上 下
32 / 56
番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)

命の炎7

しおりを挟む

しかしデリックもユーリンも納得できなかった。
リオノーラと同じ年齢の令嬢達は自分達を褒め称え、そして何としても気に入られようと媚を売ってくる者たちばかりだった。

最近は中型精霊とも契約して成長している実感があった二人にとっては、リオノーラの子供扱いする言葉は衝撃的であった。
呆然としている二人を見て、クスクスと笑っていた。


「母さん……笑い事じゃないんだけど」

「俺、今日……頑張ったつもりだったのに」

「ごめんなさいね……でも貴方達にリオノーラは手強いんじゃないかしら」


ゾイは深呼吸をして自らを落ち着かせた後、落ち込むユーリンとデリックの頭を撫でた。


「令嬢はリオノーラだけじゃないのよ……?婚約者候補にはルーバルド伯爵家の御令嬢もアナイシェ侯爵の御令嬢もいる」

「「…………」」

「歳も近いし離れてないし、丁度良いのではないかしら?」

「「分かってるよ!」」


ゾイはデリックとユーリンの婚約者を早く決めた方がいいのではと周囲から散々言われていた。
二人の意思を尊重して黙っていたが、それももう限界だろう。


「それにリオノーラは、婚約するならばフェリクスが良いと言っているのよ?」

「「そんなの知ってる!!」」

「そんなリオノーラの気持ちを知っていて無理強いは出来ないわ」

「母さんはフェリ兄の味方ばかりする……っ!」

「……あら?私はあなた達にしたアドバイスと同じ事を言っているわよ?フェリクスはそれを上手く活かしているの」

「だって、フェリ兄は年上だし!」

「俺達だって頑張ってるけどリオノーラは全然相手にしてくれない……!」


悔しそうな表情で訴える二人を優しく抱きしめた。
手の付けようがなかった悪戯好きの双子も、成長するにつれて色々と学んだのだろう。
リオノーラに好意を寄せていることはわかっていた。

フェリクスとリオノーラの関係が面白くないと思っているものの、今はどうすれば良いか分からずに手探り状態だ。
そんな中途半端な気持ちがリオノーラに伝わる訳もない。


「世の中には手に入らないものも、諦めなければいけないこともたくさんあるの」

「「…………」」

「自分なら必ず手に入るなんて自惚れは捨ててしまいなさい」

「俺達は別に自惚れてる訳じゃ……」

「そうかしら……?相手を理解する努力や、自分から歩み寄ることがなければ、心一つ繋ぎ止めることだってできやしないのよ」

「…………難しいよ」

「そうね……でもあなた達は人の上に立つ者として、それをよく知らなければならない」


恵まれた環境にいる二人だからこそ、挫折も失敗も沢山して欲しいと思っていた。
権力に頼った我儘は、必ず己を追い詰めてしまう。


「昔からいつも言っていたでしょう?相手の喜ぶ事をしなさいって」

「「……」」

「それにあなた達が今、こうした扱いを受ける原因を作ったのは他でもないあなた達自身なのよ?」

「でもっ……もう意地悪してないし、ちゃんと優しくしてるよ?」

「ずっと嫌がらせされていた相手を、すぐに好きになると思うの?」

「………思わない」

「フェリクスはリオノーラの気持ちに寄り添って、いつも大切に思い遣っていたわ」

「「……」」

「それでも"欲しい"と思うなら地道に頑張るしかないのよ……リオノーラが応えてくれるかは分からないけどね」


きっと頭では理解していても、経験をしなければ身に響かないだろう。


「もう無理だとしたら……?」

「そしたら俺達にはチャンスなんてないじゃんか!」

「引き際を弁えるのも大切なことよ?……それに良い女を振り向かせるには、とびっきりの良い男になりなさいってことよ」

「「えー……」」


デリックとユーリンを抱きしめてからゾイは歩き出した。





end
しおりを挟む
感想 918

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。