推しを味方に付けたら最強だって知ってましたか?

●やきいもほくほく●

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番外編(本編の内容とは少し異なります。時系列バラバラです)

苦い思い2

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母であるエルサナは厳格な人物だった。
そして姉であるターニャもエルサナの影響を強く受けて育った。

父は居心地の悪い家から逃げるように愛人の元へ行った。

ダーカー公爵家を継ぐものとして…と毎日毎日聞く同じような言葉にうんざりとしていた。

息が詰まる生活は学園に入学するまで続いた。

それでも婚約者を決めなければならないと、エルサナは御令嬢を何人も連れてきては会わせていた。

決められたレールの上を歩く人生は詰まらなかった。
それでも逃げるという選択肢は無かった。

そんな時、控えめで温かい魅力を持つアーリンと出会った。
アーリンと話していると息苦しさから解放される気がした。
あっという間に恋に落ちた。

アーリンは一代で成り上がった子爵の娘だった。

アーリンとの結婚を考えていると言うと母は猛反対した。

けれど、これだけは譲れないと人生で初めて母に反抗した。
アーリンと結婚出来なければ公爵家を捨てても良いと、そう言った事で母は折れた。


幸せだった。
アーリンと幸せな家庭を築ける、そう信じて疑わなかった。

けれど、それは悲劇の始まりだった。

手塩にかけて育てた息子を誑かした悪女……アーリンは容赦なく悪意に晒された。

公爵家に毎日顔を出しに来る母。

四六時中アーリンと共に行動する事は出来ない。
毎日寝室に戻ると、枕を涙で濡らすアーリンに胸を痛めた。
アーリンを守らなければと強く思っていた。

そんな時、アーリンが懐妊した。

掌を返したようにアーリンの世話を甲斐甲斐しく焼く母を見て、複雑な感情を抱いていた。

そしてアーリンが出産したのは金色の髪を持つ女児だった。
本当に幸せだった。
それなのに母と姉から浴びせられたのは心ない言葉だった。

アーリンは日に日にやつれていった。
体調を崩したアーリンの代わりにリオノーラの面倒は侍女のシンシアに任せきりだった。

二年後、今度こそはと産んだ子は無情にもまた女児だった。
アーリンに似たミルクティー色の髪をした子だった。
生まれた子は体が弱かった。

母からの風当たりは更に強くなった。
これ以上、アーリンを不幸にするわけにはいかないと、アーリンとスフレを別邸へと移した。

するとアーリンの体調は良くなり、スフレも徐々に元気になっていった。

それと同時に長女であるリオノーラは、自分と同じように厳しい教育を施されていた。
泣きながら縋るリオノーラを助けてやることも歩み寄る事もしなかった。

昔の自分を見ているようで辛かったのかもしれない。

アーリンが居なくなり、姉が顔を出すようになった。
それと同時にリオノーラはどんどん我儘を言うようになった。
その願いを全て叶える事でリオノーラに愛情を与えているような気がしていた。

息抜きにと、別邸へ泊まる事も増えた。
笑顔のアーリンと無垢なスフレを見ていると心が癒された。

公爵家に帰れば息苦しさと罪悪感に苛まれる……そんな日々に苦悩していた時だった。


リオノーラはあれだけ望んでいた王子との顔合わせを嫌だと言ったのだ。
目の前にいるリオノーラは別人のようになっていたがまた我儘を言って周囲を困らせているのだと思った。
煩くこだわっていたドレスを着ずに、アーリンが誕生日にプレゼントしたドレスを纏い立つ姿は、若き頃のアーリンに見えた。

そして、無事顔合わせを終えたリオノーラはドレスを全部変えたいと言い出した。
あれだけ金をかけたドレスを捨てたいなどと、腹が立って仕方なかった。

しかしリオノーラは「お母様がくれたみたいなドレスが欲しい」と言った。
そう言われたらノーとは言えなかった。
アーリンがよく使ってたブティックへリオノーラを連れて行く。

リオノーラは遠慮したり、ドレスを高いと言ったりと不可解な行動がいくつもあった。
違和感を覚えながらも、侍女や家庭教師を変えたいというリオノーラに頭を抱えた。

やはり我儘は酷くなるばかりだと思った。

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