4 / 12
4
しおりを挟む
ツギハギのトタンで出来た壁に囲われた村に着くと見張りが眉間に皺を寄せて高圧的に迫ってくる。
「何しに来たんだ? 食い物たかりに来たんなら帰ってくれ。ウチも自分たちで手一杯なんだ」
「そんなつもりじゃないっての。その逆だ、ちょっと大きな収穫があってな。俺だけじゃあ量が多すぎて腐らせてしまうからわけに来たんだ」
そう言ってバッグの中から缶パンを取り出し、「ほら」と投げて渡す。
村は食糧不足らしいので、俺の備蓄していた食料を全て持って来た。俺は後二日の命なのだ。備蓄があったって仕方ない。
見張りはらしくない俺の行動に怪訝な表情を浮かべるが、やはり食料は貴重なのだろう。拒絶することはせず村の中に入れた。
首に巻いたタオルも、汗を拭うためのものだと気にも止められない。感染者だと一切勘付かれていないようだった。
客人は珍しいが、俺を心から歓迎する者はいない。村人は冷たい眼差しを向けてくる。村の集会所に向かい、テーブルに食料と薬を広げていく。昨日手に入れたコーラもだ。
村のリーダーであるタツキと幹部が来訪を聞きつけて早速やって来た。テーブルに広がる物資を一目見てタツキがキツく訊ねる。
「一体何のつもりだ?」
「他意はない。助け合いの精神だ」
幹部らが「お前が? はっ笑わせるなよ」、「何か企んでんじゃねぇだろうな」と尋問のように迫ってくる。
「笑わせるつもりも企みもない。……悔やんではいる。早くこうすれば良かった」
物資の中でも最も心強いもの。バッグから手榴弾といった数々の爆発物を取り出してテーブルに広げる。タツキは思ってもみない代物に目を大きく見開く。
「これは……」
「以前武器を取りに自衛隊の基地に行ったんだ。銃なんかもあったんだが、ゾンビに追われて結局これだけしか持ち出せなかった」
自罰的な振る舞いをして、これまで自分のためだけに償いをしてきた。自分のことしか見えてなかったんだ。
だが死に際にやっとのこと理解した。本当の償いを。
村のために尽くす。
それに早く気付いていれば。
「ますます怪しいじゃねぇか」
「何を隠してんだ!? 何か俺たちを罠にはめる気なのか!?」
幹部は俺の胸倉を掴む勢いで詰め寄ってくる。ここまで信用されてないんだな、俺は。今までの俺の行動からしてみればそりゃそうだろうけど。
「だから助け合いだって」
そう言っても相手は信じるつもりがないようだった。
「そろそろ行くよ。夜になる前に帰らねぇと」
別にもう一度昔のように友人たちと酒を呑みながら語ろうだなんて思ってなかった。咎人はさっさと去るべきだろう。
見納めだと友人らを記憶に刻み、タツキを最後に目に焼き付ける。真っ直ぐな、でも温かい瞳。
やっぱり好きだなあ。
そんなことを心でポロッと呟いた。
多くの冷たい眼差しの中、村の出口に向かうと、突如「おい」と呼び止められた。振り返るとそこにいたのはタツキだった。
「何しに来たんだ? 食い物たかりに来たんなら帰ってくれ。ウチも自分たちで手一杯なんだ」
「そんなつもりじゃないっての。その逆だ、ちょっと大きな収穫があってな。俺だけじゃあ量が多すぎて腐らせてしまうからわけに来たんだ」
そう言ってバッグの中から缶パンを取り出し、「ほら」と投げて渡す。
村は食糧不足らしいので、俺の備蓄していた食料を全て持って来た。俺は後二日の命なのだ。備蓄があったって仕方ない。
見張りはらしくない俺の行動に怪訝な表情を浮かべるが、やはり食料は貴重なのだろう。拒絶することはせず村の中に入れた。
首に巻いたタオルも、汗を拭うためのものだと気にも止められない。感染者だと一切勘付かれていないようだった。
客人は珍しいが、俺を心から歓迎する者はいない。村人は冷たい眼差しを向けてくる。村の集会所に向かい、テーブルに食料と薬を広げていく。昨日手に入れたコーラもだ。
村のリーダーであるタツキと幹部が来訪を聞きつけて早速やって来た。テーブルに広がる物資を一目見てタツキがキツく訊ねる。
「一体何のつもりだ?」
「他意はない。助け合いの精神だ」
幹部らが「お前が? はっ笑わせるなよ」、「何か企んでんじゃねぇだろうな」と尋問のように迫ってくる。
「笑わせるつもりも企みもない。……悔やんではいる。早くこうすれば良かった」
物資の中でも最も心強いもの。バッグから手榴弾といった数々の爆発物を取り出してテーブルに広げる。タツキは思ってもみない代物に目を大きく見開く。
「これは……」
「以前武器を取りに自衛隊の基地に行ったんだ。銃なんかもあったんだが、ゾンビに追われて結局これだけしか持ち出せなかった」
自罰的な振る舞いをして、これまで自分のためだけに償いをしてきた。自分のことしか見えてなかったんだ。
だが死に際にやっとのこと理解した。本当の償いを。
村のために尽くす。
それに早く気付いていれば。
「ますます怪しいじゃねぇか」
「何を隠してんだ!? 何か俺たちを罠にはめる気なのか!?」
幹部は俺の胸倉を掴む勢いで詰め寄ってくる。ここまで信用されてないんだな、俺は。今までの俺の行動からしてみればそりゃそうだろうけど。
「だから助け合いだって」
そう言っても相手は信じるつもりがないようだった。
「そろそろ行くよ。夜になる前に帰らねぇと」
別にもう一度昔のように友人たちと酒を呑みながら語ろうだなんて思ってなかった。咎人はさっさと去るべきだろう。
見納めだと友人らを記憶に刻み、タツキを最後に目に焼き付ける。真っ直ぐな、でも温かい瞳。
やっぱり好きだなあ。
そんなことを心でポロッと呟いた。
多くの冷たい眼差しの中、村の出口に向かうと、突如「おい」と呼び止められた。振り返るとそこにいたのはタツキだった。
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
珍しい魔物に孕まされた男の子が培養槽で出産までお世話される話
楢山コウ
BL
目が覚めると、少年ダリオは培養槽の中にいた。研究者達の話によると、魔物の子を孕んだらしい。
立派なママになるまで、培養槽でお世話されることに。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
異世界に転生したらめちゃくちゃ嫌われてたけどMなので毎日楽しい
やこにく
BL
「穢らわしい!」「近づくな、この野郎!」「気持ち悪い」
異世界に転生したら、忌み人といわれて毎日罵られる有野 郁 (ありの ゆう)。
しかし、Mだから心無い言葉に興奮している!
(美形に罵られるの・・・良い!)
美形だらけの異世界で忌み人として罵られ、冷たく扱われても逆に嬉しい主人公の話。騎士団が(嫌々)引き取
ることになるが、そこでも嫌われを悦ぶ。
主人公受け。攻めはちゃんとでてきます。(固定CPです)
ドMな嫌われ異世界人受け×冷酷な副騎士団長攻めです。
初心者ですが、暖かく応援していただけると嬉しいです。
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる