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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)
命の炎2
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「教えてくれてありがとね……ワルフ」
「えぇ、料理長には内緒ですよ?」
「今回は約束出来ないわ!あ、チョコチップを混ぜてもいい?」
「いいですけど……って、勘弁してください!」
「チョコチップクッキーを焼いている間に、ナッツも入っているクッキーも作りましょう!料理長の娘さん……確かモニカと言ったかしら」
「お、お嬢様……まさか!」
リオノーラはご機嫌に生地の形を整えていく。
それを焦った様子で並べていくワルフは、これからの行動を止めようと必死である。
「勿論、お見舞いに行くわ!」
それからの行動は早かった。
父の元に向かい、モニカがいる診療所の場所を聞いた。
良い顔はされなかったが、料理長には世話になっている事と、どうしても……と言ったお願いに父は静かに頷いた。
モニカの病は人にうつるものではないが、十分気をつけるようにと強く言われたのだった。
次の日、シンシアと共に王城へと帰るとユーリンが出迎えてくれた。
今からモニカのお見舞いに行く事を話すと、ユーリンは凄い勢いで食いついてきた。
目を輝かせながら症状を聞くユーリンを複雑な気持ちで見つめていた。
どうやら新しい薬を届けに診療所に行きたかったようだ。
風邪の症状を緩和できるものらしく、体に負担が少ないものを開発したのだと興奮した様子で語っていた。
効果は実証済みで、試してみる価値はあるとユーリンが言うので、一緒にマルクスの元へ向かい許可を取りに向かった。
すると意外にも、あっさりと許可が出た。
何故だろうと思っていたら、ユーリンといつも薬の研究をしている医師が同行してくれる事になったのだ。
どんどん大事になっていくお見舞いに苦笑するしかなかった。
クッキーと花を片手にユーリンは大きなカバンを持って一緒に馬車に乗り込んだ。
婚約者でもない男女が、二人きりで馬車に乗るのは良くないので同行したチェン医師が、空気のように影を限りなく薄くしながらユーリンの隣に腰掛けていた。
その隣にはユーリンと契約した土精霊のマリクソンがテディーベアサイズで腰掛けていた。
(動くテディーベア……めちゃくちゃ可愛い!)
そのふわふわの見た目と、クリっとした瞳は本当にぬいぐるみのようだった。
乙女心を擽るマリクソンは、仕草まであざとい。
マリクソンに触りたくて触りたくて仕方がないのだが、やはり心を許してもらっていないからか手を弾かれてしまう。
「ユーリンが羨ましいわ……!」
「どうして?」
「こんな可愛い精霊、他に居ないもの」
もし、マリクソンのリーベだったら揉みくちゃに出来たのに……と思わずにはいられなかった。
それを聞いたメメが「俺も十分可愛いだろうが……!」と言いた気に、尾鰭でペチペチと頬を叩いてアピールしている。
「メメは可愛いより綺麗だからなぁ……」
ーーーベチンッ
優雅に泳いでいたメメは、突然マリクソンに叩き落とされていた。
ピクピクするメメを膝の上に乗せて唖然としていると、マリクソンは何事もなかったように腰掛ける。
どうやらメメが泳いでいる姿に本能が擽られたようだ。
縦社会である精霊にも色々事情があるのだろうか……しみじみと考えているとユーリンが口を開く。
「二人きりでお出かけなんて、本当に嬉しいな……」
「わたくしもよ!」
あんなに引っ込み思案で大人しかったユーリンも、成長するにつれて可愛らしいことを言ってくれるようになった。
「リオノーラは今日も八面玲瓏として輝いているね。春風駘蕩な人だから僕も安らぐんだ」
「あ、ありがとう……?」
そして頭が良すぎるせいか、愛情表現が難しすぎてついていけない事が多々ある。
隣に座っている医師は、何かユーリンに耳打ちしている。
ユーリンはうんうんと頷くと改めて此方に向き直る。
「リオノーラ、今日もとても美しいね。リオノーラは明るくて朗らかだから一緒にいて安らぐよ」
「ふふっ、ユーリンてば……ありがとう。チャイ医師は通訳みたいね」
チャイ医師は楽しそうなユーリンの様子を見て、チャイ医師は嬉しそうだ。
研究所の人達や医師達はユーリンを崇拝している。
ユーリンは満足そうに微笑んでいた。
「えぇ、料理長には内緒ですよ?」
「今回は約束出来ないわ!あ、チョコチップを混ぜてもいい?」
「いいですけど……って、勘弁してください!」
「チョコチップクッキーを焼いている間に、ナッツも入っているクッキーも作りましょう!料理長の娘さん……確かモニカと言ったかしら」
「お、お嬢様……まさか!」
リオノーラはご機嫌に生地の形を整えていく。
それを焦った様子で並べていくワルフは、これからの行動を止めようと必死である。
「勿論、お見舞いに行くわ!」
それからの行動は早かった。
父の元に向かい、モニカがいる診療所の場所を聞いた。
良い顔はされなかったが、料理長には世話になっている事と、どうしても……と言ったお願いに父は静かに頷いた。
モニカの病は人にうつるものではないが、十分気をつけるようにと強く言われたのだった。
次の日、シンシアと共に王城へと帰るとユーリンが出迎えてくれた。
今からモニカのお見舞いに行く事を話すと、ユーリンは凄い勢いで食いついてきた。
目を輝かせながら症状を聞くユーリンを複雑な気持ちで見つめていた。
どうやら新しい薬を届けに診療所に行きたかったようだ。
風邪の症状を緩和できるものらしく、体に負担が少ないものを開発したのだと興奮した様子で語っていた。
効果は実証済みで、試してみる価値はあるとユーリンが言うので、一緒にマルクスの元へ向かい許可を取りに向かった。
すると意外にも、あっさりと許可が出た。
何故だろうと思っていたら、ユーリンといつも薬の研究をしている医師が同行してくれる事になったのだ。
どんどん大事になっていくお見舞いに苦笑するしかなかった。
クッキーと花を片手にユーリンは大きなカバンを持って一緒に馬車に乗り込んだ。
婚約者でもない男女が、二人きりで馬車に乗るのは良くないので同行したチェン医師が、空気のように影を限りなく薄くしながらユーリンの隣に腰掛けていた。
その隣にはユーリンと契約した土精霊のマリクソンがテディーベアサイズで腰掛けていた。
(動くテディーベア……めちゃくちゃ可愛い!)
そのふわふわの見た目と、クリっとした瞳は本当にぬいぐるみのようだった。
乙女心を擽るマリクソンは、仕草まであざとい。
マリクソンに触りたくて触りたくて仕方がないのだが、やはり心を許してもらっていないからか手を弾かれてしまう。
「ユーリンが羨ましいわ……!」
「どうして?」
「こんな可愛い精霊、他に居ないもの」
もし、マリクソンのリーベだったら揉みくちゃに出来たのに……と思わずにはいられなかった。
それを聞いたメメが「俺も十分可愛いだろうが……!」と言いた気に、尾鰭でペチペチと頬を叩いてアピールしている。
「メメは可愛いより綺麗だからなぁ……」
ーーーベチンッ
優雅に泳いでいたメメは、突然マリクソンに叩き落とされていた。
ピクピクするメメを膝の上に乗せて唖然としていると、マリクソンは何事もなかったように腰掛ける。
どうやらメメが泳いでいる姿に本能が擽られたようだ。
縦社会である精霊にも色々事情があるのだろうか……しみじみと考えているとユーリンが口を開く。
「二人きりでお出かけなんて、本当に嬉しいな……」
「わたくしもよ!」
あんなに引っ込み思案で大人しかったユーリンも、成長するにつれて可愛らしいことを言ってくれるようになった。
「リオノーラは今日も八面玲瓏として輝いているね。春風駘蕩な人だから僕も安らぐんだ」
「あ、ありがとう……?」
そして頭が良すぎるせいか、愛情表現が難しすぎてついていけない事が多々ある。
隣に座っている医師は、何かユーリンに耳打ちしている。
ユーリンはうんうんと頷くと改めて此方に向き直る。
「リオノーラ、今日もとても美しいね。リオノーラは明るくて朗らかだから一緒にいて安らぐよ」
「ふふっ、ユーリンてば……ありがとう。チャイ医師は通訳みたいね」
チャイ医師は楽しそうなユーリンの様子を見て、チャイ医師は嬉しそうだ。
研究所の人達や医師達はユーリンを崇拝している。
ユーリンは満足そうに微笑んでいた。
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