1 / 1
呪いのベンチ
しおりを挟む
飲み会終わり、僕は駅のホームのベンチに座っている。
ホームの中間付近、不自然に設置されている一人掛けのベンチ。
今日は疲れがたまっていたのか、それほどお酒を飲んでいないのに酔いが回ってしまった。
(この状態で電車に乗って吐いてしまったら大変だ)
という事で、僕は先ほどからしばらくこのベンチで休んでいるのだ。
酔いもだいぶ醒めてきていて、吐き気も落ち着きつつある。
目の前に大学生と思われる二人組が立っている。
茶髪の坊主と野球帽を被ったコンビ。
茶髪の坊主が話を切り出す
『後ろに一人掛けのベンチがあんじゃん?スーツ姿の人が座っているやつ』
「あるね。あのベンチがどうかしたの?」
『【呪いのベンチ】なんだよ。あれに座ると死ぬんだって。身体がバラバラになって』
「まじかよ…」
『昔イジメに遭っていた女子高生がこの駅で飛び込んでさ。あそこから』
坊主頭がホームの先頭付近を指で示す。
『急行電車に轢かれたから、もちろん身体はバラバラ。だけど見つかったのは頭部だけで、それ以外は見つからなかったらしい』
「え?」
『以降、あのベンチに座った人間は彼女のようにバラバラになって死ぬんだとよ』
「うわぁ…まじかよ…てか、あの人やばいじゃん」
彼らの肩越しの視線が僕に向けられ、目が合った。
気まずそうにすぐ目を逸らした若者たちは、そのまま学校生活の話題に移った。
「あほくさ…なにが【呪いのベンチ】だよ。いいよ。持っていきたきゃ持っていけよ。こんな身体」
僕は、多少残っている酒の勢いを借りて、少し大きめの独り言を呟いた。
まもなく各駅電車が停まった。
電車は、大学生たちを乗せると、ゆっくりとスピードを上げた。
電光掲示板を確認する。
4分後に急行電車が通過。
その4分後に各駅電車がやってくる。
(気持ち悪さはもうないな)
僕は次の各駅電車に乗る事に決めた。
すると不意に喉の渇きを覚えた。
何か自販機で飲み物を買おうと立ち上がった瞬間、身体がピタッと動かなくなった。
ふわっとシャンプーの甘い香りがした。
(え?)
ゆっくりと身体が勝手に動く。誰かに後ろから押されているような感じ。
(なんだよ…これ…)
状況を把握しようにも頭部以外のコントロールが効かない。
視線をキョロキョロ動かして、周囲を見渡す。
ホームには乗客がちらほらいるが誰も僕の異変に気付いていない。
助けを呼ぼうにも、喉に圧迫感があって声が出せない。
やがて身体はホームの先頭付近で止まった。
さっきの大学生達の会話を思い出す。
(ここ…女子高生が飛び込んだ場所だ…)
悲鳴のような音を出しながら急行電車が駅のホームを通過しているのが見える。
断末魔の叫びがどんどん僕に近づいてきている。
(あ…)
気が付いたら僕の身体は線路に飛び込んでいた。
制服姿の人間たちが線路の上で探し物をしている。
警察と消防関係者が探しているのはバラバラになったであろう肉片。
ベテランの警察官が尋ねる。
『見つかったのはどこの部分だ?』
若手の警察官が答える。
『頭部だけです!!』
ホームの中間付近、不自然に設置されている一人掛けのベンチ。
今日は疲れがたまっていたのか、それほどお酒を飲んでいないのに酔いが回ってしまった。
(この状態で電車に乗って吐いてしまったら大変だ)
という事で、僕は先ほどからしばらくこのベンチで休んでいるのだ。
酔いもだいぶ醒めてきていて、吐き気も落ち着きつつある。
目の前に大学生と思われる二人組が立っている。
茶髪の坊主と野球帽を被ったコンビ。
茶髪の坊主が話を切り出す
『後ろに一人掛けのベンチがあんじゃん?スーツ姿の人が座っているやつ』
「あるね。あのベンチがどうかしたの?」
『【呪いのベンチ】なんだよ。あれに座ると死ぬんだって。身体がバラバラになって』
「まじかよ…」
『昔イジメに遭っていた女子高生がこの駅で飛び込んでさ。あそこから』
坊主頭がホームの先頭付近を指で示す。
『急行電車に轢かれたから、もちろん身体はバラバラ。だけど見つかったのは頭部だけで、それ以外は見つからなかったらしい』
「え?」
『以降、あのベンチに座った人間は彼女のようにバラバラになって死ぬんだとよ』
「うわぁ…まじかよ…てか、あの人やばいじゃん」
彼らの肩越しの視線が僕に向けられ、目が合った。
気まずそうにすぐ目を逸らした若者たちは、そのまま学校生活の話題に移った。
「あほくさ…なにが【呪いのベンチ】だよ。いいよ。持っていきたきゃ持っていけよ。こんな身体」
僕は、多少残っている酒の勢いを借りて、少し大きめの独り言を呟いた。
まもなく各駅電車が停まった。
電車は、大学生たちを乗せると、ゆっくりとスピードを上げた。
電光掲示板を確認する。
4分後に急行電車が通過。
その4分後に各駅電車がやってくる。
(気持ち悪さはもうないな)
僕は次の各駅電車に乗る事に決めた。
すると不意に喉の渇きを覚えた。
何か自販機で飲み物を買おうと立ち上がった瞬間、身体がピタッと動かなくなった。
ふわっとシャンプーの甘い香りがした。
(え?)
ゆっくりと身体が勝手に動く。誰かに後ろから押されているような感じ。
(なんだよ…これ…)
状況を把握しようにも頭部以外のコントロールが効かない。
視線をキョロキョロ動かして、周囲を見渡す。
ホームには乗客がちらほらいるが誰も僕の異変に気付いていない。
助けを呼ぼうにも、喉に圧迫感があって声が出せない。
やがて身体はホームの先頭付近で止まった。
さっきの大学生達の会話を思い出す。
(ここ…女子高生が飛び込んだ場所だ…)
悲鳴のような音を出しながら急行電車が駅のホームを通過しているのが見える。
断末魔の叫びがどんどん僕に近づいてきている。
(あ…)
気が付いたら僕の身体は線路に飛び込んでいた。
制服姿の人間たちが線路の上で探し物をしている。
警察と消防関係者が探しているのはバラバラになったであろう肉片。
ベテランの警察官が尋ねる。
『見つかったのはどこの部分だ?』
若手の警察官が答える。
『頭部だけです!!』
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
CALL~呪い~
黒駒臣
ホラー
初めて通学で電車に乗ることになった美香子は親友の花穂と駅の地下通路に入る。
花穂が言うにはこの地下通路は呪われているらしい。
ただの都市伝説だと苦笑する美香子だったが、いつの間にかその地下通路が奇妙な空間になっていることに気づく。
そこに閉じ込められた美香子たちだったが、閉じ込められているのは二人だけではなかった――
よみや高校怪奇倶楽部〜こわがりな先輩と最強守護霊憑いてるちゃん〜
猫屋ちゃき
ホラー
伝統ある進学校・県立夜宮高校に通う小幡駿は、子供のときから幽霊や怪しいものが見えるが戦う術を持たない怖がり男子。
そんな駿の学校に、めちゃくちゃ強い守護霊が憑いてる最強女子が転入してきた。
様々な悪霊怨霊が吹き溜まり、良くない噂が日々生産される夜宮高校で生きていくためには、時には怪異に対する対処法を考えなくてはならない。
だから駿は、最強守護霊憑いてる女子である男虎琴子を自分の活動に引き入れることにする。
見えるのに超こわがりな「こわたん」先輩と、最強守護霊憑いてるのに何も見えないし幽霊を信じていない「コトラ」が、力を合わせて(?)怪異に挑む、青春ホラーな物語。
※この物語はフィクションです。
ですが、物語の中に出てくるおまじない、儀式などを試す際は自己責任でお願いします。
読みやすいライトなホラーを目指していますが、ホラーが苦手な方はご自分のコンディションとご相談の上、無理のない範囲でお楽しみください。
獣吼の咎者
凰太郎
ホラー
「どうか、あの〈獣〉を殺して! あの恐ろしい〈獣〉を!」
シスター・ジュリザの懇願を請け、モンスタースレイヤー〝夜神冴子〟はニューヨークへと渡米した。
そこは、獣人達による群勢〈ユニヴァルグ〉によって統治された悪夢の地……。
牙爪が入り乱れる混戦の中、はたして銀弾が射抜くべき〈獣〉とは、どいつなのか?
そして、冴子が背負う〝咎〟は償えるのか?
闇暦戦史第三弾、開幕!
闇暦の月に獣が吼える!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる