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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)
命の炎6
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ゾイが何を言いたいのか分かったのかリオノーラは静かに頷いた。
一緒に居ると忘れてしまいそうになるが、精霊の存在は人間とは別で異質なのだ。
「……精霊は力を貸してくれるし自分の一番近くにいてくれる。けれど生きる時間も違うし、持ってる力も違う。勿論、本質的に悪さをしてしまう精霊だっている」
「ゾイ様……」
「彼らはいつも近くにいてくれるけれど、とても遠い所にいるのよね」
リオノーラはゾイにもう少し詳しく話を聞こうと問いかけようとした時だった。
「ーーーユーリンッ!」
「あっ……デリック」
珍しく酷く焦った様子のデリックが走ってきて、目の前を通り過ぎると真っ直ぐユーリンの元へ向かった。
そしてユーリンを強く抱きしめた後、何もない事を確認しするように体をペタペタ触ると安心したように息を吐き出した。
「良かった……!ユーリン」
「デリック、そんなに急いでどうしたの?」
「どうしたじゃない!急に居なくなるから心配したんだぞっ!?」
デリックは半ば怒鳴るようにユーリンに言った。
ユーリンはあまりの勢いに肩をびくりと揺らす。
すかさず大きくなったマリクソンがデリックとユーリンの間に入った。
そんなマリクソンを掻き分けながらデリックは大声を上げた。
「ッ、研究室にも薬草園にも居なくて……!」
「ご、ごめん……リオノーラが診療所に行くって言うから俺も行きたくてつい……」
「本当に、すごく心配したんだぞ……っ!?」
「でも……ちゃんと、父さんには報告したし」
「ユーリンが無事で良かった!」
「デリック……恥ずかしいよ」
デリックはユーリンの体を抱きしめている。
リオノーラそんな二人のやり取りをポカンと口を開けながら見ていた。
ゾイが困ったように微笑みながら「普段は隠してるけど、デリックは重度のブラコンなのよ」と苦笑いしながら呟いた。
ユーリンがデリックの事が大好きなのだと思っていたが、どうやらデリックの方がユーリンに依存気味のようだ。
リオノーラは温かい目で二人の可愛らしい姿を眺めて、うんうんと頷いていた。
「確かにユーリンは危なっかしくて守ってあげたい気持ちになるわよね」
「えッ……!?」
「それにデリックも普段は強がっていてもユーリンが居ないと不安になったり……意外と寂しがりやなのね!」
「……はぁ!?」
「二人共、まだまだ可愛らしいですね!ゾイ様」
「ふふっ、そうね」
「「!?!?」」
リオノーラがそう笑うとゾイは震えながら隣で吹き出している。
それを見てデリックとユーリンはポカンと口を開いた。
「ぶっ……!」
「「…………」」
目を見開いて放心状態で此方を見ているデリックとユーリンを見ていたリオノーラは生意気だった二人の姿を思い出してしみじみしていた。
ゾイが話題を変えるように口を開いた。
「それよりリオノーラ、しっかりと目元を冷やした方がいいわ。腫れが次の日に残っちゃうわよ?明日はパーティーでしょう?」
「あっ、そうですね。ユーリン、今日は本当にありがとう……!また、ゆっくり話しましょう」
「あっ……うん」
「ふふ、デリックもね」
「………………」
「では、失礼致します」
綺麗にお辞儀をしてリオノーラはメメと共に去っていく。
そんな後ろ姿をデリックとユーリンは複雑な気持ちで見送っていた。
今回のリオノーラの言葉でで全くもって異性として意識されてないどころか、可愛らしい、守ってあげたいと言われて二人で驚いていた。
リオノーラにとっては、危なっかしいユーリンと、寂しがりやのデリック……そしてトドメの一撃は"二人ともまだまだ可愛らしい"だ。
出会った時と何も変わらず、リオノーラだけは自分達を子供扱いしてくる。
((やっぱりフェリ兄が特別なんだ……))
唇を噛む二人を見てゾイはそっと背中を押した。
一緒に居ると忘れてしまいそうになるが、精霊の存在は人間とは別で異質なのだ。
「……精霊は力を貸してくれるし自分の一番近くにいてくれる。けれど生きる時間も違うし、持ってる力も違う。勿論、本質的に悪さをしてしまう精霊だっている」
「ゾイ様……」
「彼らはいつも近くにいてくれるけれど、とても遠い所にいるのよね」
リオノーラはゾイにもう少し詳しく話を聞こうと問いかけようとした時だった。
「ーーーユーリンッ!」
「あっ……デリック」
珍しく酷く焦った様子のデリックが走ってきて、目の前を通り過ぎると真っ直ぐユーリンの元へ向かった。
そしてユーリンを強く抱きしめた後、何もない事を確認しするように体をペタペタ触ると安心したように息を吐き出した。
「良かった……!ユーリン」
「デリック、そんなに急いでどうしたの?」
「どうしたじゃない!急に居なくなるから心配したんだぞっ!?」
デリックは半ば怒鳴るようにユーリンに言った。
ユーリンはあまりの勢いに肩をびくりと揺らす。
すかさず大きくなったマリクソンがデリックとユーリンの間に入った。
そんなマリクソンを掻き分けながらデリックは大声を上げた。
「ッ、研究室にも薬草園にも居なくて……!」
「ご、ごめん……リオノーラが診療所に行くって言うから俺も行きたくてつい……」
「本当に、すごく心配したんだぞ……っ!?」
「でも……ちゃんと、父さんには報告したし」
「ユーリンが無事で良かった!」
「デリック……恥ずかしいよ」
デリックはユーリンの体を抱きしめている。
リオノーラそんな二人のやり取りをポカンと口を開けながら見ていた。
ゾイが困ったように微笑みながら「普段は隠してるけど、デリックは重度のブラコンなのよ」と苦笑いしながら呟いた。
ユーリンがデリックの事が大好きなのだと思っていたが、どうやらデリックの方がユーリンに依存気味のようだ。
リオノーラは温かい目で二人の可愛らしい姿を眺めて、うんうんと頷いていた。
「確かにユーリンは危なっかしくて守ってあげたい気持ちになるわよね」
「えッ……!?」
「それにデリックも普段は強がっていてもユーリンが居ないと不安になったり……意外と寂しがりやなのね!」
「……はぁ!?」
「二人共、まだまだ可愛らしいですね!ゾイ様」
「ふふっ、そうね」
「「!?!?」」
リオノーラがそう笑うとゾイは震えながら隣で吹き出している。
それを見てデリックとユーリンはポカンと口を開いた。
「ぶっ……!」
「「…………」」
目を見開いて放心状態で此方を見ているデリックとユーリンを見ていたリオノーラは生意気だった二人の姿を思い出してしみじみしていた。
ゾイが話題を変えるように口を開いた。
「それよりリオノーラ、しっかりと目元を冷やした方がいいわ。腫れが次の日に残っちゃうわよ?明日はパーティーでしょう?」
「あっ、そうですね。ユーリン、今日は本当にありがとう……!また、ゆっくり話しましょう」
「あっ……うん」
「ふふ、デリックもね」
「………………」
「では、失礼致します」
綺麗にお辞儀をしてリオノーラはメメと共に去っていく。
そんな後ろ姿をデリックとユーリンは複雑な気持ちで見送っていた。
今回のリオノーラの言葉でで全くもって異性として意識されてないどころか、可愛らしい、守ってあげたいと言われて二人で驚いていた。
リオノーラにとっては、危なっかしいユーリンと、寂しがりやのデリック……そしてトドメの一撃は"二人ともまだまだ可愛らしい"だ。
出会った時と何も変わらず、リオノーラだけは自分達を子供扱いしてくる。
((やっぱりフェリ兄が特別なんだ……))
唇を噛む二人を見てゾイはそっと背中を押した。
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