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番外編(その後のお話)
新しい道を③(クーシャ)
しおりを挟むモニカは、クーシャが来た時から動物の形をした精霊がいなくなったこと。
いつもモニカの店に精霊達が集まり、モニカの気を引きたくて悪戯する子が増えて困っていることを教えてくれた。
クーシャは一度、モニカに断りをいれて外へ出てからルマンに話しかける。
ーールマン、あのモニカって子
『あの子……火の精霊をとても愛しているし、愛されてるわ!特別なのよ』
ーーどういう事?
『仲間の気配があるの……特に胸元!温かくて居心地がいいわ。その温かさに引き寄せられいるのよ!』
ーーどうすればいい?
『モニカの心が決まらないうちは、あたしが近くにいるのが一番良いけど……』
ーー他に解決方法は?
『それ以外に解決方法なんてないわよ……!だって皆がモニカを自分のモノにしたいんだもの』
クーシャは困り果ててしまった。
ルマンが解決方法はリーベになること以外ないと言い切ったからだ。
それから他の方法を探そうとルマンと会話を重ねた。
しかしリーベでもなく誰のものでもないモニカは、ずっとこのまま火の精霊に付き纏われる可能性があるのだという。
モニカが今すぐリーベになれる訳でもないし、またルマンがいなくなれば火の精霊が戻ってくるとなれば、問題は解決しない。
クーシャが悩んでいるとルマンがハッとして嬉しそうに口を開く。
『あっ……そうだわ!クーシャ、あの子と付き合いなさいよ』
ーーはい……?
『香水臭くないし何より温かいし、あの子にならアタシのクーシャも任せられるわ……!』
ーー勝手に話を進めないでよ
『アタシ、あのモニカって子は結構気に入ってるのよ』
ーー…………。
『さっき確認したけど若い男の匂いはしなかったから、すぐに手を出しても大丈夫よ!さっさと食べちゃいなさい』
ーーつまりルマンとこの店に通えば牽制になるってことだよね……分かった。あとはモニカと契約したい火の精霊がどのくらいるのか確かめてみよう
『ちょっ……!クーシャ待ちなさ……ッ!』
会話を無理矢理やめたことが不満らしいルマンはクーシャの肩まで、よじ登るとガブリと頭に齧り付く。
契約を交わしているリーベに、こんなことをしてくる精霊はルマンだけだろう。
頭からタラリと血を流しながら戻ってきたクーシャにモニカは驚き、心配そうにハンカチを出してクーシャの額の血を拭う。
「っ、クーシャ様、大丈夫ですか……!?」
「はい、いつものことですから」
「!?」
「暫く僕とルマンがこのお店に通わせて頂きます。それで対策を練ろうかと……」
クーシャはルマンがぶら下がったまま平然とモニカに解決策を提案していた。
そんな様子を見て笑うのを堪えていたモニカは、ついに吹き出してしまった。
「ッ……あはは!」
「……?」
「っ、ふ、痛くないんですか……?」
「いつものことなので」
「ふふっ……ルマン様、クーシャ様が可哀想ですよ?」
モニカが笑いながら言うと、ルマンは珍しく素直にクーシャから口を離した。
「そういえば今日、出来上がったばかりの新作のパンがあるんです!ルマン様、食べて頂けませんか?」
ルマンはクルリとその場で一周すると、ご機嫌に店の奥に入っていく。
「はぁ……」
「クーシャ様もどうぞ」
「…………すみません」
クーシャはモニカに促されるまま席に着く。
本当はこんなことをしている場合ではないのだが……。
ルマンは力は強いが融通がきかないのが難点である。
「どうぞ!感想を聞かせて下さいね」
「はい……いただきます」
温かいパンを手に取り、口に入れる。
優しい味がするパンに思わず目を見張った。
「あの、どうですか?」
「美味しい……」
「良かった」
「…………」
「クーシャ様、ルマン様。少しの間かもしれませんが、よろしくお願いしますね!」
クーシャとモニカの出会い
少しの間ではなく長い間になりそうです
end
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