呪いのベンチ

U・B

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呪いのベンチ

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飲み会終わり、僕は駅のホームのベンチに座っている。
ホームの中間付近、不自然に設置されている一人掛けのベンチ。

今日は疲れがたまっていたのか、それほどお酒を飲んでいないのに酔いが回ってしまった。
(この状態で電車に乗って吐いてしまったら大変だ)
という事で、僕は先ほどからしばらくこのベンチで休んでいるのだ。
酔いもだいぶ醒めてきていて、吐き気も落ち着きつつある。

目の前に大学生と思われる二人組が立っている。
茶髪の坊主と野球帽を被ったコンビ。


茶髪の坊主が話を切り出す
『後ろに一人掛けのベンチがあんじゃん?スーツ姿の人が座っているやつ』
「あるね。あのベンチがどうかしたの?」
『【呪いのベンチ】なんだよ。あれに座ると死ぬんだって。身体がバラバラになって』
「まじかよ…」
『昔イジメに遭っていた女子高生がこの駅で飛び込んでさ。あそこから』
坊主頭がホームの先頭付近を指で示す。
『急行電車に轢かれたから、もちろん身体はバラバラ。だけど見つかったのはで、それ以外は見つからなかったらしい』
「え?」
『以降、あのベンチに座った人間は彼女のようにバラバラになって死ぬんだとよ』
「うわぁ…まじかよ…てか、あの人やばいじゃん」


彼らの肩越しの視線が僕に向けられ、目が合った。
気まずそうにすぐ目を逸らした若者たちは、そのまま学校生活の話題に移った。

「あほくさ…なにが【呪いのベンチ】だよ。いいよ。持っていきたきゃ持っていけよ。こんな身体」
僕は、多少残っている酒の勢いを借りて、少し大きめの独り言を呟いた。


まもなく各駅電車が停まった。
電車は、大学生たちを乗せると、ゆっくりとスピードを上げた。

電光掲示板を確認する。
4分後に急行電車が通過。
その4分後に各駅電車がやってくる。

(気持ち悪さはもうないな)
僕は次の各駅電車に乗る事に決めた。
すると不意に喉の渇きを覚えた。

何か自販機で飲み物を買おうと立ち上がった瞬間、身体がピタッと動かなくなった。

ふわっとシャンプーの甘い香りがした。
(え?)
ゆっくりと身体が勝手に動く。誰かに後ろから押されているような感じ。


(なんだよ…これ…)
状況を把握しようにも頭部以外のコントロールが効かない。

視線をキョロキョロ動かして、周囲を見渡す。
ホームには乗客がちらほらいるが誰も僕の異変に気付いていない。
助けを呼ぼうにも、喉に圧迫感があって声が出せない。

やがて身体はホームの先頭付近で止まった。
さっきの大学生達の会話を思い出す。
(ここ…女子高生が飛び込んだ場所だ…)

悲鳴のような音を出しながら急行電車が駅のホームを通過しているのが見える。
断末魔の叫びがどんどん僕に近づいてきている。

(あ…)
気が付いたら僕の身体は線路に飛び込んでいた。





制服姿の人間たちが線路の上で探し物をしている。
警察と消防関係者が探しているのはバラバラになったであろう肉片。

ベテランの警察官が尋ねる。
『見つかったのはどこの部分だ?』
若手の警察官が答える。
です!!』
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