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「推理ものの悪役公爵に生き直しをさせてみた件について」

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 彼女を殺したのは生きる価値がないからだ。彼女は夫がいるというのに私にしつこく付き纏い、子どもを虐待しているという噂も密かに流れていた。だから彼女を利用して趣味に走ってもなんら問題ないというわけだ。
 私は自己満足で自身の服をデザインから考え仕立てている。友人からの評判はよく、自分のも作ってくれないかと依頼されることもあり、時には会社を立ち上げないかという話もあった。
 しかし自由気ままにしたいのであって、依頼も会社立ち上げの話も丁重にお断りしている。
 だから彼女の血を使ってドレスを作るのも好きでやっていることだった。
 鮮やかな赤でレースを染め、見てくれがいいように彼女の色の失った瞳の代わりにマリーゴールドを差し込んでやりマネキンとして作り直す。
 やはり血の発色は素晴らしい。そのままの色を残すのは難しいが、労力を割くだけの魅力は充分ある。
 鮮血で染まったドレスは既に完成している。後はマネキンに着せるだけだ。だがそこに邪魔が入る。
 いつもの作業所に無礼な土足がいくつも響く。
 警察から拳銃を向けられる。その中心には私の友人であるエリオットがいた。
 彼は国では有名な探偵であった。彼は探偵としてすぐに事件を解決に導く優秀さを持っていたが、貴族を中心に何人も人を殺し、被害者をマネキンにして鮮血に染まった服を見せびらかす猟奇殺人鬼『鮮血のクチュリエ』をここ一年の間ずっと追っていた。
 私が証拠を残さないものだからエリオットは四苦八苦していたが、第一容疑者として貴族界でハイセンスな服飾を手掛けることで有名な私を訪ねに来た。しかし私は善良な紳士を装うことが上手いため、すぐに疑いは晴れた。それから犯人である私が推理を手伝う助っ人になったのだから笑いを堪えるのに必死だった。
 最後まで友人である私を信じたかったのだろう。私の姿を見た途端、「……どうして君が」とか「信じていたのに」と嘆いていたがそこのやり取りは定番でつまらないのでスキップしよう。
「逃げ場はどこにもない! 観念するんだクリストファー!」
 覚悟を決めた面でエリオットが華やかな台詞を決める。だがまずは探偵である彼が、殺人鬼が私であると突き止めたのを褒めるべきだろう。
「エリオット、君は素晴らしい。『鮮血のクチュリエ』を私だと突き止めるとは。流石、その実力から国王により騎士爵を授かるだけある。お見事だ」
 スタンディングオベーション。両手を叩いてパチパチと鳴らす。こんな状況で一人だけ劇場にでもいるような私に、エリオット含め警察が困惑して顔が固まっている。
「さて賞賛のし過ぎは人を傲慢にするからここまでにしておこう」
 ハサミを取り出し、軽く振って血を落とす。
「まだ私の作品が完成していないんだ。すまないが、少し待ってくれないか? ああそうだ、コーヒーでも飲んでくるといい。そう時間はかからないんだ」
 そうして背後に横たわる死体に向き直そうとすると「動くな」と警察の銃の構えが一層様になる。不機嫌に鋭くなった瞳を向けると、彼らは冷や汗を垂らし、緊張で喉を鳴らす。
「クリストファー、君にそんな猶予は与えられない。君を今ここで逮捕する」
 エリオットは簡単に言うがそれは私にとって死に等しい宣告だった。
「私は不自由な檻の中で朽ち果てるつもりはない。ならば今ここで私自身が終わりを迎えた方が物語としてはいいだろう」
 上着のポケットから拳銃を取り出す。警察が勘違いしないうちに「それでは皆様ごきげんよう」とだけ残して自分の頭に銃弾を放った。
 それで物語はおしまいのはずであった。しかし神はまだ物足りないようだった。
「なるほど」
 状況を即座に理解し、口角が三日月のようになる。ここは私の屋敷、そして目の前には最初の被害者であり既に墓地に眠っているはずの女性がいた。
 つまり私は過去に戻ったらしい。
「ねぇ、どうしたの?」
 私の不気味な様子に彼女は訝しげに顔を窺う。私はすぐにいつもの表の仮面をつけた。
「いや、なんでもないよ。ただの思い出し笑いだ」
「……そう。ねぇ、それで私に見せたいものって何?」
 どうやら私は作業所に誘い込んでいる最中らしい。どうしようかと少し考える。
 神はきっと私が手掛ける作品をもっと観たくてこんなことをしたのだろう。しかし同じことをすればまたあの時のように作品作りの途中でエリオットが邪魔しに来るだろう。
 部屋に取り付けられた鐘を鳴らし、使用人を呼ぶ。
「……彼女を家まで送るように」
 彼女が急な私の変わりように困惑する。
「すまないが、少し気分が優れなくてね。今日はお帰りいただきたい」
 そう言って彼女を無理矢理帰らせる。寝室に移動し、姿見を見れば案の定若くなった私がいた。
 公爵家が代々受け継いできた艶やかなプラチナブロンドと高貴な紫の瞳。
 元からあまり年齢を感じさせない見た目をしていたが、まだ十八だからか冒険に身軽な雰囲気を醸し出していた。
 おそらく私がこの年ならエリオットは五歳。彼の話では孤児院育ちというから施設を探せば彼をすぐに見つけられるだろう。
 私が目の前にいるというのに犯人を探すエリオットを眺めるのは中々面白いが、二回目をする程でもない。なら子どもの頃にさっさと殺すのがいいだろうというのが私の考えだった。それなら私の作品作りを邪魔する者もいない。
 予想通り彼を見つけるのは早かった。シスターに案内され、個室に入ると不安そうに椅子に座る彼がいた。
 ふわふわした茶髪と、優しげな印象を与える翠のタレ目。ぷくぷくとした頬は子ども特有の愛らしさを存分に発揮していた。
 実際私も彼をかわいいと思ったが、それだけで殺すという決断を覆すつもりなど毛頭ない。
 彼と向き合う形で私も座ると、捨てられた子犬のような瞳で見上げてくる。
「やあ、こんにちは。私はクリストファー・ヴァン・ブロードネス。君はエリオットだね?」
 こくりと彼が小さく頷く。
「シスターから話は訊いているかな?」
「……はい。公爵様が僕の新しいお父さんになるって。僕みたいな孤児が公爵様に引き取ってもらえるなんてとても幸運なことですよってシスターがおっしゃっていました」
 探偵をやっていただけあってやはり頭がいいらしく、幼いながら状況をきちんと把握しているようだった。しかしエリオットはどこか納得していない表情を浮かべている。
「どうしたんだい? 何か訊きたいことがあるのかな?」
「……あの、どうして僕なんかを、その、養子にしようだなんて思ったんですか? ……僕には何の取り柄もないのに」
 どうやら彼はまだ自分の可能性に気付いていないらしい。それも無理はない。使用人の調べによればエリオットは孤児院で虐められていると聞いた。
「君がそう思うのは勝手だが、私はそうは思わないな。人には誰しも好きなものがある。大体その好きを追い求めていけば天才とはいかなくても大なり小なり取り柄にはなるものだ。だから君自身が取り柄はないと判断するのは早計ではないのかな?」
 簡単に助言する。するとエリオットの瞳が天啓を受けたように光を宿す。
 どうしてか私がお優しい善の神になったようで気持ち悪くなる。これはすぐに話を切り上げるべきだ。
 立ち上がり、エリオットのそばに行って手を差し伸ばす。
「エリオット、では行こうか。私の家へ」
 エリオットは輝いた瞳のまま、その手を握りあぐねているようで、しばらく眺めた後に遠慮がちに手を取った。助手席に彼を乗せて私が車を運転している間も、彼は信仰を見つけたような輝いた瞳で見るものだから気色悪くて吐き気がした。
 悪魔を讃えるようだったら受け入れなくもないが、こんな聖書に出てくるような神のように見つめられるのは我慢ならなかった。
 早めに殺そうかと思案する。最初は階段からの転倒といった事故を装うつもりだったが、今ここで殺しても大した問題にはならないだろう。公爵による立場から隠蔽は可能であるし、誰も孤児の死など気にも留めない。
 車がめったに通らない夜道に停めて、ハンドルから手を離す。隣を見るとエリオットがどうしたのだろうと私を窺う。
 私は両手を彼の首に持っていく。するとエリオットはきょとんとして私を見つめる。
 確かエリオットと友人関係を築いていた頃、彼は推理小説に出会わなければ人生は灰色のままだったと語っていた気がする。おそらく今目の前にいる彼は推理小説に出会う前の彼だろう。
 灰色の人生のまま終わってしまうのも不憫だろうなと思い、慈悲を見せる。
 頭をそっと撫でてやる。彼は茫然と私の手を受け入れていたが、しばらくするとうっとりと目を細めて感触に浸っていた。
 それは薄汚れた世の中で稀に見ない裏表のない笑顔。
「…………」
 かわいい。
 胸がきゅうと締め付けられる。
 私は服飾以外にはとんと興味がなく、ここまで感情が湧き立つ自分に驚く。
 気付いたら私は無意識に彼の首から手を離していた。
 もう少し生かしておいてもいいかもしれない。どうやら彼は私を慕っているようだし、そばでかわいさを存分に味わうのもいいかもしれない。
「私のことは父とでもクリストファーでも好きに呼ぶといい」
 パァッと花が咲いたようにエリオットは顔を綻ばせる。

♢♢♢

「クリストファー! 聞いて聞いて!」
 書斎で服のデザインを考えていると、エリオットが興奮した様子で腰掛けていた私の膝に飛び込んでくる。私は膝に座る彼が落ちないように注意を払いながら意気揚々と語る彼の話に耳を傾ける。
「警察はこれを自殺だって断定しているけどこれは自殺に見せかけた他殺だよ! 誰でも出来るとても簡単な密室トリックなんだ!」
 公爵の力を使って私が用意した事件の資料を片手にエリオットが楽しそうに話す。その無邪気な様子が愛らしく心が癒される。
「素晴らしい推理だ。やはり君は天才だ」
 話を聞き、そうして頭を撫でて褒めてやるとエリオットは「えへへ」と頬を緩める。
 私は彼の推理を警察に伝える伝達役であるが、彼は難解な事件を悉く解決し、国中で天才探偵令息と呼ばれていた。
「そうだ。君に見せたいものがあるんだ」
 思い出し、用意していたギフトボックスをエリオットに贈る。彼が受け取ったそれと私を交互に見る。
「開けてみるといい」
 そう言って彼は箱から帽子を取り出す。案の定、彼は気に入ってくれたようで瞳をキラキラと輝かせていた。けれどいつまで経っても感動に浸っているのか固まっているものだからエリオットの代わりに帽子を彼に被せてやる。
「ふむ。やはりかわいいな」
 私のセンスは健在であることを再確認する。帽子は彼がこれから通う学校の制服に似合う飾りの少ないシンプルなものだ。
 エリオットの反応を窺う。
 ふっくりした頬を赤く染め、照れているのか視線が下になっており、私の顔を見ることが出来ないようだった。
 こうもあからさまな態度をされると私もほっこりする。微笑みを浮かべると、それを見たエリオットが目を見開き、そして名残惜しそうに顔を曇らせる。
「……ねぇ、クリストファー。やっぱり学校に行かなきゃ駄目?」
 寂しそうに彼が言う。何回か繰り返されてきた会話だ。
「どうしてこうも消極的なんだ? 君は学ぶことが好きだと思っていたんだが……」
「だって学校に通い始めたらクリストファーと一緒にいれる時間が減っちゃうじゃないか」
 エリオットは本当に面白いことを言ってくれる。おかげで私の心は押し潰されそうだ。
「そこまで私と一緒にいたいのか?」
 うんうんと頭が取れそうな程に振るエリオットに私は最高の気分になっていた。
 両親からは暴力を受け、一切の愛情を受けなかった私にはこの暖かな愛慕は新鮮で心地が良かった。
 私の地位と金目当てで近付く者達とはわけが違う。
 しかしここは保護者として踏み止まるべきだろう。
「寄宿学校というわけではないんだ。だから毎日夕食だって共に取れるし、休日にはずっと一緒にいれる。だからそう消極的になることはない。君は思う存分学んできたらいい」
 それでもエリオットは納得していないようだったが、「私は通学はせずにずっと家庭教師だったから学校生活に憧れていてね。君が学校で体験したことをたくさん私に話してくれないか?」と押してみれば「わかった」と最後には返事をしてくれた。
 それからエリオットが大人しく学校に通い始め、私は暇になっていた。執務はあるが多忙という程でもない。  
 それにエリオットが通学する前は彼の服を私が全て手掛けていた。今は制服だから私が服を作ったところで着る機会もない。
 故に暇だった。だから再び『鮮血のクチュリエ』として華を咲かせようと思ったのだが、これだと思うような素材が中々いなかった。
 私はモデルの重要さに気付いたのだ。血がどんなに良いものでもそれを身に纏う体が相応しくなければやる気は失せる。
 おそらく理想が高くなってしまったのだと思う。
 なにせエリオットはモデルとして完璧だったからだ。大人だった彼は甘やかな美形で、女性たちの人気も高かった。その彼なのだから子どもの姿では言わずもがな。作品作りも張り切ってしまう。
 だがやっとのこと相応しい素材を見つけたのだ。
 湖畔でパラソルの下、お茶を楽しみながら新聞を広げ、写真をじっくりと見つめる。
 見出しには人気女優が映画のやけに長ったらしい賞を獲得したと書かれている。
 顔や体は及第点だろう。血の発色も良さそうだ。
 しかも素行も悪いときた。殺されても新聞に一面を飾るだけで一週間もすれば皆新たなゴシップに夢中になり忘れることだろう。
 素材としては悪くない。
 そうして彼女を使ったデザインを思案していると、エリオットがこちらへ向かって来る。
 彼ももう十八、私が彼を引き取った頃と同じ年齢だ。
エリオットも私の記憶同様美しく成長した。
「ただいま帰りました」
「ああ、おかえり。今日は少し遅かったな」
「大会が近くていつもより長く練習をしてたんだ。けれどこれでも早く帰ってきた方なんだ。寂しい思いをさせてしまってごめんなさい」
 そういう意味で言ったのではないが。しかし彼も青春を謳歌しているのだと思うと保護者としては微笑ましくなる。
 テニス部の部長として活躍し、成績も優秀。女の子たちも放っておかないだろう。
 紅茶を一飲み、隣に座る彼に繊細な心を傷つけないように配慮しながら探ってみる。
「学校はどうだ? 楽しんでいるか?」
「ええ、とても有意義に過ごしています」
「それならいいが。ああそうだ、親しくしている女性がいるなら家に連れて来るといい。歓迎しよう」
「は?」
 エリオットが殺気立った雰囲気を放つ。思わず衝撃に反応が追いつかない。だが彼はすぐに柔和な顔つきに戻る。
「僕と付き合っている方はいませんよ。僕はクリストファーと過ごせるならそれで充分です」
「……そうか」
 育て方を間違ってしまったかもしれないと反省する。これからは自立心を養うよう距離を少し置くべきかもしれない。
 私が目を通していた新聞に、エリオットが視線を移す。写真に映る女優を見てやけにきつく彼が言う。
「実力はあるが、人間としては最悪な性格だ。これじゃあ賞が安っぽくなるだけだ。審査員の目は節穴なのでしょうか?」
「エリオット、その言い方は良くない。貴族たる者、品格を失ってはいけない。気をつけるように」
「……すみません」
 私が叱ることなんてそうそうないためエリオットがしょんぼりと落ち込む。少し言い過ぎたかもしれない。
「最近、お茶にのめり込んでいてね。これは外国から取り寄せたものなんだが、エリオットも飲むかい?」
 そう気分を変えてみようとするとエリオットが「ええ。飲んでみたいです」と心を浮き立たせる。そんな彼に私は使用人を呼んでもう一人分のお茶を用意させる。
 こうして客観的に見ると私はだいぶエリオットに情を抱いていると思う。しばらくそばに置いておくつもりのはずだったが、今や彼を殺すつもりも手放すつもりも一切ない。
 しかし欲求は欲求。人間らしい感情を抱いてもやりたいことをするのが私だ。新聞に目を走らせる。
 どうやら素材が出演予定の新作の撮影現場はこの近くらしい。なら私が素材の元を訪ねれば親しくなり、作業所に誘うのも簡単だろう。
「クリストファー!」
 緊急事態かのようにエリオットに呼ばれ驚く。見ると彼は迷子になってしまった子どものように不安げな表情を浮かべ、焦っているようだった。
 ぎこちなく浮かべた笑みで彼が言う。
「……久しぶりに僕の服を作ってくれませんか? 貴方の新作を見たいんです」
「そうか? だが私の仕立てるものと君の好みはだいぶ違ってしまっているんじゃないのか? 自分の好きなスタイルを求めて街に行って購入するという手もあると思うが」
 子どもの頃は私の手掛ける服をとても嬉しそうに着ていたが、成長すればそうはいかないだろう。彼の自我を尊重するつもりだったのだが、彼は不満そうに言い返す。
「僕はクリストファーの仕立てた服がいいんです! それ以外は一切着るつもりはありませんよ!」
「私が何もしなかったら裸でいるつもりか?」
「そ、それはっ……そうです! 貴族の品格は貴方にかかっているんですよ!」
 これは笑ってしまう。口元を手で覆い、笑みを溢す。
「……ずいぶんわがままに育ったものだな」
 けれど不快にはならない。その逆だ。
 そこまで私に服を仕立てて欲しいとは、クチュリエとして誇らしいではないか。
「わかった。君のために寝巻きからパーティ用のものまで一式仕立てよう」
 新聞紙を折りたたむ。これではあの素材に使う時間はないだろう。エリオットのために素晴らしいものを仕上げなければ。さぁこれから忙しくなるぞ。

♢♢♢

「学校からお電話です」
 そう使用人から告げられた時、私は嫌な予感がした。
 使用人が車を運転するその後ろで、真っ直ぐ前を向いたまま座る私と不貞腐れたように窓から雨が降る外を眺めるエリオットがいた。
 学校からの連絡は案の定良くないものであった。
 教師曰く、エリオットとクラスメートが殴り合いの喧嘩をしたらしい。理由は私がエリオットに贈った帽子をクラスメートに馬鹿にされ、ハサミで修復不可能な程に切り刻まれたからだと。
 エリオットは私の仕立てた帽子をとても大切にしていたから彼が殴り合いを始めた気持ちは充分に分かるが、彼は公子という身分だ。貴族としてはクールではないだろう。
 私なら自身の手は汚さず周囲に気付かれないよう相手に制裁を加えるが、これは保護者としては相応しくないので秘密だ。
 私は、頑なに謝ろうとしないエリオットの代わりに喧嘩をした相手に二人分の詫びをして、医療費として相手の親にいくらか渡した。そんな私の態度にエリオットは衝撃を受けているようだったが、それで何か学んでくれればいいと願っている。
 にしても喧嘩相手の顔は酷いものだった。顔は何倍にも腫れ、膨らんだフグのようだった。対してエリオットには傷一つない。彼が体術を自主的に学んでいたのは知っていたが、これでは殴り合いではなくリンチだろう。
 屋敷に着き、エリオットの個室に二人だけになる。
「暴力は良いとは言えないな。以前言ったはずだぞ。貴族たる者、品格を失ってはいけないと」
「品格がなんだっていうんですか!? アイツは貴方の仕立てた帽子をダサいと貶したんですよ!」
「ファションは好みだから好き嫌いがあって当たり前だろう。それに相手の彼も言っていたじゃないか。才色兼備、探偵としての名声、養子でありながら公爵からも気に入られている君に嫉妬して口走っただけで本気ではなかったと」
「ですが! 奴はそれだけじゃ飽き足らず、帽子をズタズタに切り刻んだ! 殴って当然の相手、……いやあの時殺すべきでした!」
 普段の彼らしからぬ発言に思考が止まる。あの善良の塊のようなエリオットが『殺す』だなんて信じられない。私は今、別人と話しているのだろうか。
「……エリオット、どうしたんだ? いつもの君らしくないじゃないか」
「いえ、クリストファー。貴方が気付かなかっただけで僕は元からこういう人間ですよ。貴方が僕の全て。貴方を貶めようとする者は残らず始末しなければ気が収まらない、どうしようもない人間なんです」
 告白されてもピンと来ない。だってエリオットは善良な魂を持ち、犯罪を赦しはしない正義感溢れる人間だ。
 こんなまるで私を神のように扱うような人間では決してなかったはず──。
 私は思い出していた。エリオットを引き取った日に見せた彼の信仰心を宿した瞳を。
「ああ、そういうことか」
 参ったというように掌を額に押さえる。
 私はエリオットの愛らしさに忘れていたが、彼は私への信仰心を抱いたまま成長し、その想いを狂気まで呼べる程増大させてしまっていたのだ。
 エリオットが額を押さえていた私の腕を取り、後ろへ押し倒す。柔らかなベッドに体を沈ませる。いつの間にか片腕も取られ、両腕をシーツに縫い付けられる。
「孤児院の僕は虐げられ、自分は価値のない人間なんだと思い生きてきました。けれど貴方から拾われた日、僕は貴方の言葉に救われました。僕は価値のある人間なんだと生きてていいのだと希望を抱くことが出来た。僕にとって貴方は僕だけの神様なんです」
 エリオットの瞳は彼を引き取った日に見たあの輝いた瞳となんら変わっていなかった。
 私は彼を狂気に陥れてしまったのだ。
 であれば私は正直でいるべきだ。これから彼が私の正体に失望し、そばを離れてしまうことになっても保護者として彼を正気に戻す責任がある。
「エリオット、私は君が思っているような清き正しい存在ではない。私は神というよりもどちらかと言えば悪魔のような人間だ」
 エリオットが私の言葉に静かに耳を傾ける。
「私の両親は別荘の火事で亡くなったとされているが本当は違う。私が両親を殺したんだ。……酷く苦しむようにと彼らの体に油を注ぎ焼け死ぬのをショーでも観るように笑って見届けた。その後に別荘に火を放ち、命からがら火事から一人だけ助かった哀れな子どもを装ったんだ」
 これで狂気は解けるだろう。エリオットが私に失望するのは見たくはないが仕方ない。
 狂気は誰にも共感されやしない。エリオットには私と同じように孤独になって欲しくはない。だからそうならないように私は普通の保護者を装い、彼を普通の感性を持った人間に育てたかったのだ。
「知っていました」
 エリオットがぽつりと言う。私に覆い被さる彼は少しも驚いてはいなかった。
「貴方のことを知りたくて調べていた時に、火事のことを知ったんです。けれど記事を読んでいくうちにただの火事とは言い切れない不自然な点がいくつか浮かび上がったんです。それで推理をしていくと犯人は貴方以外に考えられないという事実に行き着いた。しかしそれがなんだというんですか? 僕にとって貴方に救われたことは変わらない。僕の中で貴方は天変地異が起きようとも決して揺るがない唯一の神なんです!」
 キラキラと輝いた瞳で彼は訴える。引き取ったあの日は気色悪いと感じたそれ。しかし今度はそうは思わなかった。
 まずいな。緩んでしまう口元を抑えるので精一杯で息がしづらい。
 愛というのは暖かく心地がいい。その愛を私だけに注ぎ、独占出来るというのはなんて最高な気分だろう。
「私は他にも人を殺そうとしたことがある。憎しみはない。ただ発色のいい血で服を仕立てたいと思ったからだ。そんな私でも君は神だと崇めるのか? 言っておくがこんな人間を神だと思うなんて馬鹿げてる」
 残っていた保護者としての理性が、エリオットを狂気から解き放とうとする。しかし彼はその努力を吹き飛ばすように笑ってみせた。
「クリストファー、そんなこと少しも思ってなんかいないでしょう? 顔が感情を隠しきれていないですよ」
 私は自身が今どんな表情をしているか振り返る。抑えていたつもりが、私の顔は嬉しさいっぱいの笑顔を晒していた。
「貴方がしようとしていたことは全てお見通しです。きっと貴方が求める素材で手掛けた作品は形容し難い輝きを放ち、釣り合う賞賛の言葉なんて決して見つかりはしないでしょう。けれどあんな女優を素材にしようだなんて信じられません!」
 エリオットが積もった怒りを打ち明ける。
「クリストファー、どうか僕と貴方のためだけのクチュリエになってください! 貴方の手掛ける素晴らしい作品を他人が身に纏うなんて許せない! 誰かの血を使いたいなら僕の血だけを使ってください! 貴方の輝く作品の一部になれれば僕は喜んで命を捧げます!」
 彼が心臓に手を当て強く訴える。
 これは明らかな嫉妬だろう。命を投げ打ってでもエリオットは私の興味関心を自身のみに向けたいようだ。なんとも愛らしいではないか。
 解かれた片方の手。それでエリオットの頬に私は優しく手を添える。
「私は血だけに囚われて作品を手掛けているわけではないよ。私は作品とモデルをセットで考えているんだ。発色のいい血を使えばモデルは更に美しく引き立つ。他にも条件はあるが、そんなモデルを私は選んでいるんだ。だが君は欠けてなんかいない。君は血を使わなくても充分美しい」
 服飾に関して私は決して嘘を吐かない。それを分かっているのだろう。エリオットは私の言葉が現実のものであることを理解するまで数秒かかり、感動が涙となって溢れそうだった。
「わがままな子だ。しかし君を狂わせてしまったのだから私も責任を取らなければな。……エリオット、約束するよ。私は他人の作品を手掛けることはしない。私は私と君だけのクチュリエになろう」
「……それは告白にイェスと答えてくれたということですか?」
 ああそうか、あれは告白の意味も含まれていたのか。エリオットを自身の息子のように扱ってはいたが、まともな愛の形を知らない私にとって彼に向ける想いは一人の人間を愛することで家族愛かそれとも情愛か判別は出来ないし、はっきり言ってどうでもいい。せいぜい愛を向ける対象が息子から恋人と名称が変わるだけだ。
「そういうことで構わないぞ」
 エリオットの顔が花が咲いたように明るくなり、口元を綻ばせる。
 本当にかわいいな。
 私は欲求をそのままに彼の唇に自身のを重ねた。顔を離すとエリオットは鳩が豆鉄砲を食らったような顔を晒す。そんな彼が愉しくて「ふふふ」といたずらが成功した子どものように笑みを溢す。
 しかしそんな余裕もすぐに消え失せる。
「ん──!」
 柔らかな感触が唇を浸し、舌が中に侵入してくる。口蓋を愛撫され、ふわふわした気分になる。拒む余裕もなくて彼の思うままに蹂躙される。
「はぁはぁ……」
 頬は染まり、意識は雲の上。私はすっかり出来上がっていた。対してエリオットは完全に欲に呑まれていた。
「貴方が煽るってことは我慢しなくていいってことですよね?」
 彼が服を脱ぎ、均整の取れた体が露わになる。そして迷うことなく私のシャツのボタンを外し、下を脱がす。発情期の獣のような熟した瞳が私に危険信号を流す。上体を起こし、性急に脱がす彼の腕を掴む。けれど。
「エリオット、少し落ち着──っ!」
 エリオットがパクリと私の性器を口に含む。欲を煽るように性器に舌を滑らせる。
「エリオット……」
 欲求が薄かった私は好かれるだけ好かれて、誘いは断っていたためそういった経験がない。耐える術も知らず、肉厚的な唸りに翻弄され思わず彼の髪を掴む。
「あっ──!」
 駆け巡る白い快楽。エリオットはそれを全て口で受け止める。
「上手にイケましたね」
 エリオットが柔和に微笑み、親が子に言うように褒める。いつもとは逆の立場になったようで目眩がした。
 エリオットが私の両脚を開く。口に放たれた白濁と唾液を自身の指で掬い、それを後孔に馴染ませる。傷つけないように指は慎重に中にはいり、ぐちゅぐちゅとかき混ぜる。
「ん、……私がリードするつもり、だったんだがな」
「それだと僕が満足出来ないので駄目です」
「っん……失礼なやつめ」
「僕は貴方が快楽に呑まれぐちゃぐちゃになった姿を見たいんです」
「は、ん、それは……今日は遠慮しておいてくれないか?」
「嫌です」
「ああ──!」
 エリオットが私の弱点を見つける。集中的にそこを責められ、理性が溶けていく。
「あ、ああっ、あ、ああ……!」
 内側がドロドロと熱くなっていく。エリオットは容赦がなかった。二本目をいれると弱点を摘み弄ってくる。
 休みなんてものは与えられない。刺激は蓄積し、二度目の白濁が腹に飛び散る。
「ぁあああ──!」
 体は敏感に育ち、肌が赤く火照る。巡る刺激を外に逃そうと肩で息をしていると後孔に大きな熱を感じた。ハッと視線を向けると、エリオットが今にも中にいれようとしていた。
「エリオット、待つんだ……!」
 さっきイッたばかりなのにすぐにこれは厳しい。両脚を閉じて抵抗すると、逆にがっちりと掴まれ大きく開かされてしまう。
「大丈夫、少し壊れるだけです」
 安心させるようにエリオットが言う。だがそれは脅しに近いだろう。
「っあ、あ、あ、あ、あああ──!」
 中をズンズンと押し進む熱に眉根を寄せる。最後に勢いよく前立腺を抉ったせいでパタパタと薄い精液が溢れた。
 お腹が辛いような、しかし私と彼が混じり合うような未知の感覚。死も怖くなかった私は初めて恐怖を感じていた。
 馴染むまで待っていたエリオットに手を伸ばす。
「エリオット、手を握ってくれ」
 彼はそんな私を見て目を見開くが、すぐに指と指を組むように両手を優しく握り、シーツに縫い付ける。
「怖がらないで。僕はずっとそばにいます」
 唇がそっと触れる。今度こそは彼の言葉に安心する。エリオットは私が安堵するのを見届けると腰を動かし始めた。
 それからは何度も絶頂に追い詰められた。何度も押し潰された前立腺はぷっくりと腫れ、微かな刺激さえも拾い上げてしまう。もう精液も枯れ、代わりに潮を吹いてしまっていた。
「あ、ああ、っあ、……エリオット、やすも、あっ、もうむりだ……!」
「いえ。まだ終わるわけにはいきません」
 泣いて縋っても無駄だ。エリオットは慈悲を知らない。彼は何度私の中に出しても満足しないようでまた責め始める。そして再び絶頂が迫る。
 彼は私の両腕を掴み、自身に寄せるように引っ張る。腕がピンと張り、がちゅんと熱が奥を突く。
「っ──!」
 ドクドクと奔流が腹の奥に流れ込む。それと同時に私は背を仰け反らせ、強制的な快感に浸る。
 視界が白く点滅する。指の先まで快楽の波が届いて体が陸に打ち上げられた魚のようにピクピクと痙攣する。
 けれど途中で戸惑いが生まれた。
 快感の波が引かない。ずっと視界は白飛びしたまま。焦点が合わないでなす術もなく受け入れていると、エリオットが嬉しそうに私の疲れきった先端を撫でる。
「これじゃあもう女性と致すことなんて出来ませんね」
 そこまで考えていたのか。
 遠のく意識で私はエリオットに感心していた。

♢♢♢

 学校から帰り、クリストファーの姿を求めて屋敷内を探す。大体は書斎にいるのだが、訪ねてもそこには誰もいなかった。ではどこにいるのだろうと歩き回っていると客間に二人の影を見つける。
「エリオット、帰っていたのか」
 クリストファーが僕に気付き、笑顔で出迎える。
「ただいま帰りました」
 そうは言うものの僕の瞳はずっと彼の向いのソファに座る女性を映していた。僕の視線を追ってクリストファーが彼女を紹介する。
「彼女はエミリア嬢。シーペア商事代表取締役社長のご息女だ」
 物腰柔らかく彼女が膝を折って丁寧に挨拶をする。僕もお辞儀をして返すが、既に頭の中は推理で埋まっていた。
「ではそろそろお暇しますわ。次のパーティでは公爵のお好きなお酒を取り揃えますのでぜひいらっしゃってくださいね」
「ええ、楽しみにしております。季節の変わり目ですのでエミリア嬢、お身体には充分気を付けてくださいね」
 そうして彼女が正門から帰っていくまで庭で二人して見送る。
 この頃にはもう僕の推理は一つに固まっていた。
 訊きたくはない。けれどこの蟠りも放っておけなかった。
「縁談のお相手ですか?」
 そう思い切って尋ねるとクリストファーが驚いたように目を見開く。
 その表情が現実的で僕に受け止めきれない絶望が降りかかってくる。
 彼が口を開く。しかし現実を直に聞くのが嫌で、言葉が発せられる前に僕は声を重ねる。
「エ──」
「どうしてなんですか!?」
「いや……」
「僕のことが嫌いになったんですか!? それとも青い血の通った後継者を残すためにあの女性と結婚するっていうんですか!? そこまで貴族の誇りが大事なんですか!?」
 感情が爆発する。
 クリストファーは僕だけの神様だ。それなのに他人が彼のそばにへばりつくなんて許せない。
「殺そう」
 結論に辿り着き、すぐさま完全犯罪になる道筋をたてる。一度屋敷の中に戻り壁に掛けられた飾りの剣を握る。飾りではあるが刃の切れ味は充分にある。しかし外に出ようとすると前をクリストファーに塞がれてしまった。
「おい待て。先には行かせないぞ」
「通してください!」
「駄目だ」
 ぴしゃりと彼が冷静に言い放つ。当然、僕の怒りはクリストファーに向けられる。
「何故ですか!? 僕よりあの女の方が大事だって言うんですか!?」
「そうじゃない。だが殺したってどうにもならない人間を殺してどうなる? 無駄なことはやめろ」
「僕が変えてみせますよ! 少なくともあの女を殺せば貴方は僕だけの神様であり続ける」
「エリオット、少し落ち着くんだ」
「落ち着いてなんていられませんよ!」
 クリストファーが深い溜め息を吐く。僕は青筋を立ててあの女の背中を追うのに必死になっていた。
「君はあの女性が縁談のお相手だと思っているようだが、そもそも私が縁談を引き受けたところで無駄な話だろう?」
 ピタリと怒りが止まる。それは一体どういうことだ。
「忘れたなんて言わせないぞ。子作りが出来ないように、私を後ろでしか満足出来ない体にしたのはお前だろう?」
 僕が彼にしたことを思い出す。
 貴族にとって青い血は大事だ。だからその血を継ぐために縁談というものがある。クリストファーも例に漏れず、毎度縁談が持ち上がる。
 しかし僕だけの神様に薄汚い伴侶がそばにつくことになるなんて考えられない。だから彼の体を後ろでしか快楽を得られないようにしたのだ。そうすれば伴侶をもらう意味もなくなる。
 クリストファーの言いたいことを理解する。
「ではつまりあの女は縁談関係の人間ではないということですか?」
「そうだ」
 安堵の息を吐く。どうやら僕はクリストファーのこととなると目の前が真っ赤になり馬鹿になってしまうようだ。同時に段々と冷静さを取り戻し、自分が何をしようとしていたのか気付かされる。
「すみません。勘違いをしてしまっていました。このようなお見苦しいところを見せてしまい申し訳ございません」
 我を忘れ乱暴になるのは貴族の品格を下げる行為だ。失望させてしまったかと不安になるけれどクリストファーは「人の話はまず聞くようにな」と軽い注意だけをするに留まった。
「それに私も悪かったと思っている。あの方について事前に君に知らせておくべきだった」
「彼女はどういった用件でこちらに?」
「彼女の父上が経営する企業で優秀な弁護士を雇っていると聞いてね。その弁護士を少し貸していただきたいとお願いしたんだ」
「……はあ、弁護士ですか」
「遺言書作成の依頼をしたくてね」
「クリストファー! もしかして病気を患っているんですか!?」
 泣きそうになると彼が読んでいたのか「違う」と強く言い返される。
「君のためだよ。エリオット」
「……僕のため?」
「法律に従えば私が死んだ後、貴族の血が優先されて遺産はバラバラになる。だが私が一筆したためれば遺産の全てを君だけのものにすることが出来る。簡単に言うと君をブロードネス家の正当な後継者にするということだ。……振る舞いには改善の余地があるが、頭のいい君なら後継者として上手くやっていけるだろう。しかしこれで私は跡取りを残すために伴侶を探す必要はなくなるというわけだ」
 クリストファーが僕のためにそこまでしてくれるなんて。僕の心臓をいくつ捧げたって足りない。
「嬉しいです。……でも」
 歳の差から言ってクリストファーが先に逝くことが必至でも、彼の口から死んだ後のことを聞くなんて耐えられなかった。
 涙をボロボロ流しながら縋るように彼に抱きつく。
「ッグス……貴方が死んだ後のことなんて易々と口にしないでください! 貴方は僕とずっと一緒に生きていくんです!」
 神様が消えてしまうなんて考えられない。もしそんな日が来てしまったら僕は迷わず後を追おう。そんなことを考えていると、聖母のような手つきで頭を優しく撫でられる。
 温もりが僕を包み、段々と心が落ち着いていく。ぎゅうと離さないように抱きつく力を強めると彼は静かに受け入れてくれた。
「私も大概だが、君はそれ以上かもな。……全く狂った者同士をぶつけて暴力を抑えつけようなんて神の思惑も侮れないな」
 クリストファーが独り言のように言う。僕はすぐさまそれを否定した。
「神様は貴方だけですよ、クリストファー」
 すると彼がきょとんと僕を見つめ、そして太陽よりも眩しく美しい微笑みを浮かべる。
「ふふ、そうだな。私は君だけの神様だ」
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