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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)
お姫様に憧れて2
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それから直ぐにお父様のいる本邸へと引っ越した。
新しい生活にわくわくと胸をときめかせていた。
やっと会えると思っていたお姉様は、理由があり王城にいるのだと聞いていた。
リオノーラと会うのは楽しみではあったが、同時に怖く思っていたのでホッと胸を撫で下ろした。
その代わりに、お父様の母親であるお祖母様と叔母様のが屋敷に訪れる度にスフレに向かって嫌なことばかり言ってきた。
そしていつもこちらを、値踏みするように見るのだ。
お母様はよく二人に頭を下げていた。
笑顔が減っていくお母様を見ていると不安になった。
本邸に引っ越してからは、いつも笑っていた両親の顔から笑顔が消えていた。
そして毎日、勉強のために講師がつくことになった。
遊ぶ時間も自由な時間も一切、なくなっていた。
泣いても、嫌だと言っても勉強は終わらないし、間違えたりできないと言うと叩かれることもあった。
(もう嫌……!)
怒られるのが怖くて、毎日スフレは怯えていた。
辛く苦しい毎日がずっと続いて、もう何もかもが嫌で仕方なかった。
叔母様が何度も言う言葉があった。
『リオノーラは全て完璧にこなしていたわ』
『リオノーラの半分も出来ないなんて……信じられないわ』
『……なんて出来の悪い子なのかしら』
お姉様と比べられて、ダメだと罵る言葉ばかり掛けられる。
ある日、スフレの何かがプチンと切れた。
笑顔は消えて、心を閉ざしたスフレは、いつの間にか何もできなくなっていった。
「スフレ……!スフレ」
「…………」
「どうしましょう、スフレが……!」
「このままじゃいけない!」
それから恐ろしい二人は屋敷に来なくなった。
暫くは講師もつけずに休むことになった。
以前のように、庭を走り回ったり花を摘んだりと和やかな日々を取り戻していった。
そしてある日、お姉様に会う前にお兄様ができた。
クーシャは屋敷に来た時はボロボロで一言も口を聞かなかった。
少し前の自分を見ているようで胸が痛くなった。
傷だらけの手を握って笑いかけると、クーシャは驚いて目を見開いていた。
勉強熱心なクーシャは、次々に知識や教養を身につけていった。
あっという間に追い越されてしまった。
そんなある日……。
「今日はあなたお姉様に会いに行くわよ」
王子様がいるというお城に行くことになったのだ。
可愛いドレスを着て、馬車に揺られながらドキドキする胸を押さえていた。
(怖いお姉様だったらどうしよう……優しいお姉様だったらいいな)
「お久しぶりです……お父様、お母様」
スフレは大きく目を見開いた。
「そして初めまして、クーシャ、スフレ」
美しいブロンドの髪は星のように輝いていて、ガーネット色の瞳は宝石みたいだった。
上品なドレスに身を包んで現れたお姉様は、とても……とても美しかった。
お姉様はお気に入りの絵本に出てくるお姫様のようだと思った。
自分にないものをたくさん持っているお姉様をすぐに好きになった。
「本物の王子様だ……」
「はじめまして、小さなお姫様」
初めて見る本物の王子様に釘付けだった。
嬉しくて天にも昇る気持ちだった。
お姉様も挨拶に来たフェリクスという名前の王子様に声を掛けられて、花を渡されていた。
お互いを好いているのだと直ぐに理解できた。
お姉様はとても嬉しそうに笑っていた。
そんな姿が羨ましくて仕方なかった。
(私もデリック様と結ばれたい……!)
お姉様のようになりたいと強く思った。
end
新しい生活にわくわくと胸をときめかせていた。
やっと会えると思っていたお姉様は、理由があり王城にいるのだと聞いていた。
リオノーラと会うのは楽しみではあったが、同時に怖く思っていたのでホッと胸を撫で下ろした。
その代わりに、お父様の母親であるお祖母様と叔母様のが屋敷に訪れる度にスフレに向かって嫌なことばかり言ってきた。
そしていつもこちらを、値踏みするように見るのだ。
お母様はよく二人に頭を下げていた。
笑顔が減っていくお母様を見ていると不安になった。
本邸に引っ越してからは、いつも笑っていた両親の顔から笑顔が消えていた。
そして毎日、勉強のために講師がつくことになった。
遊ぶ時間も自由な時間も一切、なくなっていた。
泣いても、嫌だと言っても勉強は終わらないし、間違えたりできないと言うと叩かれることもあった。
(もう嫌……!)
怒られるのが怖くて、毎日スフレは怯えていた。
辛く苦しい毎日がずっと続いて、もう何もかもが嫌で仕方なかった。
叔母様が何度も言う言葉があった。
『リオノーラは全て完璧にこなしていたわ』
『リオノーラの半分も出来ないなんて……信じられないわ』
『……なんて出来の悪い子なのかしら』
お姉様と比べられて、ダメだと罵る言葉ばかり掛けられる。
ある日、スフレの何かがプチンと切れた。
笑顔は消えて、心を閉ざしたスフレは、いつの間にか何もできなくなっていった。
「スフレ……!スフレ」
「…………」
「どうしましょう、スフレが……!」
「このままじゃいけない!」
それから恐ろしい二人は屋敷に来なくなった。
暫くは講師もつけずに休むことになった。
以前のように、庭を走り回ったり花を摘んだりと和やかな日々を取り戻していった。
そしてある日、お姉様に会う前にお兄様ができた。
クーシャは屋敷に来た時はボロボロで一言も口を聞かなかった。
少し前の自分を見ているようで胸が痛くなった。
傷だらけの手を握って笑いかけると、クーシャは驚いて目を見開いていた。
勉強熱心なクーシャは、次々に知識や教養を身につけていった。
あっという間に追い越されてしまった。
そんなある日……。
「今日はあなたお姉様に会いに行くわよ」
王子様がいるというお城に行くことになったのだ。
可愛いドレスを着て、馬車に揺られながらドキドキする胸を押さえていた。
(怖いお姉様だったらどうしよう……優しいお姉様だったらいいな)
「お久しぶりです……お父様、お母様」
スフレは大きく目を見開いた。
「そして初めまして、クーシャ、スフレ」
美しいブロンドの髪は星のように輝いていて、ガーネット色の瞳は宝石みたいだった。
上品なドレスに身を包んで現れたお姉様は、とても……とても美しかった。
お姉様はお気に入りの絵本に出てくるお姫様のようだと思った。
自分にないものをたくさん持っているお姉様をすぐに好きになった。
「本物の王子様だ……」
「はじめまして、小さなお姫様」
初めて見る本物の王子様に釘付けだった。
嬉しくて天にも昇る気持ちだった。
お姉様も挨拶に来たフェリクスという名前の王子様に声を掛けられて、花を渡されていた。
お互いを好いているのだと直ぐに理解できた。
お姉様はとても嬉しそうに笑っていた。
そんな姿が羨ましくて仕方なかった。
(私もデリック様と結ばれたい……!)
お姉様のようになりたいと強く思った。
end
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