には血のついたナイフを握っていた。
 仲間たちが目の前の現実に硬直する。
「お前……」
 最初に口を開いた者からタツキはナイフを突き刺した。確実に命を奪えるような個所を深く刺していく。
 そいつが倒れたら立っている男をまた狙う。そしてそいつが倒れたらまた次のやつを。
 血の匂いが部屋に充満する。
 そうして仲間は全員床に倒れる。
「ミナト……」
 やっと怒りから解放されたのだろうか。タツキは我に帰って俺の元で屈む。
 窓からオレンジの日差しが入り込む。部屋も肌も全てがオレンジに染まる。もういつゾンビになってもおかしくない。
「死ぬな死ぬな!」
 返り血だらけの手でタツキが俺の上体を腕に抱える。さっきとは打って変わって、彼はボロボロと涙を流す。ひどいパニック状態だ。
 俺を死なせまいと立ち上がり、精一杯の救急箱なんかを焦って持ってくる。
 たとえ救急隊員がいてもきっと俺は助からないだろう。むしろ助かってはいけない。
 意識が遠のく。指先が冷たくなっていく。死の気配だ。
 これでいい。
「……ごめんな」
 力を振り絞って伝える。
 俺のせいでタツキに罪を背負わせてしまった。俺と同じ罪を。
「…………」
 タツキは崖っぷちから突き放されたように茫然としていた。ポロリと彼の頬にまた雫が伝う。頬に手を伸ばし、その涙を指先で拭う。
 どうかもう泣かないで欲しい。お前には笑っていて欲しいんだ。
 視界が暗くなっていく。
 

 そうして俺の人生に幕が下りる。
















 そのはずだった。
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