49 / 56
番外編(その後のお話)
新しい道を①(クーシャ)
しおりを挟む「クーシャ様、私と一緒に……!!」
「良い茶葉が入ったので、是非わたくしと!」
「ずるいわ……!私が先よ」
「私よッ」
(……帰りたい)
成長するにつれて、クーシャの骨ばった体も男性らしくなっていき、ルマンの厳しい指導のお陰で、周囲の見る目がどんどんと変わっていった。
学園の最高学年になり生徒会長も務め、尚且つ婚約者も居ない自分は優良物件に見えるのだろうか。
(はぁ……面倒くさい)
それでもダーカー公爵家の名を汚さぬように動くだけだ。
必死に媚を売る令嬢達に、表情筋を動かしてニコリと微笑んだ。
「ごめんね、今はとても忙しくて……」
それだけでザッと音と共に横に避けてくれる。
最近は自分の笑顔にこんな利用価値があったのかと感心していた。
誰もいない生徒会室に入ると、ルマンが姿を現した。
椅子に座り、一息ついた自分の膝に乗ったルマンは、話を聞けと言わんばかりにアピールする。
仕方なく目を閉じると声が聞こえてくる。
『おえぇ……っ!あの女共、香水がキッツイのよ!!!それにあたしの育てたクーシャに釣り合うと思ってんのッ!?!?鏡見なさいよ鏡をッ!』
ーー……ルマン
『彼の方の側に居られるのはいいんだけど、こんな女だらけの所は、もう耐えられないわッ』
ーー……。
『はぁ……どこかに良い男はいないかしら!!刺激が足りないのよ』
ーーここは学園だから……。
『彼の方も最近は毒気が抜けて幸せそうだし、もうあたしは必要とされていないのね!』
ーー元々ルマンは必…『……それ以上言ったら、その口を焼き潰すわよ?』
スフレの婚約者が決まった以上、もうダーカー家の令息としての需要はないとわかっていた。
「ダーカー公爵家の利になるように僕を使ってください」と言うとジョンテとアーリンは、直ぐさま首を横に振った。
これまでクーシャを育ててくれた恩を考えると、何かの役に立ちたかった。
自分の幸せを犠牲にしても構わないと思う程に感謝していたからだ。
けれどジョンテとアーリンは「クーシャは大切な息子だから」と、幸せになれるようにと必死で動いてくれた。
そんなジョンテとアーリンの気遣いも全てルマンが無にしてしまう。
『あの女は絶対にダメよ……あたしのクーシャを幸せにできないわ』
結局はルマンが酷く嫌がってしまうため、上手く話が進まないのだ。
アーリンから話を聞いたリオノーラが直ぐさまクーシャを連れて王城へと向かった。
ゾイに相談してみると、ルカートの元でリーベの講師や国中で発生している精霊の問題を解決しないかと提案された。
単体で行動する事も多いから女嫌いのルマンでも大丈夫だろう、と。
それに火の精霊が起こす問題に対応できるリーベは少ない為、自分とルマンが適役だと言われたのだ。
自由に色々な場所に行けるのは、狭い世界で生きてきた自分にとって、とても嬉しいことだった。
「クーシャの"好き"に、ぴったりだと思わない?」
笑顔を浮かべるリオノーラに、思わず涙が出そうになった。
リオノーラは固く閉めたドアを簡単に開けてくれる。
公爵家へと帰り、父と母に相談すると『クーシャの意志を尊重する』『良い道が見つかって良かった』と喜んでくれた。
自分の人生にとってジョンテとアーリンは誰よりも優しい大人で、素晴らしい母親と父親だった。
*
クーシャはルマンと共に国中を駆け回っていた。
色々な精霊や人を見るこどができるのは新鮮でクーシャにとっては幸せなことだった。
この仕事をしていると結婚相手に悩むこともないし、表情を取り繕う事も必要も、誰かの機嫌を取る必要もない。
それに王城に帰れば皆に会うこともできる。
自由気儘にルマンと仕事をこなす日々は、何よりも楽しかった。
「クーシャ、お前にしかできない仕事があるんだ!帰ってきたばかりで悪いが直ぐに向かってくれないか?」
ルカートに資料を手渡されて読み込んでいた。
「ルカートさん、これって……」
「かなり困っているみたいなんだ。急いで向かってくれ」
「はい」
急いで街へと向かった。
12
お気に入りに追加
8,149
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。